2013年03月21日

「太陽の日」に読む 『 太陽は 動かない 』 by 吉田修一


3月21日は「太陽の日」です。


・・・・・と書いたのですが、実は年によって違いがありまして

今年は20日だったんですよ、つまり春分の日・・・

でも、まあ今年はこのままでお許しを!

ちなみに「太陽の日」はソーラーシステム振興会が定めたものです。


さて、太陽の日には 実は別の作品を幾つか目論んでおりましたが

たまたま図書館の書棚を見ていたら、コレが目に付きました。

手に取って見ると著者は吉田修一。

『悪人』や『横道世之介』の?


こういうの出てるんだーと思い、奥付を見ると2012年4月。

あー、いいんじゃない?と中身のチェックもせずに借りることにし

ました。そう、全く先入観なしにね。



はい、今日の 読書は 『 太陽は動かない 』 by 吉田 修一  幻冬舎


吉田修一氏は 山本周五郎賞や毎日出版文学賞、柴田錬三郎賞等の受賞作家。

一定数の固定ファンを獲得している人気作家なので

あなたも既に何作かお読みになったこともあるかもしれませんね。



さて、物語はベトナム・サイゴンの病院からスタートします。

見舞いに訪れた、韓流スターかと見紛うばかりのスマートな男性。

やがて病室からは一発の銃声が響きます・・・


始めは石油利権にからむミステリかと思ったのですが

読み進める内にアクション・スパイ物だと分かります。


油田開発以上に旨味のある事業・ 太 陽 光 発 電 を巡って繰り広げられる

アクション・ドラマと言って良いでしょう。



次々と登場するのは絵に描いたような怪しげな男女ばかり・・・・・



妖艶な謎の美女AYAKO   ウィグル反政府組織首領の女 

中国闇社会の事情通の男  主人公の上司である車椅子の男 

日本企業を裏切って中国企業に寝返った男 などなど



主人公・鷹野一彦はAN通信情報部の情報員。

このAN通信はアジア各国のエンターティメント情報を配信している

小さなニュース通信社、ということになっています。

勿論、それは表向きの顔で実は・・・・



この世の中で一番価値あるものは情報ですよ。情報は宝です。

宝探しに秀でた者がこの世の中を制する。


( 一部抜粋 )


効率的に掘ってくれる優秀なスタッフがいる。

きっと探し出せますよ。

さっき私が言った優秀な宝探しのプロ集団を。


( 一部抜粋 )


そう、主人公・鷹野とそのスタッフ達はこの 「 宝 探 し 」 のメンバーなのね。


まあ、早い話が産業スパイです。


彼らのミッションは 機密情報を探り出しては高値で売り飛ばすこと。

そして、彼らの身体には 24時間 連絡が 途絶えたら 爆発する仕掛け

施されているという・・・・・



映画の『ミッションインポッシブル』のようなものかな。

この手の物語では(例えば007のように)主人公は何が起ころうと

も死なないというお約束があるから、安心して読めますよ。


中国・天津スタジアム爆破計画が進むスタジアムから、命がけで

拉致された部下・田岡を救い出す事件を皮切りにして

新しく開発された太陽光パネルを利用した国家規模のプロジェクト、

さらに上回る宇宙太陽光発電を巡って、それぞれの思惑と利益が

絡み合い、謀略戦が繰り広げられていきます・・・・



読んでいる間は、ジェットコースター的展開で それなりに楽しめたから、

ストーリーの骨格は悪くはないと思ったの。そう、 骨 格 はね。




とにかく場面展開が急なので 退屈する暇はないくらいですが

ストーリーが やや御都合主義だとも言えるかな。


あちこちでツッコミを入れたくなるケースが多かった。


場面と場面をつなぐプロセス描写が省かれている事が多いの。

だから、途中で何度か前のページに戻って見直しをしたりした。


えっ、いつの間に?  あれ、もう恋人同士になったの?  など・・


これを手抜きと感じるか、それとも そういうスタイルだと思うかは

読み手次第でしょうが、不満は残るかもしれません。

それとも、敢えてそういう手法を採ったのかしら?


版元がつけた この作品のキャッチコピーが  ↓


超弩級のエンターティメント!


↑  いやいや、はっきり言って誇大広告でしょうがww



娯楽小説とは言っても、ハリウッドのB級娯楽映画みたいなんだよね。

映画館に足を運ぶまでもない、テレビ放送でもされた時にでも

一度見れば充分、というレベルの。


もし仮に、この作品が江戸川乱歩賞の応募作品であったならば

受賞しても全く文句はない出来だと思うけれど・・・


ただ、スパイアクション物が好きな読者には物足りないでしょう。

逢坂剛や福井晴敏、または藤原伊織ならばどう書いただろうか?

と考えてしまうから。



だけどね、 吉田修一氏のファンなら、それで満足するはずが 無い

第一、人物像がみんな物足りないような?

吉田氏ならもっともっと深く掘り下げて書けるはずなのに。


この作品は、これまでの吉田氏の作品とは全然別のものだと考えたほうが良いみたい。

勿論、新分野にチャレンジする姿勢は作家として素晴らしいと思うし

自ら築き上げた作風を敢えて覆すような作品を書いてみるのも悪くは無いと思う。


冒険ではあるけれど、ある意味ではそれは脱皮だからね。

作風が広がって更に読者を楽しませてくれるのだから。


ただ、吉田氏の熱心なファンであるならば 本当に氏に書いて欲しかったのは 

もっと、違うものかもしれないけれど・・・・・


この作品はシリーズ化する予定はないのかしら?

” AN通信・鷹 野 ”シリーズとして、今回のキャラクタを生かして続いていけば

まだ期待が持てそうなのですが。 そんなことを考えてしまいました。



鷹野もそうだが、この田岡という男も、もう二度と会えないような目で

いつも去ってゆく


( 一部抜粋 )


鷹野の出自については、最後に明かされますが・・・・吉田氏らしい設定キャラでしたよ



さてと・・・今日はこの辺で。

また明日ね。



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。