2013年04月27日

「 婦人警官 記念日 」に読む 『 ブ ル ー マ ー ダ ー 』 by   誉 田 哲 也


こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


4月27日は「 婦人警官記念日 」・・・昭和21年4月27日に 日本で初めて

東京警視庁で 女性の警察官が採用された日です。但し、当時は 逮捕権限を

持たない、実質的には事務職が殆どだったそうです。



現在は“ 婦人警察官 ”ではなく “ 女 性 警 察 官 ”と呼び、白バイ隊や幅広い

職務で活躍中、もちろん “ 刑 事 ”もね。 女性の名探偵(ミス・マープルとか?)

だけではなく、最近では 警察勤務の 女 性 刑 事 の 物 語 も多くなりました。


柴田よしき氏の「 村上 緑子 」や、乃南アサ氏の「 音道 貴子 」についても

いつかお話する機会もあると思いますが・・・



今日は この方に登場して 頂きましょう。 姫 川 玲 子 サン 、どうぞ!


はい、今日の読書は 『 ブルーマーダー 』です。    by 誉 田 哲 也


    ブルーマーダー

    著者:誉田哲也

    版元:光文社

    サイズ:単行本 436ページ

    発売日2012年11月



著者は 誉田哲也氏です。著作がドラマ化や映画化される事も多くなったので

その分、ファンも増えて 1作ごとに力をつけている作家と呼んでも良いと思う。


シリーズ物では 警視庁特殊犯シリーズ『 ジ ウ 』、女子高生を主人公にした

『 武 士 道 シ リ ー ズ 』 、そして今回の『 姫 川 玲 子 シ リ ー ズ 』!



姫川玲子が初めて登場したのは、2006年の 『 ス ト ロ ベ リ ー ナ イ ト 』 から。

当時は、警視庁 捜査一課・殺人犯捜査係の主任であり、役職は 警部補。


ちなみに、警察官の役職ランクをざっくり言えば 巡査 → 巡査部長 → 警部補 → 警部

→ 警視 → 警視正と 出世の階段があります。 ちなみに玲子はノンキャリア組、ね。

警部補というのは、一種の 中間管理職的な位置づけかなと理解しています。



その後、『ソウルケイジ』 『シンメトリー』 『インビジブルレイン』 とシリーズは続きました。

もし、あなたが姫川玲子のシリーズを未読であれば『ストロベリーナイト』から

順番に( 時系列順 )読んでもいいし、どれかを単独で読んでもいいと思う。



短編集『 シンメトリー 』や 派生した作品である『 感 染 遊 戯 』なども充分に楽しめると思うな。

基本的には・・・ミステリというよりは 「 警 察 小 説 」として読むといいかな? 

警察という組織ならではの、困難や苦しみ・矛盾もある作品として・・・



扱っている事件は 結構 陰惨なのだけど、吹っ切れたような明るさをも

備えた作品なので、後味はどれも悪くないし。


また、若い独身女性として 当然恋もするのだけれど・・・フィジカルな恋愛については

彼女は少々問題を抱えている・・・17歳のとき、連続婦女暴行犯の犠牲に

なった事があり、その時の恐怖を現在でも完全に吹っ切ってはいない。


前作の『 インビジブルレイン 』では、立場上好きになってはマズイ男を愛して

しまったりもした。 そういう屈折した部分を抱えているのが彼女の魅力でもある。



また、玲子の天敵 ww ともいうべき悪徳警官の 勝 俣 (本作でも登場!)が

玲子を評してこう言っているのが 興味深い。これが他の警察小説の主人公と全く

異なる特異点・・・なのか?


