2013年05月03日

「 リカちゃんの誕生日 」に 読む 『 パーキィ・パットの日々 』 by  P・K・ディック


こんにちは、また来て下さってありがとう。



5月3日は「 憲法記念日 」ですが「 リカちゃんの誕生日 」でもあります ww


リカちゃん・・・はい、御存知「 リ カ ち ゃ ん 人 形 」のことです。彼女の誕生日は

5月3日に設定されています。 ちなみに永遠の小学校5年生、ね。


この「リカちゃん」は、ある有名な 外国の着せ替え人形をモデルにして生まれました。

分かりますよね? そう、マテル社の「 バ ー ビ ー 人 形 」です。

でね、このバービー人形にインスパイアされて書いた・・・という作品が・・・



はい 今日の 読書は 『 パーキ・パットの日々 』   by  P.K.ディック
パーキー・パット.jpg




パーキー・パットの日々(ディック傑作集1)

著者:フィリップ・K・ディック

出版社:早川書房

サイズ:ハヤカワ文庫410ページ


私が 所持しているのは上記のものですが、この版は 絶版になり 再編集されて

販売されているのが、こちらになります↓ 収録作品もかなり変更されています。


    ペイチェック (ディック作品集)

    著者:フィリップ・K・ディック

    訳者:浅倉久志

    出版社:早川書房

    サイズ:文庫575ページ



著者はディックです。フィリップ・キンドレッド・ディック( 1928〜1982 )

私自身の オ ー ル タ イ ム ベ ス ト に入るSF作家です。


敢えて言ってしまいますが、技巧的に優れた作家かというと・・・少し違うような・・・

当初、意味有り気に書かれていた伏線は 収拾されぬまま終わってしまったり、

ストリーが途中で 破綻して、わけが分からないまま 強引に終わりになって 唖然

とした事もあります ww  


しかし、他の追随を許さぬ 独 自 の 魅 力 は、ハマッてしまうと抜け出せない魅力が・・・


1963年に歴史改変SF『 高 い 城 の 男 』 でヒューゴー賞を、1975年に

『 流 れ よ 我 が 涙 、と 警 官 は 言 っ た 』 でキャンベラ賞を受賞

していますが、生涯不遇であり、経済的にも恵まれない状態が 長く続きましたから・・・



私生活では、5回 結婚して 5回 離婚・・・まあ、逃げられたといっていいのかも?
 

心臓の発作を起こして酸素テントの中に入っている時に、妻から 離婚届を突きつけられた

事もあったそうです。


ディック自身は、本 来 は 純 文 学 を 目 指 し て い た のですが、普通小説では認められず、

生活の為に 安っぽいパルプ雑誌に SFを発表していたとか・・・本人的には「ザ・ニューヨーカー」

のようなハイ・ブラウな文芸誌に 作品が掲載される事を望んでいたのかもしれません。

しかし、残された作品群は 単 な る S F の 枠 を 遥 か に 超 え た ものが多いのです。



ディックが 世界的に認められるきっかけになったのが・・・この映画です。


    ブレードランナー (ファイナルカット)

