2013年03月22日

「 夫婦の日 」に読む 『 ハ ピ ネ ス 』  by 桐 野 夏 生


3月22日は「夫婦の日」です。

というか、毎月22日が語呂合わせで「夫婦の日」

ちなみに、11月の22日は(よくメディアで報じられるように)

「 いい夫婦の日 」になります。


ここでは夫婦・結婚生活だけではなく、結婚に至るまでの物語も

含めても良いかな?と思ってはいます。



さて、今日は “ 結婚生活 ”を描いた作品で 一番最近読んだものを・・・・



はい 今日の読書は 『 ハピネス 』 by 桐野 夏生  光文社



桐野夏生氏については あなたも御存知の人気作家ですから

特に説明する必要もないでしょうね。


『 OUT 』は衝撃的でしたし、その後の『 グロテスク 』や

映画化された『 東京島 』についてもよく御存知だと思います。


個人的には 林芙美子を題材にした『ナニカアル…』もなかなか

良かったとは思いましたが・・・

ただ、これは私が林芙美子のファンなので。

( 特に始めの方では )林芙美子の文体を 意識して真似たのが よく分かったし。

但し、“ お扶美さん ”そのものの魅力に迫るほどではなかったかな?


“ 女探偵ミロ ”のようなハードボイルド系をまた書いてほしいなあ。




さて、本編の主人公・岩見有沙は30代前半の既婚女性です。

3歳になる娘・花奈と一緒に 東京・湾岸地区のタワーマンション

29階に住んでいます。


最近は同じタワマンに住むママ友も出来て、5人グループで仲良く

交流する毎日。


みんな同じような年頃の女の子のママたちなのね。


リーダー格の“いぶママ”は、夫は一流出版社勤務で 御本人も

元CAの才色兼備を絵に描いたようなステキな女性。

他のママたち真恋ママ・芽玖ママも夫が一流企業にお勤めの恵まれた専業主婦です。


この3人のママ達が住んでいるのは、同じタワマンでもより高級な ベイウエスト棟

有沙が住んでいるのはイースト棟のやや格落ちの方になります。

そして、分譲ではなく賃貸し・・・


もう一人、タワマン住まいではなく 駅近くの普通のマンション住まいの美雨ママ。

江東区の土屋アンナ w と呼ばれるほど華やかな美人でカッコいい女性。

キャラクタも他のママ達と違って率直な 下町育ちの女性です。


さてさて、こうした同世代の女性・5人グループ・・・

あなたも御想像の通り、仲良くしていてもそこには

「 格 差 」 と 「 順 列 」 が自然に生まれます。(イヤラシイ表現だね・・)


有沙も必要以上に見栄を張ってしまうようになります。


実家や婚家のこと そしてアメリカに単身赴任中の夫のことも・・・・


いったん「 センスの悪い家 」とか、「 手抜き 主婦 」「 ダメママ 」の

烙印を押されたら、引っ越しでもしない限り、その烙印が消える

ことはない。


(一部抜粋)


そんなわけで、お互いの家を訪ねる事は決してなく会うのはいつも

タワマンの外やラウンジなどで・・・


これ、私も驚いたのですが 今時はそんなものなのかしら?

私の友人で、ママ友同士の人間関係に疲れたことのある女性は

ママ友はママ友  親友ではない  とよく言っていましたけれど。



さて、お話が進行する内に読者にはさまざまなことが分かってきます。

ママ友には決して言えない 有 沙 自 身 の 過 去 のこと・・・・・

その過去が引き起こした 現在の 夫とのぎくしゃくした 関係



5人グループですから、自然と 境遇が似たもの同士が仲良くなっていくのですが

有沙は段々と 美 雨 ママ と特に親しくなり、外で二人だけで会って

お酒を呑んだりする関係になっていきます。


そして、美雨ママが いぶママの夫と不倫関係にある事を告白されて・・・



この辺から物語に面白さが加速して行きます。



有沙の夫からは、もう1年以上連絡も無く 有沙の電話やメールにも全く返事もありません。

連絡が欲しいと 執拗に 留守電に吹き込んだり メールをする有沙



どうやら夫は離婚したがっているようで・・・・



夫に愛人でも出来たのか?と思ったのですが違うようです。

もちろん有沙は 現在の生活を 手放したくはありません


憧れのタワーマンションに住んで可愛い子どもに恵まれた

幸福な 専業主婦 という地位を・・・


この価値観が良いのか悪いのか 私には分かりませんが 

少なくとも有沙にとっては 実家がある新潟県に封印してきた

過 去 を 打 ち 消 す ほ ど の 価 値 あるものですから。


だからこそ、今の生活を守りたい。積極的に変化を求めるよりは・・


「 そう、失 敗 体 験って、人を 臆 病 にするんだよ 」

(一部抜粋)



交際期間も短いままに “できちゃった結婚”をした有沙には

夫には結婚前には言いそびれた事がありました。



それは 有沙には 過去結婚していた事があり、男の子も出産 していたこと



おいおい、結婚歴なんかは結婚するとき に戸籍謄本 見れば分かるでしょうが・・・

と思わずツッコミを入れてしまいましたが w

ただ、本籍地を変更するなどして戸籍をクリア というか

リセットする方法は有るかもしれませんが?