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

───自分では無意識なんだろうが、お前はおそらく、ホシ(犯人)の意識

に 同調してしてるんだ。なんの根拠もなしにホシを言い当てたり、行動を

読んだりできるのは、おそらく、お前がホシと極めて近い思考回路を

持っているからだ。


★━━━━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━★


勝俣の見方が 正しいのかどうかは私には分かりませんが・・・


そして、本作『 ブルーマーダー 』では、異動があり 玲子は都内池袋署の

刑事課 強行犯捜査係に配属されています。肩書きは担当係長。


対決するのは “ ブルーマーダー ”と呼ばれる殺人者・・・“ Blue Murder ”

青き殺人(者)とでもいうのか・・・殺人時に、ブルーのベネチアンマスクを

目元に装着しているのを偶然見られて、水面下でそんな渾名が付けられたようですが・・

ちなみに、ベネチアンマスクって、こんな感じね↓ これが一番シンプルなタイプ↓


ブルーマーダーは、池袋を中心として 指定暴力団や 暴走族上がりの半グレ集団、

不良中国人のグループ達を手当たり次第に殺しているように・・・見える。

殺すターゲットとしている相手を どんな基準で選んでいるのか不明。


いわゆる無差別殺人ではなさそうです。しかも、殺し方が独特で鑑識が首を

ひねるほど・・・鈍器様のもので 執拗に全身を殴りつけて撲殺、全身の骨が

ほぼ折られた 無残な状態で発見されます。



どのようにして?  何 の た め に ?  な ぜ ?  彼らを殺しているのか?



これが 今回の事件のテーマになります。


また、この物語の中で、殺人者のブルーマーダーと その仲間たちは最初から

姿を現しています。 借金を抱えて 四苦八苦しながら ヤケになり覚醒剤に手を

出して 失敗した鉄工所のオヤジ・・・彼がブルーマーダーの武器を造ります。


また、仲間から 執拗にリンチに近いような嫌がらせを 受け続けている若い男・・・

「 もう・・・閉じ込められて、殴られて、脅されて・・・奴隷になるのは、嫌だ・・・ 」

そう言って、ブルーマーダーに心酔・協力します。



そしてブルーマーダー・・・冷酷極まりない殺人を犯しながらも、あれ?と

思う程に 律儀な、真っ当で冷静な一面を持っている・・殺人はしても

飲酒運転はしないとか ww


読者として読み進めて行く内に、大きな疑問がわいてきます。それは・・・



ブ ル ー マ ー ダ ー と は 何 者 な の か ?



そうして、後半になって、かって玲子とチームを組んでいた ベテラン刑事の

下 井 が登場する頃から ブルーマーダーの正体が少しずつ明らかになってきます。


どうやら・・・元警察官のらしいのですが・・・退職して身を持ち崩していた

彼を、下井刑事は “ あ る こ と ”を頼みます。

それは、暴力団の内部に入り込んで 信頼を得て、情報を警察(下井)に流す事・・・


いわゆる“S”と呼ばれる ス パ イ ですね・・・それがこの殺戮の 遠因になってしまう。



クライマックスでは、菊 田 ともう一人の刑事を人質にして アジトに立てこもった

ブルーマーダーを 説得するため 玲子は単身乗り込みます。


それはまさに「対決」といっても良い名勝負でした。


以前のように部下を殉職させたくない責任感を感じたせいでもあるし、

また部下ではあっても 異性として愛しそうになった 菊 田 を 守 り た い という思いもあったから。



そうして、逮捕され、最終的には 勝俣や下井の尽力で 真実を知ったブルーマーダーは

罪状を全て隠すことなく認めるでしょう。



ひょっとしたら、これからの取調べ中にも 自分が殺した相手の事を申し訳ない事を

したと 心から思うかもしれないね・・・ けれども、最後の最後になって

姿を現した 本当に許せない相手に対しては こう言い放ちます。



「・・・あ ん た だ け は 、化 け て で も 殺 す 」



正義とは何か? ということを 胸元に鋭い刃で 突きつけられるような思いを

受けた読了感でした。


しかし、後味は悪くはありません。誉田哲也の作品は「イヤミス」ではありませんから。

また、猟奇的な殺人が嫌悪感をもよおす方は そもそも読まないだろうし、ね。



今作にしても、ストーリィと直接的には関係ない部分でも 個性豊かなキャラクタ群像を

充分に楽しめて、それが作品中の息抜きにもなっている。


玲子を 眼の敵のようにして イビル勝俣にせよ、無くてはならぬキャラクタだからね。

彼は 正攻法ではない ww 能力は充分にあるから。



やはり、そこには “ 愛 ”があるのかしらん(爆) もう、勝俣サンったら、

玲子ちゃんが 好きなら好きと言いなさいよ〜(大爆笑)


