2013年05月24日

『 小 公 女 』 ( by バーネット夫人 ) を 「 ヴィクトリア女王の誕生日 」に読む


こんにちは。しばらく御無沙汰してしまいましたね。

さてさて、5月24日 は 英国ヴィクトリア女王の誕生日になります。


ならば、ヴィクトリア朝を舞台にした作品を・・・と思い、ディケンズよりも先に

思い浮かんだのが何故かこの作品でしたわ。


はい、今日の 読書は『 小 公 女 』  by バーネット夫人



小公女(岩波少年文庫) 432ページ  著者:フランシス・ホジスン・バーネット

今回読み直したのが上記のものですが、他に講談社青い鳥文庫・新潮文庫・福音館古典

童話シリーズなど各版元より出版されています。

バーネット夫人.jpg

↑ 著者のバーネット夫人については、過去の記事でも 夫人作の『 秘 密 の 花 園 』

取り上げましたので 宜しければそちらも参考にして下さいね。


さて、この作品が 一番初めに発表されたのは1888年で、タイトルは 『 セーラ・クルー 』

その後、書き直されて 改題『 小 公 女 』( A Little Princess )と発表されたのが1905年です。


日本も かなり早くから翻訳されていますが、それ以前に発表された 『 小 公 子 』

( Little Lord Fauntleroy )
の邦題に合わせて『小公女』・・・翻訳家の若松賤子氏がつけたものです。



このネーミングセンスは素晴らしいですね。原題が直訳すると「小さな王女」で、

直訳すると何とも単純というか、面白みの無いタイトルを『小公女』とする事で、

この物語の「特別さ」が表現できたと思うな・・・


他では 菊 池 寛 が昭和の初めに訳していますが、そのときの父兄に向けたはしがきが

この物語の核心を突いていますので紹介しておきましょうか。

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この『小公女』という物語は、『小公子』を書いた米国のバァネット女史が、その

『小公子』の姉妹篇として書いたもので、少年少女読物としては、世界有数のものであります。


『小公子』は、貧乏な少年が、一躍イギリスの貴族の子になるのにひきかえて、この

『小公女』は、金持の少女が、ふいに無一物の孤児(みなしご)になることを書いて

います。しかし、強い正しい心を持っている少年少女は、どんな境遇にいても、敢然

としてその正しさをまげない、ということを、バァネット女史は両面から書いて見せ

たに過ぎないのです。


『小公子』を読んで、何物かを感得された皆さんは、この『小公女』を読んで、また

別な何物かを得られる事と信じます。


★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━━━★

この作品については、アニメ化作品の「小公女セーラ」が有名ですが、取り敢えずは

原作の方のお話、ということでお許し下さいね。


さて、有名な物語ではありますが・・・

主人公はセーラ・クルー。英国の植民地インドに生まれ育った少女です。

父親はクルー大尉という資産家で母親はセーラが生まれた時に亡くなりました。


さて、当時の植民地育ちの子供たちは学校へ行く年頃になると、教育の為に本国・英国へ

送り込まれました。
この物語では時代は特定されていませんが 19世紀の後半、

産業革命を為し終え 世界中に植民地を持ち、しかし貧富の差は激しかった、そんな時代です。


親と別れて暮らす子どもたちが入学するのは 寄 宿 舎 学 校ですね。

物語は、7歳のセーラが父親と共にロンドンのミンチン精華女子学院へ向かうところからスタート。

1939-1.jpg

( 画像引用:『 小 公 女 』1939年製作 名子役シャーリー・テンプル主演  )


