2013年05月13日

「 別れ話の日 」に 読む 『 五月の霜 』  by アントニア・ホワイト


こんにちは、また来て下さってありがとう。

5月13日は「 別 れ 話 の 日 」・・・えっ、そんな日があるの?と驚きましたか?


バレンタイン・デーから88日目、俗に言う「 八 十 八 夜 の 別 れ 霜 」で、別れ話を切り出すには

最適の日 ww だそうです。英語では「メイ・ストームデー」( 五月の嵐の日 )ですね。



それでは、今日のお話の主人公は 誰から別れ話をもちかけられたかというと・・・

・・・ 神 さ ま からです。  えっ?


はい、今日の読書は 『 五月の霜 』 by アントニア・ホワイト


    五月の霜

    著者:アントニア・ホワイト

    出版社:みすず書房

    サイズ: 単行本 256ページ


著者はアントニア・ホワイト(1889〜1980) 日本では殆ど知られてはいませんが

英国では 非常に高く評価されて人気のある作家です。位置付けとしては、

シャーロット・ブロンテの後継者・・・と目されている といえば分かりやすいでしょうか。



父親はパブリック・スクール、セント・ポール校の古典教師で、英国国教会から

カトリックへの改宗者でした




この作品は、著者の若き日を描いた自伝的作品であり、「 少 女 の ス ク ー ル ・ ス ト ー リ ー の

中 で 、 古 典 と し て 残 る 唯 一 の 作 品 」
( by エリザベス・ボーエン)と賞賛されています。

発表年度は 1933年、物語の舞台は 約100年ほど前の 英国の 修 道 院 付 属 の 寄 宿 女 学 校 ・・・

美しくて そして残酷な物語でした。




物語は ヒロインのナンダ・グレイが9歳のとき、父親に連れられてカトリックの

五傷修道院(聖心女子修道会がモデル?)付属寄宿女学校に入学するところから

スタートします。



改宗した父と同じく、カトリックに改宗したナンダは「敬虔なカトリック信者」に

なるために 教理問答の学習に努め、学校に溶け込むように努力はするものの・・・

ナンダは すぐに 自分がこの寄宿学校では異分子であることを思い知らされます。



まず、ナンダの家が何代も続くカトリックの家系ではないこと・・・

改宗して間もない自分は、この学校ではまだ 「 異 教 徒 」 という目で見られ、

まるで 粗探しをされるように感じることも多いのですが・・・



一生懸命努力して良い成績を取るように頑張るナンダに対して、教師である

マザー・フランシスの言った言葉は印象深いものでした。


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あなたは自分が立派な模範生だと思っているのではありませんか?(中略)

善にもいろいろあるのです。 (中略)どの方も聖人になる以前は罪人でした。

(中略)神様は こせこせ、びくびくとした善には見向きもなさいません

神様がお求めになるのは、本当の根強い欠点を克服したところに生まれる本物の

善なのです。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


うーむ・・・宗教的な事は抜きにして、意味は分からないでもないなあ。

頭で(理屈で)考えて何かを為すこと・良い子になろうと考えて努力すること、

もう、それ自体がダメってことかしら? もっと自然体にならなければいけないの

でしょうか? あれこれ考えているようでは、その時点でアウト?



シスターの何気ない一言ではありますが、宗教の本質を突いているのかもしれません



友人のレオニーは、規則破りの常習犯でありながらも、修道女たちからは信用され

叱られる事も殆どありません。不思議がるナンダにレオニーはこう言います。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あなたはきちんと髪を洗って髪をとかして洗礼を受けて堅信を施されたもと異教徒。

でも異教徒であることに変わりない

それに比べて私は大丈夫。(中略)血の問題なのよ。(中略)

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


日本人で仏教徒の私から見れば、キリスト教の宗派の違いなど よく分からないし

同じキリスト教徒なのに「異教徒」と呼ぶのが奇妙にも思われ、そこまで排他的に

なるのが不思議な気もします。まあ、歴史的にもキリスト教の宗教がらみの戦争

は非常に多かったのですけれど。「神」の名において どれほどの犠牲者が出たか

ということも・・・




また、ナンダの級友達は英国だけではなく、スペイン・フランス・ドイツ国籍の

少女も多く、上流社会に属する家庭の子女が殆どでした。


当然のように、自宅には執事を始めとする何人もの使用人を抱え、自分用の馬も

所有しているような裕福な家庭ばかり。


それに比べて、ナンダは中産階級の出身であり、周囲の皆に話を合わせようとしても

上手くいかないことも多かったりして ww



それでもナンダは 新しい環境に適応しようと健気に頑張ります。

カトリックの宗教行事の美しさに魅せられ、信仰を深めていくのですが、同時に

教師たちへの反発や 学校の体制への疑問も生まれてきます。



にもかかわらず・・・・・



父親から、月謝の高いこの学校から 他の教育レベルの高い学校への転校を打診されたとき

ナンダは恐怖に襲われます。



もうこの学校で過ごす以外のことは考えられない。

張り詰めた強烈な神の意志の支配する リッピントンの中でしか生きられないとまで

思います。まるで自分自身がカトリック教会の一部になったように。

自分自身の本性の 全てに染み込んでしまったように



しかし、15歳になったとき その希望は打ち砕かれます。

退 学 」という、ナンダにとっては不本意な処置によって・・・



ナンダがこっそりと書いていた幼い「 小説 」が見つかってしまったから。

それはカトリックの教えを逸脱した 許しがたい不道徳であったから・・・



退学になる前の休暇中に、ナンダは修道女マザー・パーシヴァルから こんな

アドバイスの手紙を貰います。


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わたしはあなたの中に別の物が育つのも見ました。自己の意志と自己への愛とい

う固い小さな芯です。以前にも言いましたが、あらゆる意志は神の意志と一体に

なるために、完全に砕かれ作りかえられなければなりません。ほかの道はないの

です。それが、ここリッピントンでわたしたちがおこなおうとしている教育なのです。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


これが教育なの? これがキリスト教の教えなの?

異教徒である私には理解しがたいものがあるのですが・・・「 寛容 」や「 許し 」は

与えられないのでしょうか?



『 五月の霜 』というタイトル通りに、若草の萌え出る美しい少女の季節に

余りにも残酷な 冷たい試練を受けて、この物語は終わります。



ヒロインのナンダにとっては、衝撃的で残酷な終わり方ではありましたが、

それでも私は、この作品の持つ美しさ( カトリックの典礼の厳粛さや様式美 )に

魅せられて 繰り返し読まずにはいられない作品のひとつでもあります。



馴染みの薄い作品だろうなあとは思いましたが、やはりあなたにお話したくて

今日のテーマに取り上げてみたの。



この作品は、著者の自伝シリーズ第一作であり この後 “The Lost Traveller”

“Sugar House” 最後に “Beyond the Glass ”と続きます。


退学になってからのナンダの、その後が綴られているそうですが、残念ながら

翻訳はされていません。 うーん、頑張って原書で読んでみようかとも思うのですが・・・

読めるかなあ?


さてさて、それでは今日はこの辺で・・・またね。





posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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