さてと・・・今日はこれでお終いです。

またね。



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(1) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月26日

「 風呂の日 」に読む 『 小 説 乃 湯 』  by 有栖川 有栖


こんにちは、また来て下さってありがとう。


毎月の26日は「風呂の日」になります。


読書とお風呂・・・う〜ん、相性が良いのか悪いのか ww



えーとですね、白状しちゃいますが・・・ 活 字 中 毒 者 的にはですね、

お風呂、入浴しながらの 読書というのは、また格別な 喜びがありまして・・



ほどよい湯加減の、ややぬるめのお湯につかりながら肩の凝らない気楽な

読書というのは気が遠くなる程の快感であるわけです。



ラベンダーの香りのする入浴剤なんか入れたりもすると、もう最高。

もちろん、そう長い時間ではなく 短編小説一編くらいが丁度良いかな?



季節的には冬が一番ですね。 今の季節ならば、半身浴もしたりします。

真夏はチョット合わないんだけど、スポーツドリンクをお供にして・・・


もちろん、本は紙で出来ていますから濡らさないように細心の注意を払い

浴槽の半分を蓋で覆い、その蓋の上に濡れないように工夫して、本を

専 用 ス タ ン ド に立てかけて・・・( ← あるんだよ、マジで ww )



但し! 但し!! 利用するのはあくまでも 自 分 の 本 ですよ。

図書館や友人・知人から借りた本は 絶対にお風呂では読みません

幾らなんでも、他人様の本を そう扱ったらマズイでしょうよ、人として ww



さて、そんなお風呂と 読書の関係ですが、なんとなんと作品中にお風呂が

登場するアンソロジーが出版されましたあ〜〜!


はい、今日の 読書は 『 小 説 乃 湯 』  by 有栖川 有栖


    小説乃湯 お風呂小説アンソロジー

    著者&編集:有栖川有栖

    版元:角川書店

    サイズ:文庫361ページ



上の画像には付いていませんが、実際には 帯が巻かれていて そこに書かれているのが

「お風呂のお供におひとつどうぞ」本書の効能:ストレス・疲労回復、心の滋養効果

なかなか、しゃれていますね。


このアンソロジーを編んだのは 有栖川 有栖氏(1959〜 )。

本格ミステリの旗手として1988年『 月 光 ゲ ー ム 』でデビュー、本格物の

ミステリジャンルでは、確固たる地位を築いている 実績のある人物です。

週刊文春の年間ミステリベスト10や「このミス」では名前の挙がる常連作家。

 
個人的には、「 火村英生シリーズ 」が 一番気に入っているのですが・・・



さて、有栖川氏は このアンソロジー企画の事をこう語っています。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

読書とお風呂。かけ離れたもののようでいて、この二つには親和性があり

そうです。ある時、「 そういえば── 」と思い当たりました。私は、小説に

お風呂が出てくるシーンが好きなのでした。 (中略)

本当にまとめて一冊の本にしたらどうか? お風呂小説アンソロジー。

(中略) 面白いではないか。

★━━━━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━★


このアンソロジーは、時代順( 発表年度 順 )に全部で12編収録されています。

以下、思うままに、少々・・・



浮 世 風 呂 】 式亭三馬(1776〜1822)

御存知、江戸時代後期(文化・文政期)のお風呂小説です。銭湯での江戸庶民の

生態がリアルに描かれていているのですが、書名だけは知っていても、

実際に読んだのは 実は今回が初めて。この作品を(都市部の)庶民たちが

読んで楽しめた、という事は・・・いかに当時の 識 字 率 ・つまりは教育レベルが

高かったかという証明になるよね。

ああ、そうか・・。 だから明治維新も成功したんだろうね ( ← えっ? )