本作ではその点は明らかにはされていません。

また、そこを曖昧にしたままでないと そもそもこの物語は成立しませんから ww



夫の両親も有沙には申し訳が無いと言いながらも 

いつまでも経済的援助するのは苦しいし 有沙に働くか 

もしくは人生をやり直す方が・・・などとほのめかしてきます。


ちなみに、この夫の両親達は 良識のあるよく出来た人たちで

この手の物語にはありがちな 息子可愛さのあまり全て悪いのは嫁!

と責める人たちではありません。 ちょっと 出来すぎ のような?



さてさて・・・この物語が ど う 終 わ る と思います?



離婚して すべて一から再スタートを切るか、とも思いました。

涙をふいて スカーレット・オハラのように 「 明日 考えよう 」 と・・・



結論から言っちゃいますが、まあハッピーエンドなのでしょうね。



桐野夏生の作品には思えない程の 優しい優しい終わり方でした。

まあ、収まるべき所に収まったというか 私的には意外でしたが w

予定調和の終わり方かもしれないけれど 救いはあります。



この作品は 女性誌「VERY」に連載されたものですが

対象が有沙と同世代の 若いママが多いせいか 救 い の あ る 結 末

なったのでしょうか。


桐野夏生作品ではなく 唯川恵が書いたみたいな作品という印象を

受けたのは私だけかしら?


単行本にあたり、「新たに、衝撃的な結末へ大幅加筆!」と帯に

書いてありましたが


いやいやいや、衝撃的というよりは ちょっとした オ チ でしょう w

そう、見栄をはっていたのは 有沙だけでは無かった、という ww



話は変わりますが、ママ友との軋轢・・・ということで

実は思い出したのが 新堂冬樹の 『 砂 漠 の 薔 薇 』

こちらもママ友グループの格差・お受験を巡っての 微妙な関係

そして迎えた悲劇的な結末を描いたものでした。



そう、本来の桐野氏ならば 同じ結末(ハッピーエンド)であっても

もっと 心 を 抉 る よ う に 描写して終わらせるだろうに・・・

とも感じてしまいましたが。


あなたなら どう思うかしらね・・・・・


さて、今日はこれでおしまい。 (アップが遅れちゃった・・・)

また明日ね。





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2013年03月21日

「太陽の日」に読む 『 太陽は 動かない 』 by 吉田修一


3月21日は「太陽の日」です。


・・・・・と書いたのですが、実は年によって違いがありまして

今年は20日だったんですよ、つまり春分の日・・・

でも、まあ今年はこのままでお許しを!

ちなみに「太陽の日」はソーラーシステム振興会が定めたものです。


さて、太陽の日には 実は別の作品を幾つか目論んでおりましたが

たまたま図書館の書棚を見ていたら、コレが目に付きました。

手に取って見ると著者は吉田修一。

『悪人』や『横道世之介』の?


こういうの出てるんだーと思い、奥付を見ると2012年4月。

あー、いいんじゃない?と中身のチェックもせずに借りることにし

ました。そう、全く先入観なしにね。



はい、今日の 読書は 『 太陽は動かない 』 by 吉田 修一  幻冬舎


吉田修一氏は 山本周五郎賞や毎日出版文学賞、柴田錬三郎賞等の受賞作家。

一定数の固定ファンを獲得している人気作家なので

あなたも既に何作かお読みになったこともあるかもしれませんね。



さて、物語はベトナム・サイゴンの病院からスタートします。

見舞いに訪れた、韓流スターかと見紛うばかりのスマートな男性。

やがて病室からは一発の銃声が響きます・・・


始めは石油利権にからむミステリかと思ったのですが

読み進める内にアクション・スパイ物だと分かります。


油田開発以上に旨味のある事業・ 太 陽 光 発 電 を巡って繰り広げられる

アクション・ドラマと言って良いでしょう。



次々と登場するのは絵に描いたような怪しげな男女ばかり・・・・・



妖艶な謎の美女AYAKO   ウィグル反政府組織首領の女 

中国闇社会の事情通の男  主人公の上司である車椅子の男 

日本企業を裏切って中国企業に寝返った男 などなど



主人公・鷹野一彦はAN通信情報部の情報員。

このAN通信はアジア各国のエンターティメント情報を配信している

小さなニュース通信社、ということになっています。

勿論、それは表向きの顔で実は・・・・



この世の中で一番価値あるものは情報ですよ。情報は宝です。

宝探しに秀でた者がこの世の中を制する。


( 一部抜粋 )


