2013年05月15日

 『 手のひらの砂漠 』 ( by 唯川 恵 ) を   「 国際家族デー 」に 読む


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


5月15日は「国際家族デー」です。 1993年(平成5年)国連総会で制定されました。

家族の日? それならば 明るくてファミリアルな物語を・・・と思ったのですが

丁度いま 読み終えた作品がありまして・・家族の物語ではあっても、扱うテーマ

ドメスティック・バイオレンス( D V )&ストーカーではありますが・・・



はい 今日の 読書は 『 手のひらの 砂漠 』 by 唯川 恵


    手のひらの砂漠

    著者:唯川 恵

    出版社:集英社

    サイズ:単行本 339ページ



最初にお断りしておきます。

もしも・・・あなたがDV被害に遭ったことがあり、まだ心が回復していないの

ならば、この作品は読まない方が良いかもしれません。受けた暴力や心の痛みが

生々しくフラッシュバックすると いけないから・・・ましてや、この作品の ラ ス ト を考えると、ね。



家庭に於ける暴力シーンは、いわゆるアクション物やクライムノベルの暴力シー

ンとは意味が全く違います。アクション小説の暴力シーンは、様式美みたいな

「お約束」なので、現実味の無い“作り物”として受け止められるからね。


けれども・・・家庭の中での、しかも 夫から妻への一方的な暴力というのは・・・

本来、安住・安楽の象徴のはずの“ 家庭・家族 ”からの暴力は受け止め方が全く

違いますからね・・・一応は御注意を。



さて、著者の唯川 恵氏は、あなたもよく御存知の人気作家。1984年少女小説の

コバルト・ノベル大賞を受賞、2001年『 肩ごしの恋人 』で直木賞、2008年には『 愛に似たもの 』

で 柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。 人気・実力ともに有る方ですね。



私は この方の初期作品は余り好みではなく、まともに読み始めたのは『 セシルのもくろみ 』

以降でしょうか。ミセス向けの読者モデルの世界がテーマになっており、

綺麗事ではないけれど 読後感も潔いものがありました。


その後の『 ティティスの逆鱗 』 は美容整形をテーマにした、凄みのある、完成さ

れた作品でしたね。 ラストは完全にホラーでしたが ww

単なる恋愛小説から突き抜けた感があるというか、作家としてバージョンアップ

したなと感じたものです。




さて、本作『手のひらの砂漠』ですが・・・このタイトルは象徴的ですね。

手のひらの意味するものは何でしょう? 家庭? 穏やかな生活? それとも?


これまでの唯川氏の作品とは かなり異なる作風ではありますが、私はこの作品を

高く評価したいと思います。 新 刊 で は 、今 年 度 上 半 期 の ベ ス ト 1 ですね。

恋愛小説を期待したファンの方は驚かれるかもしれませんが・・・




この物語は、主人公が夫と住んでいるマンションの一室から脱出するシーンから始まります。

えっ? “ 脱 出 ”って?  不思議に思われましたか。

誘拐されて閉じ込められたわけでもない、自分の家から“ 脱出 ”?


■ 第一章 ■ シェルター


ヒロイン・可穂子は29歳。大学卒業後、派遣で働いている会社で知り合った

永尾雄二と結婚して1年余り・・・真面目で穏健で誠実な雄二からのプロポーズを

受けて、新婚3ヶ月位までは穏やかに過ごしました。


けれども、少しずつ雄二からの 常 軌 を 逸 し た 束 縛 が始まります。

実家の母や 友人と携帯で話しても嫌がるようになり、物を投げつけるようになり

ささいな事で「僕を馬鹿にするのか!」と怒り出し殴る蹴るの暴力が・・・我に

返ると悪かったと言って泣いてあやまるのですが・・・


しかし、 暴 力 は エ ス カ レ ー ト 、ついに流産してしまった可穂子。

それでも、夫の暴力は止まず、だんだん 可 穂 子 の 気 持 ち も マ ヒ す る よ う に なります。

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悪いのは私だ、夫を苛立たせないように努力が足りないから。 彼が私を殴るのは

愛しているからだ、 雄二には私しかいないのだから・・・

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はい、これが D V 被 害 者 の 特 徴 なんですよ。 自 分 を 責 め て し ま う のよ!