柳 湯 の 事 件 】 谷崎潤一郎(1886〜1965)

文豪・谷崎潤一郎の初期作品です。『 刺青 』・『 痴人の愛 』・『 細雪 』等の作品と異なる

江戸川乱歩を思わせるような 探偵小説ですが、芸術至上主義を謳う作家の作品と

いうよりも、谷崎自身が結構楽しんで書いたのでは?と思うんですが ww



泥 濘 】 梶井基次郎(1901〜1932)

3月27日にも取り上げた梶井基次郎の小品です。

何事も思うようにならない 作者自身が主人公。やりきれない雰囲気を味わう作品ですが

・・・お風呂が出て来ないよ、と思ったら・・・?



電 気 風 呂 の 怪 死 事 件 】 海野十三(1897〜1949)

日本SFの先駆者と呼ばれた海野十三。 逓信省の電気試験所の技師として

勤務しながら小説を書いていました。この作品は、1928年乱歩主宰の「新青年」

に発表したデビュー作です。

ミステリとして今読むと、いろいろとツッコミどころは多いけれども

「電気風呂」(今でも銭湯にあります)が昭和3年の時点で実用化されてい

たのはチョット驚き・・・。



玄 関 風 呂 】 尾崎一雄(1899〜1983)

1937年、あっけらかんと明るい奥様をモデルにした『 暢気眼鏡 』で芥川賞を

受賞した私小説作家。私小説というと暗いイメージがあるのだけれど・・・

お風呂場もないのに 風呂桶だけ買ってどうするのよ? と みんなでツッコミ

をいれましょう! 特にユーモア小説を書こうと意識してはいないのに、

ありのままを 書いたらユーモア小説になる 稀有の作家 ww



美 少 女 】 太宰治(1909〜1948)

御存知 太宰の作品ですが、これは初読でした。自身の新婚時代をモデルにした

私小説風の作品。湯治先で出会った 少女の肢体が素晴らしいのですが、

この少女、結局最後まで口をききません。 ところで、太宰治は何を書いても

太宰治・・・というのが改めてよく分かりますね。




エ ロ チ ッ ク 街 道 】 筒井康隆(1934〜 )

お〜っ! 筒井御大の作品が! と一人で喜んでしまいましたわ。

不思議な不思議な 夢を文章化したら、こんな感じになるのでは?と思わせる作品。

なにしろ、温泉そのものが 交通手段になるんですから ww




あ あ 世 は 夢 か サ ウ ナ の 汗 か 】 辻真先(1932〜 )

まるで怪談のような不可能犯罪・・ビルの屋上庭園で発見された 墜落死体、

周囲には他に高いビルも無いのに、どうして? しかも、その死体の主?に

後年、サウナでばったり出くわすとは・・・「 安楽椅子探偵 」ものです。

名探偵は 70歳過ぎの老人で、なぜか出没するのは常にサウナですって?




秘 湯 中 の 秘 湯 】 清水義範(1947〜 )

「 そばの日 」で紹介した清水氏の“ 秘 湯 ”をテーマにしたパスティーシュ作品です。

骨壺温泉・風呂湯温泉・迷子谷温泉・死急温泉・湯気蒸温泉・空中温泉・

極道温泉・泥沼化温泉・恥曝温泉・湯雨温泉・オユ湯温泉などがございますが www

さて、どの温泉がお気に入りですか (爆




水 に 眠 る 】 北村薫(1949〜 )

残酷な殺人事件を余り扱わずに、それでいて良質なミステリがお得意な

北村氏の短編小説。水やお湯の「 薄皮を剥ぐ 」という発想は初めて!

幻想小説風な好短編でした。 今度お風呂で試してみようかな???




