2013年04月22日

「 夫 婦 の 日 」に 読む 『 崩 れ る 』 by  貫井 徳郎


こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


毎月の22日は「 夫 婦 の 日 」になります。


結婚生活をテーマにした作品で、丁度 読んだばかりのものがありました。

サブタイトルが 「 結婚にまつわる八つの風景 」 ・・・・・



はい、今日の読書は 『 崩 れ る 』 著 者: 貫井 徳郎  集英社&集英社文庫




  サイズ:文庫

  装丁は京極夏彦氏

  桐野夏生氏が 解説文を担当





著者の貫井徳郎氏( 1968〜 )も最近人気のあるミステリ作家ですよね。

何かのきっかけがあれば、もっともっと大きくブレイクすると思うな。

ちなみに、奥様は同じミステリ作家の 加納朋子氏です。



1992年『 慟 哭 』でデビュー。鮎川哲也賞の 最終候補に残っただけあって

本格派の王道を行くミステリでした。



その後は『 愚 考 録 』『 乱 反 射 』で 直木賞の候補にも挙げられていますが

直木賞のテイストには・・・・合わないような気がするのですが?


まあ、はっきり言えば、選考委員の お気に召す作風ではないからだと

( 個人的には )考えています。 ことさら、この賞を狙う必要性も無さそうですね。



あ、例によって異論は認めますので ww



その他、『 空 白 の 叫 び 』 や「症候群」シリーズ等、やや暗めの作風が多いかもしれません。


今日、お話する『 崩 れ る 』はこの作家には珍しい短編集です。

「 結婚にまつわる八つの風景 」という副題ですが、結婚生活そのものを

描いた作品ばかりではありません。



タイトルのトーンが統一されているのですが、崩れる・怯える・憑かれる・

追われる・壊れる・誘われる・腐れる・見られる・・・・・う〜む・・・


このラインナップを見ただけで、幸福な結婚生活には ほど遠い物語 ww

だと見当はつきますよね。  以下、各作品について少々・・・



『 崩 れ る 』

表題作です。この短編集の中で一番古い(1994年)作品ですが、

一番よく出来ているような? 


