2013年05月06日

「 国際ノーダイエットデー」に 読む 『 脂 肪 と い う 名 の 服 を 着 て 』 by 安野 モヨ子


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


5月6日は「 国際ノーダイエットデー 」。 ダイエットではなく「 ノ ー ダ イ エ ッ ト 」。

イギリスのフェミニストのメリー・エヴァンス・ヤングが 提唱して制定されました。


世間のダイエットへのプレッシャーに対抗し、ダイエットによる 健康影響を訴える日・・・


女性なら 誰しもほっそりと 華奢な身体になりたいと思うもの・・・なのか?

適正体重を通り越して 痩せすぎて危険領域に入り込んでしまうと、もう自分でも

制御できなくなってしまうらしいけれど・・・下の写真を見てよ・・・↓


拒食症.jpg

画像引用元:ttp://yasai0142.livedoor.biz/archives/51259480.html

これは有名なトリック写真で ネットによく出回っているから、あなたも御覧になった

ことがあるかもしれませんね。



鏡に映っているのは、ぽっちゃりと太った女性の姿。

・・・・・そして鏡の前に立っているのは、こ の 女 性 の 真 実 の 姿




人体骨格の標本に 皮フを1枚貼り付けたほど 痩せているのに、彼女の目に映る自分の

姿は 相変わらず太ったまま・・・ああ、もっともっと痩せなきゃ!



周囲の人が いくら「 あなたは 太ってはいないよ 」と忠告したところで 彼女は

聞く耳を 持たない。

彼女の目には、間違いなく自分がデブに見えるのだから。そして彼女の脳は

「お前はデブだ、痩せろ!痩せろ!」と命令するのだから・・・。



・・・・・これは 現 代 の 怪 談 です。 過剰なダイエットの引き起こす悲劇。



けれども、もっと屈折した形で やりきれない形で表現された作品がありました。

自分の意思で痩せたいのか 他者の意思で痩せるのか・・・・これも怖い作品です。


はい  今日の 読書は 『 脂肪という名の服を着て 』  by 安野 モヨ子



『脂肪という名の服を着て』 完全版

著者:安野 モヨ子

出版社:文藝春秋社

サイズ:文庫266ページ


著者の 安野 モヨ子氏は 結構有名で 実力のある漫画家さんだそうですが、実は私は

あまりよく知りません。姪が持っている『 美 人 画 報 』というエッセイ漫画を読んだり

朝日新聞の 日曜版に連載している人、という程度の認識です。



この作品も姪から借りて読んだものですが、救いようの無い読後感でしたね。

漫画ですから、まず絵が多くを物語ります。一種の印象操作というか、人物が皆

誇張されてはいるのですが・・・。



主人公の「 花沢のこ 」は20代前半くらいのOL。朝食のパスタを茹でるとき、

「食べて足りなかったらイヤだな」といって余分に茹でては・・・・・

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

食べてれば大丈夫  食べられれば  何とかなる

たとえイヤなことが 沢山あっても

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━★

物語冒頭からこういうセリフがあるので、ストレスを食欲で発散させているタイプだな

と見当がつきますね・・・ぽっちゃりタイプで、上の画像の鏡に映っている女性

と同じくらい、かな? お洋服のサイズでは13〜15号位かしら?



この程度では 別に太りすぎじゃないと思うのは、私がオバサンだから?

もしも痩せたかったら、甘いものを控えて軽い運動をすれば何とかなりそう・・

と思う程度の太り方だと思うのですが・・・



そして 全巻を通して この「 大丈夫 食べてれば 大丈夫  頭の中で声がす

る  食え!  食って食いまくれ!
」 というセリフがあるのが怖い・・・



彼女は 控え目過ぎるほど控えめで 目立たないキャラであり、仕事も(多分)出来るほう

ではなさそう・・・同僚達からイヤミっぽい事を言われても何も言い返しません。

無表情にムスッとしているだけ。



そして・・・・・ 笑 わ な い 。 ニコリともしない。



こういうタイプの人は、苛められやすい 傾向があるかなあ・・・何も言い返さないと

周囲からは さらに居丈高に嫌悪感をぶつけられるような・・・こいつには

何を言っても大丈夫!と思われちゃうのかなあ。

それとも・・・相手のサディスティックな気持ちを引き出してしまうのでしょうか?



職場の同じ課の同僚OL・マユミは ほっそりとスタイルの良い美人ではありますが

「のこ」を苛める筆頭者でもあります。性格も含めてデブの「のこ」が大嫌い。

ついには、他の同僚のミスをも「のこ」のせいにして社内での立場をさらに悪くしてしまいます。



そんな「のこ」にも恋人はいます。8年越しに交際している商社マンの斉藤くん。

彼は「のこ」の事を太っていても「そのままでいいよ」と言ってくれます。



この斉藤君も、実は 家庭と心に 問題を抱えているタイプではありますが・・・



夫を 他の女性に奪われて自殺未遂を繰り返し、まるで夫への復讐のように息子を

ガミガミと攻撃する母親( 痩せています )への嫌悪感。


その反動のように 太めの女性を求めているような・・・


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女なんて何もかも ゆるくて間抜けなほうが いいに決まってるんだ

やすらぎなんだから  あいつらに求めるのは やすらぎだけなんだから

(中略)

そうして俺はいつだって 完璧にやさしい笑顔だ

「 外見じゃなくて 心で 彼女を選んだ男 」

やすらぐよな・・・・・

そんな自分に  本当にやすらぐ

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━━★


確かに、ピリピリした女性よりも 安らぎを与えてくれる女性を好む 男性は多いのだろうけど

この斉藤君は「のこ」に安らぎを見出しているのではなく、本当は 最後の1行のように

そ ん な 自 分 に 本 当 に や す ら ぐ 」って・・「のこ」は自己確認の為のツールかい?