花 も 嵐 も 春 の う ち 】 長野まゆみ(1959〜 )

男性同士が 人目を忍んで逢瀬を楽しむ宿「 左近 」・・・。

16歳になる息子の 桜蔵は家業を手伝っていますが、なぜか妖かしのものを

引き寄せてしまうタチでして・・・桜の花びらが天窓から降り注ぐお風呂

・・・異世界の住人だって入ってみたいよね?




旅 を あ き ら め た 友 と、そ の 母 へ の 手 紙 】 原田マハ(1962〜 )

30代半ば・独身女性の 温泉一人旅で泊まったホテルの様子が素敵でした。

原田氏の作品は初めてでしたが、描写に絵画的な美しさ があるのね。

この作品が収録されている 短編集『さいはての彼女』読んでみようかな・・



・・・・・以上12編、ミステリだけではなく、バラエティ豊かな 本邦初の

お風呂小説アンソロジーでした。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

本書を読んでも筋肉痛、神経痛やリュウマチその他は改善しませんが、

ストレスや疲労の回復の効能があり、心に滋養豊かです。

小説浴でリラックス&リフレッシュして、明日への活力を───

★━━━━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━★

あはは・・・確かに。活字中毒者は 日 々 是 読 書 浴 の日を送っておりますわ ww

あなたも、そうではないのかしら?

さてと・・・今日はこれでおしまい。

またね。




posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月25日

「 ギロチンの日 」に 読む 『 ぼくに 死刑と 言えるのか 』 by  北尾 トロ


こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


4月25日は、なぜか「ギロチンの日」なんですが・・・。

1792年に フランスで ギロチンが 実 用 化 (!)された日だそうです。


当時のフランスは 革命後の恐怖政治の真っ只中、貴族・平民を問わず 多くの人々が

処刑されていました。 ヨーロッパに於けるそれまでの死刑方法は、平民は 絞首刑で

貴族が 斬首刑が普通だったのですが、これを 平 等 に (?!)かつ

スピーディに、かつ 人 道 的 に ( ←えっ? )処刑する為に 考案されました。


発明者は 医師のジョセフ・ギヨチーヌが有名ですが、似たような器械は

それ以前にもヨーロッパ各地に存在はしていました。最終的に、最も 洗練された(?!)形

で完成させたのがギヨチーヌ医師ですね。



うーん・・・ギロチンねぇ・・・真っ先にフランス革命や、マリー・アントワネットを

連想しますけれども・・・・・


ちなみに、フランスでは 1982年に 死刑制度が廃止されていますが、ギロチンそのものは

1977年の9月まで 現役で使用されていました。 グロテスクな処刑方法に思えるけれど

一瞬で 死ねるので苦しみが少なく、人道的であると考えられていたから。



さて、今日は2冊ご紹介しようかなあ・・・まず、前フリとして、この本を・・・




図 説・死 刑 全 書 著者:マルタン・モネスティエ 版元:原書房 単行本:405ページ


著者のマルタン・モネスティエ(1942〜)はフランスのジャーナリスト&作家。

タ ブ ー と さ れ る 領 域 を 独自の視点で データベース的にまとめた著作が

多いので 有名な人物です。他の著作については、ここではお話しませんので

興味のある方は検索してみてね。


悪趣味、といえばその通りなんですが、綺麗事ではない人間の一面を、

マジメに真摯に捉えた本であるとも言えるので。



さて、この本は、死刑の是非を問うものではありません。歴史的に

(ヨーロッパ中心ですが)様々な 処 刑 が ど の よ う に し て 行 わ れ た の か

という事を豊富な図版や写真で紹介した本です。古くは、動物刑・咽喉切り・磔刑・

飢餓刑・幽閉などから 現代の電気椅子や薬物注射まで全36章に渡り綴られています。


ギロチンについても第32章で取り上げられていますし、また、有名な中国の

「凌遅の刑」の写真なども掲載されています ← これは完全に “ 閲 覧 注 意 ”・・・


社会学的な興味、もしくは怖いもの見たさ?でも 興味のある方にとっては

充分に 知的好奇心が満たされる本ではあるでしょう。入手し難くとも、

地域の 基幹図書館等には置いてあるんじゃないかな?