結婚に失敗したと思いたくない可穂子は、自分にそう言い聞かせるようになり、

どんなにひどい目に会っても 夫のせいとは誰にもいません



しかし・・・殺されるのではないかと思われるような暴力を受けたとき、可穂子は

身一つで 深夜 近所の交番に駆け込みます・・・そうして入院。


治療を受けた病院から紹介されたのは、配偶者から暴力を受けた女性が 一時身を

寄せる事のできる「シェルター」でした。


離婚を決意しても、夫は自分の暴力を認めず、可穂子の自傷である、もう一度やり

直したいと主張、逆に可穂子を殺そうとまでします。


シェルターの責任者・国子から弁護士の伏見玲子を紹介され離婚の手続きに入る

可穂子・・・

その後、可穂子はシェルターを出て次の段階の「長期自立支援施設」である

ステップハウス」に移りました。



雄二は 協議離婚に応じようとはせず、可穂子の写真・名前・実家の住所や 電話番号を

ネットのアダルトサイトに投稿する嫌がらせまで始めます。


玲子の尽力で離婚が成立したのは、雄二には かって交際していた女性に暴力をふ

るい書類送検されていた事実
が分かったからです。



何とかお金を稼ぐ方法をと考えてパートの面接に行っても、男性のちょっとした

声にすら恐怖感が沸き起こるようになっているので 到底外で働くことはできませんでした。



そんな可穂子が辛うじて安住の地を得たと思ったのは、ステップハウスに

無農薬の有機野菜を配達している「えるあみファーム」という 小 さ な 農 園 でした。

配達に来る真美に誘われて 初めて遊びに行き、歓待されてその後も手伝いに行く

内に 受け入られるようになり、住み込んで働く事を決意します。



■ 第二章 ■ ファーム


「えるあみファーム」は、リーダー格の浅井裕子(祐ママ)を始めとする6人の

女性たちの運営する 独立採算制の小さな農園です。


この農園の女性たちは皆、過去に可穂子と同じような経験をしていました

娘をストーカー男にガソリンで焼き殺された 祐ママを始めとして、夫 か ら の 暴 力

父 親 か ら の 暴 力 から逃れて、この小さなファームで身を寄せ合って生きているのです。



農作業を頑張る可穂子。その内にファームにもメンバーの変動がありました。

実家に戻ったり、20歳になったのを潮時に 独立して他で住み込みで働くことになったり・・・

そうして、突然助けてくれと言って飛び込んできた由樹・・・


しかし恋人の暴力から逃れてきたという由樹は 素行にいろいろと問題があり

ファームの和を乱すことが多く、祐ママから出て行ってくれと告げられると

開き直って祐ママの過去を暴きたてます


かって、娘を殺した男が出所してから 更新した免許証が祐ママの荷物にあったことを楯にして・・・

その結果、祐ママは警察に自首をすることに・・・



■ 第三章 ■ ベーカリー


それから2年後。

可穂子は千葉のベーカリーに勤めながら パ ン を 焼 く 修 行 を始めます。

アレルギー対策の米粉のパンを提案し、充実した日々を過ごしていました。


そうして、バツイチ・男手ひとつで娘の杏奈を育てている伊原との出会い・・・

それは可穂子にとって希望ともいえる出会いでした。過去のことも全て話し理解

してくれた伊原と結婚を決めます。


・・・これで、めでたし、めでたし・・・とはなりませんでした(涙)



客として目の前に現れたのは、別 れ た は ず の 雄 二 でした。

自分が悪かった、許してくれと立ち去って行く雄二に不安は覚えたものの・・・



伊原とは、入籍は後にして 一緒に住み始めたのですが、アレルギーのある杏奈が 

貰ったラスクを食べて アナフラシキーショックで病院に運ばれる事件が起きます。

「ママと仲の良いお友だちがくれた」と言う杏奈・・・



疑いながらも、信じたい気持ちもあり、弁護士の玲子に相談をします。

以前、雄二が暴力を振るったという女性に、その後もつきまとってはいないか

確認をしてもらいたかったからですが、結果は驚くべきものでした。



その女性は行方不明のままになっていたからです。 家族から捜索願が出されて

15年間、行方不明のまま・・・両親は雄二を疑って警察にも相談しましたが何の

証拠も無いので手出しも出来ず。



・・・これは、何を意味するのでしょうね?