しかも、8年も交際しているのに 自分の同僚に「のこ」を紹介した事は一度も無い。



そして事件が起ります。斉藤君の浮気。相手は同僚のマユミですが、マユミも

別に 斉藤君が好きではなく、「のこ」への嫌がらせの為の手段でしかありません。



「のこ」は気がついても マユミや斉藤君にも何も言わない。言えない。

食べてストレスを解消するしかありません。そして、あの声が・・・・・



「 頭 の 中 で 声 が す る  食 え ! 」


これは、もしかして過食症? 美味しいものが好きで 食べ過ぎてしまうというの

ではなく、「のこ」の場合は 手づかみにして、味わう事もなくガツガツと食べ物を

口に押し込んで行くだけのような・・・

お腹はいっぱいになっても 満 足 感 も 幸 福 感 も な い ・・・



そんな「のこ」は痩せようと 一大決心をしてエステに通い始めます。



しかし、これが悲劇の始まりでした。



思うように体重が落ちないのに焦った「のこ」は、食べた直後に 嘔吐を繰り返すようになります

そうして 20キロほども痩せて 好きな服を着て 美容院で髪型を変えて・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

もう何も食べなくてもいい

このままで いられるなら 何も食べたくない

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━★

すっかり面差しの変わった(やつれた)「のこ」は久しぶりに斉藤君と道で偶然

出くわしたのですが、彼は別人のように変わった「のこ」 に恐怖感を覚えて 逃げ

出してしまいます。




そうして会社では さらに「のこ」を陥れようとするマユミに「なぜそこまでするのか?」

と問い詰めたとき返ってきた答えは・・・

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あたしはね  醜いものが大ッキライなのよ

やせたからって 何も変わらないのよ  のこ!!

あんたは醜いの!!  心のそこからね!!!

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


「のこ」はずっと や せ ら れ れ ば 全 て が 変 わ る し 何 も か も 上 手 く い く は ず

楽 し い 日 々 が 待 っ て い る は ず・・・と思ってきたのに 結局は 何も変わりません。


30キロ痩せたとき、かっての恋人の 斉藤君が結婚するという噂を耳にします。

斉藤君の結婚相手は かっての自分のように 地味で 太目の女性・・・・・



路上で倒れた「のこ」は入院するはめになります。そうして昔の自分に戻ろうと

します。 今 よ り は き っ と い い は ず と信じて・・・



そうして半年後・・・


職場を変えた「のこ」は 偶然に 以前通っていたエステのオーナーに出会いました。

その時には、もう「のこ」の体型は すっかり昔と同じように・・・



痩せていたときは、あまり良い事も無かった、自分が痩せたことでバランスを崩す人

もいたし見ているのが辛くなって、と言う「のこ」に対して

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あなたの身体なのよ    あきれるわね!!

(中略)

もう誰のせいでもない もとから誰のせいでもない

太ったのは  そうやって ひとのせいにしている あなた自身のせいなのよ

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


そうして、立ち去って行き、連れの友人に対してこう言います。

ま た 繰 り 返 す だ ろ う 、身 体 で は な い  心 が デ ブ な ん だ も の



一人暮らしのアパートの部屋で 相変わらず 大量の食物をむさぼるように

食べ続けている「のこ」 ・・・・・




「やせたらキレイになれる!」というダイエットの結果を これでもか!これでもか!と

絶望的なまでに描いた作品でした。



古典的な少女漫画の黄金パターンならば、少々太めであっても素敵な王子様が

現れて、今のままのキミが一番!と言ってくれてハッピーエンドなのですが・・・



そうして 救いようのない後味の悪さが残る作品でした。単純に 過剰なダイエットを戒めた

作品でもない。無理をしないで生きていこうと吹っ切れた明るさも無い。



作者が 徹底的に「のこ」を思いっきり突き放して描いているのを強烈に感じました

外見だけではなく、キャラクタにも 全く魅力の無い女性として描かれています



作者自身が「のこ」を愛していないから? 漫画ですから 絵がものを言うのですが

ガツガツと貪るように汚らしく何かを食べ続けている「のこ」を見ると思い出すのは 

↓ この絵です。「 餓 鬼 草 紙 」

餓鬼草紙文化遺産オンライン.jpg
 

画像引用元:文化遺産オンライン
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=13814&imageNum=5#



だから、主人公に 魅力が感じられない・・・むしろ嫌悪感さえ感じてしまいそうで・・・

そんな風に思うのは 私が意地悪だからでしょうか?



この作品について、「 見 た 目 を 過 剰 に 重 視 す る 社 会 は 怖 い 」と論じた書評を

読んだことがあります。昨今の 美容整形の流行もその現れかもしれませんが・・・



心がデブだから・・・身体がデブなのではない 「 心 の デ ブ 」 だから・・・・・

「のこ」が そのことに気がつく日は来るのでしょうか。

あ な た の 身 体 な の よ 」という 言葉の重みを理解する日が・・・


そうすれば 彼女も 少しは 自分で自分のことを愛せるかもしれないのにね。



さてと、今日はこれでおしまいです。またね。


posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の漫画・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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