ただ、この本はあくまでも“ 知 識 ”もしくは“ 過去の歴史 ”であって、

処刑や 死刑が切羽詰った自分の問題とは考えにくいでしょう? 

あなたも私も、殆どの人がそうだと思う、普通はね。

“普通”ではない事は、私たちは余り考えないのだけれど・・・



死刑廃止は世界的なムーブメントではありますが、現在の日本では存続しています。

今日は、その是非を問うわけではありませんし・・・また、これまでは

そういう裁判に係わるのは 限られた法の専門家の領域だったんですが・・・

近頃では事情が変わってきましたよね? そう、裁 判 員 制 度 の導入です。



2009年の5月から実施されましたが、あなたの周囲で 選ばれた方はいますか?

多分、NO!であると思うけれども、私 や あ な た が 選 ば れ る 確 立 って・・・


日本の人口を約1億人として、選挙権のある有権者を絞り、その内の70歳以上はパス

また、会期中の議員や学生、5年以内に裁判員を務めた人を除き・・・

平成23年度の実績では 約8500人に1人とか・・・これ、生涯確立で考えると、

結構高くなるのではないかしら? 少なくとも宝くじよりは高そうね・・



しかも、裁判員が担当するのは殺人事件・傷害致死・危険運転致死や身代金目的誘拐など

重罪ばかりで、内容によっては死刑判決を下すケースもあるかもしれない。


では、もしも自分が裁判員に選ばれてしまい、誰かに死刑を言い渡すはめになったとしたら・・・

という視点で 書かれた本がありますので、今日のタイトルにしました。


はい 今日の 読書は 『 ぼくに死刑と 言えるのか 』 by  北 尾 トロ


    ぼくに死刑と言えるのか

    著者:北尾トロ

    版元:株式会社 鉄人社

    単行本:255ページ



いやー、前フリが長かったですねー ww


著者は北尾トロ氏で、フリーライターとして様々なメディアで活躍中の方ですが、

最近では 裁 判 の 傍 聴 記 で名前を知られるようになったかな?


主な裁判傍聴記に『 裁判長!ここは懲役4年でどうすか 』 『 裁判長!おもいっきり

悩んでもいいすか 』など・・・


まあ、 お 笑 い 系 の裁判傍聴記なんですが、これまで関係者以外は秘密の?

ベールに閉ざされていた裁判を、日常レベルの 人間の問題として分かりやすく

伝えた功績?は大きいと思うな。



(「 霞っ子クラブ 」という女性だけの裁判傍聴サークルも結構有名で、同じ

ようなコンセプトの『 あなたが猟奇殺人犯を裁く日 』等も出版されています。)



さて、この作品は裁判員制度が実施される直前に刊行されました。北尾氏は

裁判の傍聴については慣れていても、い ざ 自 分 が 選 ば れ た ら ど う す る だ ろ う か ?

という思いからこの本を書かれたようです。なので、それまでの氏の著作とは

かなり異なったニュアンスを受けました。 ズバリ、 笑 え な い んですよ。



その点で、Amazon のレビューなどでもかなり酷評されていましたね。

また、物書きである北尾氏自身の立ち位置や、長年裁判を傍聴してきた氏にしては

弱い姿勢で書かれている点などが 甘い と評価されていましたが・・



しかし、私はそうは思えません。 逆に、この優柔不断ぶり、というか

迷いっぷりこそ共感できたのです。なぜならば、自分がそうだから・・・



北尾氏は、長年裁判を傍聴してきて、自分なりに 心の中で 量刑や判決を思い

描いてこられたそうです。慣れるに従いかなり冷静な判断も下せるように

なったとか。しかし、いざ自分が 裁判員の立場になったと仮定して・・・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