この学校の規模は、今回読み直して改めて気がついたのですが、校舎や寮のある学校ではなく、

大きなタウンハウス( 高級な集合住宅タイプの邸宅・地下や屋根裏部屋などがあり、

使用人たちはそこで寝泊り&家事・仕事をします )をそのまま寄宿舎学校に

転用しているのですね。


院長のミンチン先生は典型的な俗物として描かれています。お金持ちにはペコペコと

胡麻をすり、そうでない人は露骨に見下す・・・片腕となって働いているのは 実の妹のアミーリア先生

ミンチン先生からは薄ノロ扱いされていて、確かに余り頭は良くないのですが、

物語の最後で 彼女なりの逆襲にでます ww


さて、セーラはここで特別生として( 行き過ぎるほど過剰に )大切に扱われますが、

それに溺れこんでしまわないキャラクタとして設定されています。


劣等生のアーメンガードや、最年少で手の付けられないロッティ、下働きの孤児のベッキィ

などからも慕われ、フランス語はネィティブ並にペラペラで・・・となると余りにも

優等生過ぎて面白くないのですが、セーラには一風変わったところがありました。


それは想像力、夢見る力と言ってもいいかな? どんな小さな事でも素敵な物語にし

てしまえる能力・・・そう、「お話」がとても上手なの。



これには、意地悪なクラスメートのラヴィニアも認めざるをえません。

まあ、だからこそ、しゃくにさわるのですがw

パパの クルー大尉 はダイヤモンド鉱山事業を始めるという手紙も来て、セーラは益々

将来はお金持ちになりそう、おまけに学院では人気者。


・・・そんな幸福の絶頂期ともいえる或る日、セーラのお誕生日のパーティが開催されます。

楽しいパーティが盛大に繰り広げられている、まさにその時、ミンチン女学院に一人の来客が・・・


それはパパの弁護士さんで、インドでクルー大尉が熱病で亡くなり、

出資したダイヤモンド鉱山事業は失敗に終わり、共同出資した友人も行方不明・・・



つまり、パパは破産して無一文になって死んでしまったのです。

残されたセーラは一文無しの 孤 児 ・・・頼るべき親戚もいません。


これまで、セーラにかけたお金はどうなるの!追い出してやる!とヒステリックに喚く

ミンチン先生に、弁護士さんは、それは世間体が悪いので セーラをここで働かせれば良い、

頭も良い子らしいので大きくなれば教師としても役にたつでしょう、とアドバイス。


・・・その日からセーラの受難の日々は始まります。


美しい持ち物は皆奪われて、部屋は屋根裏部屋。台所の下働きやお使いに、と 一日中

こき使われるはめに・・・


岩波少年文庫版では、全19章あり、セーラーが幸福だったのは初めの7章だけ。

豊かに贅沢な暮らしから、下働きの女中仕事へ。この辺りが永遠の少女小説としての

キモになるのでしょうか。


また、おとなになって読み返して気がつくことも多々ありました。


ミンチン先生の意地悪ぶりも際立っていますが、初めから心の奥底でセーラの事を嫌

っていました。先生自身のコンプレックスを刺激するような・・・優等生で良い子な

のに理解不能な世界を持っているのが、つかみどころなく可愛気が無いように思えたのでしょう。

セーラが単なる金持ちのバカ娘ならば、あれほどまでに憎まなかったかもしれません。



そんな境遇の中で、セーラが自分を見失わないために努力したこと、それはやはり

夢 見 る 力 」・・・バスティーユ牢獄のマリー・アントワネットに例えたり・・・


けれど、現実は苦しいもので、あるクリスマスの日、道を歩いていたセーラは

裕福なお金持ちの子どもから 6ペンスのお金を貰います。

それは、やつれて空腹そうなセーラへの 「 ほ ど こ し 」でした。


かって、セーラが貧しい子どもや乞食の子にほどこしたように・・・

読み返して、セーラの不幸が一番際立っているのがこの部分でしたね。


ところで、屋根裏のセーラの部屋から見える お 隣 の 家 に、あるお金持ちの紳士が引っ

越ししてきました。紳士は顔を見せませんが、何故かターバンを巻いたインド人の

男性と彼のペットのお猿さんまで・・・


あるとき、セーラが 理不尽な仕打ちを受け 食事抜きで空腹なまま眠ったとき・・・

夜、ふと目を覚ますと・・・奇跡が起っていました↓

奇跡.jpg

( 画像引用:DVD『 リトル・プリンセス 』)


そこから、セーラーの運命は目まぐるしく変わり、隣家の紳士は 実はパパのクルー大尉の

友人だった人でした。 彼はずっとセーラを探していたのです。

ダイヤモンド鉱山は成功し、その権利の半分はセーラーのものになることに・・・


ラストはハッピーエンドなのですが、手のひらを返したようにセーラをちやほやし始めた

ミンチン先生をセーラは拒否します。

そんなミンチン先生に対してアミーリア先生は叫びます。

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あの子は賢いし、いい子だったから、もし姉さんがいくらかでも親切にしてやれば

ちゃんと、それにむくいたと思うわ。(中略)あの子が姉さんでは太刀打ちできないほ

ど賢いせいで、最初からずっとあの子が嫌いだったからよ。(中略)


私たちのことなんか、お見通しだったのよ。あんたが心の冷たい俗っぽい女だということも、

私が馬鹿な弱虫だということも、私たちが二人ともいやしくて意地汚くて、

あの子のお金の前にはいつくばってたんだという事も、お金が無くなったとたんに

辛くあたったという事も(中略)


あの子の方は、物乞い同然になっても、小さな公女さまみたいにふるまっていたのに

(中略)本当に小公女さまみたいだったわ!


★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★

逆境の中でも誇り高く、言葉とイマジネーションの力を武器に生きた少女の物語・・・


この年になってから読むと、子ども時代に読んだものとは違った良さを味わうことが

できました。それこそが、名作の名作たる所以なのでしょうね。


なお、何度か 映 像 化(DVD化作品)されていますが、現在のところ比較的入手しや

すいものはコレかな? タイトルは原題に合わせて 『 リ ト ル ・プ リ ン セ ス 』です。



ストーリィは一部改変され、死んだはずの父親が実は生きていた・・・となっていま

すが、現状ではまあまあの作品ではないでしょうか。ヴィクトリア朝の時代考証など

美術やセットも美しいので、背景の雰囲気を充分に楽しむ事もできます。


また、1939年のシャーリー・テンプル主演のものは、やはりハリウッド式にかなり改変されていますね。



それでは、今日はこの辺で・・・またね。

P・S アニメ『小公女セーラ』もDVD化されているみたいですね(全46話)↓





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posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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