効率的に掘ってくれる優秀なスタッフがいる。

きっと探し出せますよ。

さっき私が言った優秀な宝探しのプロ集団を。


( 一部抜粋 )


そう、主人公・鷹野とそのスタッフ達はこの 「 宝 探 し 」 のメンバーなのね。


まあ、早い話が産業スパイです。


彼らのミッションは 機密情報を探り出しては高値で売り飛ばすこと。

そして、彼らの身体には 24時間 連絡が 途絶えたら 爆発する仕掛け

施されているという・・・・・



映画の『ミッションインポッシブル』のようなものかな。

この手の物語では(例えば007のように)主人公は何が起ころうと

も死なないというお約束があるから、安心して読めますよ。


中国・天津スタジアム爆破計画が進むスタジアムから、命がけで

拉致された部下・田岡を救い出す事件を皮切りにして

新しく開発された太陽光パネルを利用した国家規模のプロジェクト、

さらに上回る宇宙太陽光発電を巡って、それぞれの思惑と利益が

絡み合い、謀略戦が繰り広げられていきます・・・・



読んでいる間は、ジェットコースター的展開で それなりに楽しめたから、

ストーリーの骨格は悪くはないと思ったの。そう、 骨 格 はね。




とにかく場面展開が急なので 退屈する暇はないくらいですが

ストーリーが やや御都合主義だとも言えるかな。


あちこちでツッコミを入れたくなるケースが多かった。


場面と場面をつなぐプロセス描写が省かれている事が多いの。

だから、途中で何度か前のページに戻って見直しをしたりした。


えっ、いつの間に?  あれ、もう恋人同士になったの?  など・・


これを手抜きと感じるか、それとも そういうスタイルだと思うかは

読み手次第でしょうが、不満は残るかもしれません。

それとも、敢えてそういう手法を採ったのかしら?


版元がつけた この作品のキャッチコピーが  ↓


超弩級のエンターティメント!


↑  いやいや、はっきり言って誇大広告でしょうがww



娯楽小説とは言っても、ハリウッドのB級娯楽映画みたいなんだよね。

映画館に足を運ぶまでもない、テレビ放送でもされた時にでも

一度見れば充分、というレベルの。


もし仮に、この作品が江戸川乱歩賞の応募作品であったならば

受賞しても全く文句はない出来だと思うけれど・・・


ただ、スパイアクション物が好きな読者には物足りないでしょう。

逢坂剛や福井晴敏、または藤原伊織ならばどう書いただろうか?

と考えてしまうから。



だけどね、 吉田修一氏のファンなら、それで満足するはずが 無い

第一、人物像がみんな物足りないような?

吉田氏ならもっともっと深く掘り下げて書けるはずなのに。


この作品は、これまでの吉田氏の作品とは全然別のものだと考えたほうが良いみたい。

勿論、新分野にチャレンジする姿勢は作家として素晴らしいと思うし

自ら築き上げた作風を敢えて覆すような作品を書いてみるのも悪くは無いと思う。


冒険ではあるけれど、ある意味ではそれは脱皮だからね。

作風が広がって更に読者を楽しませてくれるのだから。


ただ、吉田氏の熱心なファンであるならば 本当に氏に書いて欲しかったのは 

もっと、違うものかもしれないけれど・・・・・


この作品はシリーズ化する予定はないのかしら?

” AN通信・鷹 野 ”シリーズとして、今回のキャラクタを生かして続いていけば

まだ期待が持てそうなのですが。 そんなことを考えてしまいました。



鷹野もそうだが、この田岡という男も、もう二度と会えないような目で

いつも去ってゆく


( 一部抜粋 )


