2013年04月08日

「花まつりの日」に読む 『 花の下にて春死なむ 』 by 北森 鴻


こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


4月8日は「 花まつりの日 」です。お釈迦様の誕生日、仏生会です。

丁度 桜の花の季節ですから 花まつりと呼ばれていますよね。


ねがはくば 花の下にて 春しなむ そのきさらぎの 望月の頃 と歌ったのは西行法師


西行は 1190年の 旧暦 2月16日に亡くなりましたが、新暦で言えば・・・3月29日頃?



意味は少々違って来るのですが タイトルに“ 花 ”とつく作品を



はい 今日の 読書は 『 花の下にて 春死なむ 』 著者: 北森 鴻

講談社   講談社文庫



著者の北森 鴻(1961〜2010)氏は 編集プロダクション勤務・フリーライターを経て

1995年 鮎川哲也賞を受賞して 作家デビューされた方です。

良質な作品を発表されていたミステリ作家でしたが・・・あなたは御存知でしたかしら? 


ミステリファンには知られていても、一般的な知名度はイマイチだったかなぁ。

作家活動15年の内には固定ファンを獲得できても ブレイクするきっかけが無かったのかな。

2010年に亡くなられたのですが、48歳でまだまだこれから!という時でしたから

非常に 残念に思ったものです。



今日のテーマに選んだのは氏の“ 香 菜 里 屋 ”シ リ ー ズ 最初の作品群です。


ミステリの 連作短編集ですが、いわゆる本格物ではなく ミステリと

普通の小説の 中間くらいに位置する作品群になるでしょうか。

単なる謎解き・犯人探しではなく、そこには 人 間 の ド ラ マ が描かれているからね。



さて、この作品集には 定点となる舞台があります。



それが ビア・バーの “ 香 菜 里 屋 ” (かなりや)


焼き杉作りの分厚いドアを開けると・・・

10人程が 座れる位の 長さのL字カウンターと、二人掛けテーブルが2脚。

それだけの広さのお店です。サーバーで淹れる アルコール度数の違うビールが 4種類・・・


そして、ミステリお約束の 名探偵は お店のマスター工藤哲也。

年齢不詳、経歴不詳で いつも赤いエプロンを愛用。

ヨークシャテリアによく似た面差しって・・・どんな顔なんだろ ww



常連客から持ち込まれた “ 謎 ” を 常連の皆で 話し合い解決してゆく、という

パターンなのですが、マスターが 皆で拡げた 扇の要のような役割を果たしています。


北森氏の作品の中では、ほっこりと温かみのあるシリーズですから

どぎつい殺人事件等は登場しません。むしろ日常的な謎ときがメインの作品集です。



『 花の下にて春死なむ 』

表題作です。

アパートで一人暮らしをしている 60代の男性が 病気で亡くなりました。

遺体が発見されたのは2日後、肺炎で死亡と確認され 事件性はありません。

彼の名前は 片岡正、所属していた自由律句結社では“ 草 魚 ”と名乗っていました。

( 注:自由律句とは五・七・五や季語にとらわれず自由に創る俳句の事です )



死後、家族に連絡を取ろうとしても・・・・

身元や血縁を示すものが 何一つ部屋からは見つかりません。



居住地にも 住民登録はなし。勤務先に提出した 履歴書の本籍地にも該当者はなし・・・・・

これが謎のひとつ。 もうひとつの謎は・・・



結局は身元不明のまま、所属結社のメンバーの手でお葬式を済ませ

彼の残した 俳句手帳は 一番親しくしていた飯島七緒の手に託されます。

何か身元の分かる手がかりはないかと手帳をチェックした七緒は

意外な記述があるのに気がつきます。



三月二十九日(中略)窓辺の 桜 に小さき花つく。せめてもの慰めなり。

(一部抜粋)


そうして、遺体発見時には 窓辺にはグラスにさした 桜の小枝が枯れていました。

今年の桜は 開花が遅れて 開花宣言が 4月の12日だったのに、なぜ桜が?

これが2つめの謎になります。



さて、七緒は 生前の彼の 言葉の端々や、手帳に残された句から

草魚の故郷を想う気持ちを知り、何とか彼の故郷を探し出そうとするのですが・・・


マスターの協力も得て、山口県のある街が 候補に挙がりますが

なぜ 草魚は 故郷を捨てて 身元を偽らなければならなかったのか・・・?

何か犯罪を犯して身を隠していたのでしょうか?  それとも・・・



ここで、山口県で起こったある事件がキィになりますが、

全国的に知られた事件ではありません。これを採り上げたのは

北森氏が 山口県出身だからかもしれませんね。



さて、実をいうと、『 花の下にて春死なむ 』は、泡坂妻夫氏 に似たような

作品があるのですが、類似は余り気にはならなかったなぁ。




それよりも、このシリーズの魅力のひとつになっているのは

“ 香 菜 里 屋 ”で マスターの工藤が作ってくれる料理 なんですよ ww



・今年最後の冬瓜を、挽肉と煮て葛でとろみをひいてみました。

 コンソメ味ですから、きっとビールに合いますよ。

・サニーレタスとムール貝を酢みそで和えたもの

・生きたままの帆たてを貝殻ごと使ってみました。味は酒と醬油のみ、

 それにバターを仕上げに少しだけ。

・鯖の棒鮨に(中略)酢からネタを剥がして、酢だけを小皿に盛っ

 ている。それを蒸し器に入れて(中略)蒸しあがった小皿に 細切りに

 したネタを戻し、紅生姜と柚子の細切り、あらかじめ焼いてあった

 錦糸卵を盛り付ける


(一部抜粋)


ね? 美味しそうでしょ? 家庭料理とは一味違う感じで・・・

食べ物の描写が上手いなあ、と思っていたら、何と北森氏、調理師免許

を持っておられたそうです。



その他、北森氏お得意のシリーズ物としては


異端の民俗学者を探偵役にした“ 蓮 丈 那 智 フィールドファイル ”

旗師・冬狐堂を主人公にした骨董ものの“ 狐 ”シリーズなどが知られていますが、

こちらについても またお話できる機会もあると思います。


それぞれの作品の主人公がクロスオーバーした短編もあって

楽しかったなあ・・・



それでは、今日はこの辺で・・・・・どうも最近はアップが遅れがちだね・・・

またね。




posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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