2013年05月10日

「山口洋子氏の誕生日」に読む 『 ザ・ラストワルツ 「姫」という酒場 』 by  山口洋子

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 山口洋子氏は、2014年9月6日に永眠されました。

 氏の御冥福を心よりお祈り申上げます。

 波乱万丈の昭和の戦後を生き抜き、作詞・小説と多彩な才に恵まれた方でした。

 山口洋子さま、今はただ、天国で安らかにお眠り下さい。

                         あなたのファンより

                         2014年9月秋雨を聴きながら

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こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


さて、5月10日は 直木賞作家山口洋子氏のお誕生日です。

最近は 療養中とのことで、殆ど作品も発表されてはいませんが、

氏に敬意を表してこの作品を・・・・・

山口洋子ラストワルツ.jpg
    ザ・ラストワルツ 「姫」という酒場

    著者:山口洋子

    出版社: 文藝春秋

    サイズ: 文庫 196ページ



著者は 山口洋子氏です。あなたは山口氏といえば真っ先に何を連想するでしょう?

直 木 賞 作 家 として?  「よこはま・たそがれ」や「千曲川」「ブランデーグラス」等の

作 詞 家 として?  それとも銀座の ク ラ ブ 「 姫 」の マ マ として?・・・・・



この方の経歴は 非常に興味深い。だって、元・女優さんですもの。

東映ニューフェイスの4期生で 同期には 山城新伍や 佐久間佳子がいたのですって。



この頃の事は 作品やエッセイにも書かれていますが、 当時の東映では 女優さんは

まずキレイでなければいけないという不文律があったみたいですね。



個性派女優というカテゴリは無かったみたい。撮影所にジーンズで通い、顰蹙をかった

そうですから。その後、大部屋女優のお給料では到底食べてゆけず、アルバイトで

キャバレーのホステス(当時はダンサー)として勤めたのが水商売のきっかけとか。




まもなく東映を辞めて、銀座に小さなバー「 姫 」をオープンしたのが1956年(昭和31年)

19 歳 の 銀 座 で 一 番 若 い マ ダ ム であったとか・・・



エッセイでも 語られていますが、運転資金もなく 当日の売り上げだけが頼りの

自転車操業だったようですね。けれども、日本が 右肩上がりの高度成長期の入り口に

あった頃・・・ほんの数坪のお店から 銀座でトップクラスの高級店にまで成長しました。


時代も良かったのかもしれませんが、経営者としての山口氏の手腕は

もっと評価されてもよいと思うのですが・・・



『 ザ・ラストワルツ─「姫」という酒場 』は そんな山口氏の銀座暮らしの思い出・・・

・・・・1993年に 経営権を譲渡するまでの 3 7 年 間 を 哀 切 に 綴 っ た 作 品 です。



ホステスさんを選ぶ基準を、とにかく美人を、ママである自分以上の美人を!

と考えて採用した結果、銀座で一番美人のいるクラブとも言われたそうです。


↓ 表紙を拡大してみると ↓

姫2.jpg


一番右端が 山口氏です。 この頃で30代の半ば位、作 詞 活 動 を始められた頃かな?


左側にいるミニスカートの若い女性は 飯野矢住代さん、1968年( 昭和43年 )の

ミス・ユニバース日本代表だった方です。ホステスさんとしては長続きせずに

退店後は 21歳で事故死されたそうですが・・・



この『 ザ・ラストワルツ〜 』は 飯野嬢だけではなく、若くして自死してしまったり、

不本意な死に方をした女性たちへの 鎮 魂 の 書 でもあります。



また、「 客 」として「 姫 」を訪れた 魅力的な作家・俳優たちの素顔も・・・・・

また、写真も沢山挿入されていますので、当時の「 華 」ある銀座の 社交場としての

姿をしのぶ事もできます。



さて、60年代後半の頃から 銀座も変わり始めたと言われているそうです。

かっての茶の間的な良さから よりゴージャスな場へと変化していきます。

大資本の進出、そしてホステスの日給が異常に上がっていき、銀座から「粋」が

消えていった・・・とか。

そうして、個人オーナーによる 酒場経営は益々苦しくなっていったそうです・・・



作詞から エッセイの執筆、そして小説家へと シフトして行くのは

山口氏にとっては 自然な流れであったように思われます。




初めて 山口氏の小説作品を読んだのは『 半 ダ ー ス も の 情 事 』( 光文社文庫 )という短編集。

かれこれ、もう・・・30年近く前のことではなかったかしら。 読んだのは全くの偶然です。


私は 外出時にも 本を必ず持参するのですが、たまたま忘れた日があり、地下鉄構内の

フリー文庫( 殆どが寄附本で、誰でも自由に読めるもの )で目にしたこの本を

何気なく借りたのがきっかけでした。



あー、山口洋子? 演歌の作詞する人? バーのママさんだよねー、ふーん。

小説も書いてるんだ・・・ちょっと読んでみようかな?  そんな興味本位でね。



・・・驚きました。 面白かったから。 びっくりする程 う ま い 小 説 でした。

あまりの面白さに 自分の降りる駅も忘れて読みふけった程です。



いわゆる「 お水の花道 」系の作品群( 主人公がクラブのママ等 )なんですが、

どの作品も 女 の 情 念 が 迫 っ て く る よ う な リ ア ル さ に満ちていました。

他の男性作家が 水商売ものをテーマにして描いたのとは全然違いましたね。



現場の人間でなければ分からない・書けないだろうなと思わせる迫力がありました。

5月2日 に 半村良氏の 水商売もの作品を取り上げましたが、あちらは一種のファ

ンタジー、もしくは 理 想 と し て の 酒 場 の 物 語 でしたから・・・


山口氏は 経営者としての視点で見ておられましたから、シビアにお金の事なども

テーマになってきます
。 当然、どろどろした面や 男女の愛欲もお金がらみで・・・



その後は 御存知のように1985年( 昭和60年 )『 演 歌 の 虫 』&『 老 梅 』の2作品

に対して、直木賞を受賞!


受賞以前にも2回候補に上っていたのですが・・・・・

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某大御所が、「あーあ、バーのママが直木賞候補だと、俺はもう選考委員なんか

やってられない」といって、それを聞かれた吉行(淳之介)先生が、「なに、いい

作品を書けば、酒場のマダムだろうと人殺しだろうと、いいんじゃないのか」と

色をなしていってくださったとか。

★━━━━━━━━━【エッセイ『 階 段 』より一部抜粋 】━━━━━━━━━━★


そう・・・この頃、週刊誌などで からかい半分の記事を読んだ記憶もあります。

既に一流の作詞家でもあるのに、まず紹介されるのは『 姫 』のママとしてでしたから

確かに、既に現場からは離れていても、オーナーは山口氏だったのですが・・・



もう少し早く手放してしまえば、負担も少なくて良かったのかもしれませんが

それだけ、山口氏にとって「 姫 」は愛着のある存在だったのかもしれませんね。

山口氏が育て上げた酒場「 姫 」でしたが、逆に「 姫 」によって 山口氏も育てられ

たのではないかと
・・・・・そんな事も考えました。


山口氏は体調を崩して(高血圧?)ずっと療養中だそうですが、何とか健康を

取り戻して欲しいと、ファンとしては願うばかりです。


さてと・・・今日は これでお終いにしましょうか。  またね・・・。



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posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(2) | 日本のエッセイ&ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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