鷹野の出自については、最後に明かされますが・・・・吉田氏らしい設定キャラでしたよ



さてと・・・今日はこの辺で。

また明日ね。



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2013年03月20日

「ポートピア’81 開催の日」に読む 『 ダンスと空想 』 by 田辺聖子


3月20日は 神戸ポートアイランド博覧会が開催された日。


愛称は「ポートピア’81 」 神戸港にあるポートアイランドにて

1981年3月20日〜9月15日まで開催されました。

博覧会は大成功を収め、80年代後半の地方博ブームの火付け役に。



その頃の神戸を背景にして書かれた作品を・・・・・



はい 、今日の読書は 『 ダンスと空想 』

著者: 田辺聖子    文春文庫



著者はあなたもよく御存知の 田辺聖子氏。



2002年に、伴侶であった“カモカのおっちゃん”を亡くされましたが

もう長く第一線で 活躍中の作家であり、ユーモアのある みずみずしい感性で楽しい

小説やエッセイを発表して来られました。


平易な言葉で、いつの世も変わらぬ人の心を達者に描き

古典文学への造詣も深い方です。



“ おせいさん ”という呼び名はあなたもよくご存知かもしれませんね。



私自身、もうずっと長くこの方の作品を読んできましたが

一番魅かれる理由としては どの作品を読んでも

作者の、登場人物に対する “ 愛 ” が感じられて心地が良いのです。



いやいや、抽象的過ぎる・安易過ぎる表現ですが・・・・

言い換えれば、自分が創作した登場人物のことが大好き!なのかな。

また、主義主張・考え方の異なる人間に対してでも全否定はしないとも言えるかも?


あっ、例によって異論は認めますので。



わざわざこんな事を言うのは、自分の作品の登場人物を憎んでいるのでは?

と思わせられる作家さんも中にはいるから。



これ、主人公が悲劇的な境遇になったり不幸な人を描いている、

という意味ではありません。

また、テーマや登場人物が下品だから、というものでもない。



もっと、汚らしい意図というか、主人公を貶めて舌なめずりして

喜んでいるような卑しさ・・・が感じ取れてしまうというか。

で、そういう作家さんの作品は、登場人物に魅力が無いし

後味も悪く感動もない・・・・・まあ、誰とは言いませんが。



おっと、いけない話を元に戻しましょう。



この作品が書かれたのは1980〜1981年、さすがに少々古い部分もあるかもしれません。

ポートピア‘81 開催前の神戸で いきいきと働く 女性達の姿が描かれていますが

他の作品よりもやや軽めのハイ・テンションで 綴られているような気もするかな?




登場するのは 神戸に住んで 神戸で働き 神戸を愛している女性達です。

若い年齢ではなく、今でいう アラフォー世代 かしらん



ヒロインの カオルさんはオートクチュールのデザイナー。


同じような独立した仕事を持つ女性達10人ほどとグループを作っています。

シナリオライターの大信田さん・ミニコミ紙編集長のミドリさん

ブティックを経営しているけい子・手芸家のモト子さん、などなど


グループの名前はベル・フィーユ(フランス語で美少女 w という意味)



みんな 「 自分で税金を払って、中小企業 金融 機関に借金をし、

人を使って店を張ってゆく 」女性ばかりです。



そうして、毎月集まって おいしいものを食べながら歓談します。

毎回、ゲストには著名人男性を一人呼んで皆でイビる・・・ とww



また合同ファッションショーやパーティを企画したり、

神戸まつりには皆でチームを組んで、三宮フラワーロードを練り歩き

サンバを踊ったりもします。


入会の条件は「独身」であること。


ちなみに男女雇用機会均等法が施行される前のお話です。

取り立ててドラマティックな事件が起こるわけでもなく、カオルさん

を始めとするメンバーたちの活動振りを描いてお話は進みます。


そう、阪神大震災前の 神戸の姿がこの物語の中に 封印されて残っているような・・・


まあ、たまには「口説き・口説かれ」のエピソードもありますがw


それよりも、この作品の場合、田 辺 氏 一 流 の ア フ ォ リ ズ ム がかなり

散りばめられているんですよ。 地の文や 登場人物の口を借りて、ね。



実際、この世には二種類の人間がいるのだ。

ひとつのものをじっくり食べつくす人間と、

あちこちかじり散らして、広く浅く知ろうという人間。


(一部抜粋)


けれども最後は、(私のいつもいうことだけど)

人間、「気立て」である。技術なり技能なり才気なりはあるけれども、

気立てが悪い、人柄がいやみだ、というような人は、私はあんまり

好きではなく、モデルさんにまでそういうのを要求するのだから、

我ながらおかしい。


(一部抜粋)


そして、この物語の底流を流れるのは、

私たちの人生は、神さまから「 借りている 」という考え方


これ、田辺氏の他の作品にも何度も出てくるのですが

人間として生まれてきたのは「 神様から借りたもの 」だから、

いつかは 返さなければ いけません



そう、自分が死ぬときには神様に全部返すのね。



これまでの人生も喜びも悲しみも 取り組んできた仕事も何もかも。

神様は、返してもらったその人生をじっくり眺めてその人がどう

生きてきたか判断してくださるそうです。


さて、私もそろそろ 返すときが 近付いてきたような気もしますが ww


それでは、今日はこの辺でね。

また明日・・・

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