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可穂子はあの目を思い出す。人間のものではない、動物でもない、生き物ですら

ない、むしろ冴え冴えと澄み切ったようにさえ見える目。

雄二は何も変わっていない。昔のままだ。そして何も終わってはいないことを、

今、可穂子ははっきりと理解する。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


自分が伊原や杏奈と一緒にいる限り、雄二は何をしでかすか分からない・・・

可穂子は、いったんは掴みかけた幸福を手放さざるを得ませんでした。

モノになりかけた仕事も辞めて、可穂子が次に逃げ出す所といえば・・・



■ 第四章 ■ ホーム


可穂子が身を寄せたのは、元「えるあみファーム」のメンバーと仮出所できた

祐ママたちが農園を運営している群馬県下仁田の小さな村です。


ここで可穂子は身につけたパン焼き技術を活かして、石窯焼きの米粉パンを造り

ドライブインに卸して稼ぐ事も始めました。束の間の平和・・・


別れた伊原は一度だけ会いましたが、やはり雄二からの悪質な嫌がらせがあり、

勤めを辞めて実家に戻る事にしたとの事・・・。



どこまでも執念深い雄二に又見つかったら・・という思いから 可穂子は 偶然知り合った

老婦人から護身術としての 合 気 道 を習い始めたりもします。



そうして、ついに・・・・・ドライブインのオーナーが宣伝のためにHPに載せてくれた

可穂子の 写真や名前から 居場所を探し出されてしまったのです。



笑いながら「 僕 た ち の 家 に 一 緒 に 帰 ろ う 」という雄二の不気味さは

言うまでもありませんが、ここで可穂子は 決 意 をします。


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いつかこの日が来るのは覚悟していました。 たとえ今逃げたとしても、あの人は

また必ず追ってくる。 その繰り返しになるだけです。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


その通り・・・雄二の異常さはもう充分に分かっているはずですから、例え警察に

訴え出ても、現状事件ではないし、接見禁止命令に違反したところで微罪でまた

戻ってこられるのだから・・・



そうして、再び 逃げ出したマンションに戻り雄二と一緒に暮らし始めた可穂子。

部屋は何もかも昔のままにしてあり、それが異常さを より際立たせています

可穂子はソファで寝ながら、雄二の様子を伺いますが、しばらくの間は無事でした。



考えた挙句、自分に何かあった場合の事を考えて、両 親 宛 の 詫 び の 手 紙 を弁護士の

玲子に託します。 両親が、この手紙を受け取る時は、自分は既に雄二に殺され

ているだろうと考えて
・・・



そうして一週間後・・・カップを割ったことがきっかけで雄二の怒りが爆発します。

「 殺してやる! 」と叫び アイアンを持って可穂子に襲い掛かる雄二。



そうして、可穂子は・・・・・まあ、これ以上は書かない方が良いでしょうね。



可 穂 子 の 取 っ た 手 段 が、良いのか悪いのか、私には判断がつかないから・・・

しかし、もしも私が可穂子であったならば・・・可穂子と同じ事をしていたかもしれません



最終的には、正当防衛が認められて 可穂子は自由の身になる事ができました。

もうその頃には、伊原は前妻とよりが戻って仲良く親子で暮らし始めていたので

可穂子は一人で、再び、群馬・下仁田のホームに戻るところで 物語は終わります。



ひょっとしたら・・・可穂子の取った方法は 間違っているのかもしれません。

けれども、無責任な評論家のように 彼 女 を 断 罪 す る 気 持 ち は 全 く あ り ま せ ん



最後に・・・可穂子の言葉を 載せて 今日は終わりにしましょうね。 長かった?

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確かに、どんな人間でも命の重さは同じ、生きている価値が必ずあるのかもしれない。

でも、そんなことを言えるのは、死ぬほどの恐怖を味わったことがない人間だからよ

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


ああ、今日は随分長くなってしまいましたね。 それでは、またね・・・・。




posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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