ヒロインの芳恵は、化粧品の 箱詰め作業のパート勤めをずっと続けています。

夫は 画家くずれのイラストレーターですが、仕事は殆どありません。

積極的に売り込むでもなく、ぐうたらと過ごす毎日・・・


で、不思議な事に こういうタイプの男性ほど、家事は全く手伝ってくれないんだよね。

すべてが無責任でいい加減、どう見ても、結婚生活に向くタイプどころか、

社会生活にも上手く適応できないような男性にしか思えません。


離婚を考えた事も何度もありましたが、一人息子の義弘の事を考えると・・・

小さい頃は、父親のいない子どもにしたくないと思い、大学に入学して

からは 就職の事を考え、卒業して 就職してからは結婚の事を考えて・・・


結局は ズルズルと今の暮らしを続けるだけ、丁度ぐるぐる回るベルトコンベアの

前の仕事を 無感動に処理してゆくように・・・


しかし、息子がせっかく就職した銀行を勝手に辞めてしまい、アニメーターに

なりたいと言い出してから・・・・



ストーリィそのものは 決して目新しいものではありません。

結末も、さもありなんという 予定調和の終わり方なんですが、家族の

身勝手に ずっと振り回されてきたヒロインが、事件を起こした時に

思わず口にする言葉が怖かったな・・・



あ あ 、さ っ ぱ り し た



結婚以来、初めて口にした台詞(せりふ)が「 ああ、さっぱりした 」

うーむ・・・さっぱりする為には、どうしても息子や夫を***必要が

有ったという事なのか・・・。


リアルな生活感あふれる作品だけに、私はしみじみ怖いと思いましたよ。

この作品を読んで、私はW・S・モームの短編小説みたいだと感じました。

ヒロインが全く 罪悪感を感じていない点などが 特に、ね。



『 怯 え る 』

タイトルは「怯える」・・・昔 関係した女性の影に付きまとわれて、おびえる

男性が主人公ですが、ある意味ではこの作品はハッピーエンドですね。

この短編集の中では珍しく、前向きの姿勢で終わっていますから ww



『 憑 か れ る 』

ヒロインは独身の新進翻訳家です。ある日突然 高校時代の級友から 電話があり、

新婚旅行前の食事会に参加してくれと頼まれるのですが・・・

こちらは純然たるホラー作品でした。



『 追 わ れ る 』

ヒロインの千秋は 結婚相談所に勤務していますが、本人は独身です。

女性との交際経験の無い 男性会員と 模擬デートするのも、業務の一環

なのですが、ある勘違いした男性会員から、真剣に好かれてしまいます。

それがまた、全く魅力のない男性で・・・


最後に、ちょっとしたオチの有るショートストーリィ。

「 世 に も 奇 妙 な 物 語 」風 かな?



『 壊 れ る 』

妻に内緒で 不倫中の男性が主人公です。ある日、妻が交通事故を起こしてしまい、

加害者は 何と自分の上司の妻・・・示談金なども うやむやに されそうで

困った男性は、何とか上司の弱点を握ろうとして・・・


こちらも、やや軽めの「 世にも奇妙な物語 」風でした。

教訓:自分が簡単に思いつくアイデアは他の人も思いつく、という事 ww



『 誘 わ れ る 』

二人の若い 主婦の物語。 杏子は 新しく購入したマンションの近辺住民とは

馴染めず、公園デビューも上手くいきません。


たまたま、新聞の広告( 友人募集 )で同じような悩みを持つ若い母親、

みどりと知り合い親しくなってゆくのですが・・・


サスペンス風の物語。 二人の女性・杏子とみどりの語りが交互に続いていきます

実は、これは ミ ス テ リ の 王 道 とも言えるお話なんですよ。


つまり「 どちらが 嘘をついているか? 」というのがキモになります。

この作品の場合は「 どちらが 狂っているか? 」なんですが・・・


それにしても、狂った妻と一緒に暮らして全然気がつかない夫というのも

・・・・むしろ、そちらの方がコワイかも?



『 腐 れ る 』

このタイトルは・・・抽象的な意味での“ 腐 敗 ” かと思ったら、そうではなく

文字通り、何かが 腐っていくお話なのですね。 お隣のベランダで ww


著者自身の 後書きで、この作品集の中で1つ選ぶとしたらコレ!と記して

いますが、“ 匂 い ”をテーマにした サスペンスまたはミステリって

有りそうで無いかなあ・・・


ところで、よく思うのですが、ミステリ作家の皆さん方は 人間の腐敗臭を

実際に 嗅いだ事がある人はいるのでしょうか?


殆どいないのではないかしら? イマイチ皆さんリアルじゃないものですから。

私ですか?   はい、ありますよ 。 ( ← いや、我ながらコワイね ww )



『 見 ら れ る 』

結婚を前にした一人暮らしの女性・未奈子が主人公です。

掃除や 整理整頓が余り得意ではありません。婚約者は温和で気の良い男性で

余りうるさくは言わないのですが・・・。


ある時から、未奈子の所に 見知らぬ男性から奇妙なイタズラ電話がかかって

来るようになりました。自分の行動をまるで見ていたかのように告げるのです。

怖くなって、固定電話のコードを抜いても、携帯にまでかかってくるのは

どうして・・・??


実は、このパターンのミステリやサスペンスは結構多いですよね。

この作品も、なぜ自分の行動を知っているのか?という理由は読んでいて

すぐ気がついたのですが(ちゃんと伏線もあります)


最後に、ちょっとした「 ひ ね り 」があり、実に効果的で上手い作品だと

思いました。



以上、8編の短編小説・・・もう15年以上前の作品ですが 古さは全く感じません。

人の心や感情をテーマにしているからでしょうね。

だから、普遍的な面白さは変わらないのでしょう。


しかし・・・人の心をテーマにすると 何故 怖い作品になるのでしょうか



さあ、今日はこれでお終いなんですが、このところ、暗い話が続くので

次回のアップは明るい話をしましょうか?


そう、「 愛と平和 」をテーマにしたりして ww

それでは、またね・・・・・


posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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