場合によっては、死刑か無期懲役かの決断を下さなければならない可能性

まであるのだ。そんな場でも、冷静な判断が下せるのか。

無理だと思う。被告人の人生を左右する一票を、証拠のみを材料に、他者の

意見に左右されず投じる自信などない。有力な物証もなく、被告人が

否認している事件ならなおさらだ。自分の意見も口に出せず、裁判長に

誘導されるように、長いものに巻かれろ精神で多数派につく、情けない

自分の姿さえ目に浮かぶ。

★━━━━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━★


なんとまあ、正直すぎる程正直な感想ですね。 これは、実は長年裁判を

傍聴してきた氏だからこそ、逆に迷うとも言えると思うのですが?


この本の中では、実際に北尾氏が傍聴した裁判例が「どう裁く?」という章で

取り上げられています。社会的に取り上げられる大きなニュースではなかったのですが


・79歳夫が81歳妻を絞殺した朝

・未成年の強盗強姦事件

・妻が夫を刺殺した事件


まあ、どれもこれも、やりきれないような事件ばかりなのですが、驚いた事に

皆システマティックに 流れ作業的に裁判が流れて行くんですよ。


北尾氏は、高齢者の懲役は実質的には死刑同様 だと考え、未成年の犯罪に

対して「なぜ事件が起きたのかを 誰も考えない」と嘆きます。


また、裁判員制度を理解するための模擬裁判にも出席。ここで、裁判員の

それぞれが皆びっくりする程に自分の意見にこだわり曲げようとしなかった

姿勢に驚きます。その場を なあなあで やり過ごし後で後悔したくないから

ではないかと考察するのですが・・・


また、作品中の白眉とも言えるのは、第二章の「罪と罰の意味を考えてみた」

この章では、元裁判官に聞く 無 期 と 死 刑 の 境 界 線 というのが興味深かったし

永 山 基 準 」という業界ルール(!)があることも、ね。



参考例として、あなたも御存知の「 光市母子殺害事件 」が引き合いに出されていましたが・・・

犯行時、未成年であった少年に対して一審二審とも無期懲役で最高裁で

差し戻し、その後は広島高裁で死刑、その後2012年に最高裁で死刑が確定

した事件・・・事件の残虐さや遺族感情を考慮すれば、また少年が書いた

手紙の内容等を読む限りでは、死刑もやむ無しというのが大方の国民感情

であったわけですが・・・


その他、映画監督の森達也氏との「死刑について、ちょっと真面目に話してみよう」

という対談や「杉並親子強殺事件」の裁判を傍聴しての考察など・・・・・



読了後は、ソフトカバーの単行本で255ページ程の本なのに、何かずっしりと重いものを

背負ったような気持ち
になってしまいました。北尾氏はこれからも裁判を

傍聴して自分なりに考えてみたいとの事すから、新刊が出れば私もチェックしてみるつもり。


自分的には・・・誰かに「死刑」を言い渡す日が来る事を全く考えては

いないけれども・・・でも・・・


正直に言えば、考えたくないし、敢えて眼を背けるようにしているからかもしれないなあ。

日常的な雑談や友人同士の会話で「えー、あんな残酷な事件起こしたら、

死刑は当然だよねー」なんて深く考えずに(無責任に)話してはいるけれども・・・



さて、ちなみに 裁判員制度を扱った小説作品 に興味がある方はコレを・・・↓

裁判員ではなく、新米の女性裁判官・久保珠実を主人公にした短編が3編。

今日は、どちらを紹介すれば良いか随分と迷ったのだけれど・・・

ただ、夏樹氏の作品にしては少々キレが無かったかな?  著 者 自 身 も 迷 い の 中

あるような気がするんですが・・・


    著者:夏樹静子

    版元:文藝春秋

    発売日:2013年1月



今日は重苦しい気分になってしまったかしら? ごめんなさい。

・・・次のアップは暗くないのを、ね。 そう、リラックスできる作品かも ww

それでは、今日はこれでおしまい。

またね・・・。


posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本のエッセイ&ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。