    主演:ハリソン・フォード

    監督:リドリー・スコット

    収録時間:117分



御存知 SF映画の 輝かしい金字塔です。『 ア ン ド ロ イ ド は 電 気 羊 の 夢 を 見 る か ?』を、

こういう形で 映画化した監督は凄い・・・ストーリィが 原作とはかなり違っていても、

間違いなくディックのエッセンスを感じさせる映画です。



近未来の 退廃的な映像の美しさ、やや難解ともいえる哲学的なストーリィ・・・


「 人間の意識を持ったアンドロイドと、人間とはどう違うのか? 自分は人間

だと思っているけれど 実はアンドロイドではないのか? 」 この映画は 幾つかの

バージョンもあり、様々に解釈されていますから、これが正しい!という答はないと思うな。



ディックを読み始めたのは、やはりこの映画を観てからかな。ディック作品が

数多く 翻訳され始めたのは、この映画のヒット以降ですしね。



しかし、ディック自身は 映画公開前に脳梗塞で死亡・・・

自身の栄光を知ることはありませんでした。



ディックの作品は 好き嫌いがハッキリ分かれている傾向があるかもしれません。

まともな常識からは遥かにブッ飛んだ作品が多いですからね ww



「 ほんもの 」と「 にせもの 」、 「 現 実 」と「 非 現 実 」が入り乱れて、悪夢の連続

のような物語が多いからかもしれません。悪夢から醒めてホッとしても、それもまた夢・・・


自分が覚醒しているのかどうか、自分でも分からない、周囲の風景すら

見ている間に どんどん変わって行く・・・



私の読書好きの友人(SFは嫌い)に言わせると「 悪酔いしそうな作品ばかりで、

ついて行けないところがある
」との事でしたが ww  言い得て妙ですね。



あとは、自分が自分であることの 確かさが崩壊して行くような感覚・・・

現 実 崩 壊 感 覚 とでも言えば良いのでしょうか、足元が揺らぐような・・・確か

に“ あ る ”と思って信じていたものが 、実は“ な い ”・・・ 


そうですね、あなた自身に例えてみましょうか? 仮に既婚者だとして・・・


日曜日に あなたは近所のスーパーにお買物に行きます。買物を済ませて家に戻ると・・・

確かに 自分の家で 夫も子どももいるのに、あなたを知らない人だと言う


えっ? からかわれているのかと思いましたが、そうではない。終いには

精神病院に電話するぞ、と怒鳴られて 家から追い出されてしまう。そんな馬鹿な!

と思いますが、近所の人たちも同じで誰も自分の事を知らないと言う


実家に電話しても、母親はこの家にはそんな娘はいないと言う・・・その内、

理由も分からぬ内に 警察に逮捕されて延々と取調べを受け、自分が実は犯罪者

であると知らされる・・・



そんな馬鹿な! 自分はとんでもない世界に迷い込んでしまったのか?



それとも単に自分の記憶違いなのか? 自分が 本当は 誰 な の か 分からなくなって

しまう・・・自分が自分である事を 証明するものが何も無い・・・


まあ、こんな悪夢のような世界( 中国の説話「 胡蝶の夢 」みたいですが )が

ディック作品にはよくあるのですよ。現実と悪夢の境目が曖昧になってくる、

自分が 確かだと思っていたものが 音を立てて崩れて行く・・・そんな感覚。



また、文学の一大テーマに「 人 間 と は 何 か ? 」というのが有りますよね?

ディックの場合は「 人 間 と は 何 か ? と 考 え る 自 分 は 本 当 に 人 間 な の か ?

「 自分は人間であると思っているが、それは証明できるのか?」「偽者だとしたら、本物とは

どう違うのか?」という領域まで踏み込んでいきます。



『 アンドロイドは電気羊〜 』を映画化した『ブレードランナー』は、この点を

明確なテーマとして打ち出して成功したと言えるでしょうね。



ディック作品にはヒーローがいません。『 トータル・リコール 』以降の映画化作品は、

商業的エンターティメントの スター主義で売っていますから、その点では物足りない

ところも多いのですが。 ただ、映画化がきっかけでディック作品に関心を持つ人が

増えれば、ファンとしては嬉しいですし。



また、ディック作品でバラ色の未来が描かれたものは・・・何も無いなあ・・・

むしろ、こんな世界には住みたくないと思わせる状況が舞台 になっているものが多い。

今日、お話する作品にしても・・・


パーキー・パットの日々

近未来・・・核戦争後の 荒廃した地球が舞台です。

生き残った人々は 放射能を避けて地下に住み続けています。そして、現実の苦しみから

逃れるために夢中になっているのは、お人形のパーキー・パットを使った遊び。

数人でグループを作り、つかの間ですが、過ぎ去った日々をパーキー・パットに

託して遊びます。ゲームとしては、一種のシミュレーション&すごろくの 人 生 ゲ ー ム ・・・?


それは 過ぎ去った恵まれた日々そのもの。 決して戻ることの出来ない世界。

人形の他には、商店街や街路・住宅の模型、パーキー・パットの住んでいる豪

華な部屋、クローゼット、沢山の衣裳、オーディオセット・・・・・

すべては 失 わ れ た 過 去 の 暮 ら し です。


ある時、近隣ブロック地区では パーキー・パットとは違うタイプの コニーという人形を

使用している事を知り、お互いに人形を賭けて勝負が始まります・・・

( 個人的には )大傑作の『 パ ー マ ー ・ エ ル ド リ ッ チ の 三 つ の 聖 痕 』の原形作品。




変 種 第 二 号】=【人間狩り】 

※注意「ちくま文庫」では『人間狩り』と訳されています。


ディック作品の中ではよく知られているのではないでしょうか?

非常に良く出来た作品で、ディックの 初 期 短 編 の 代 表 作 といって良いと思う。


東西冷戦下に書かれた作品なので、敵国がソ連になっています。地球は連合国

と共産国家との二大対立で荒廃した戦闘状況が続く中、それぞれの陣営が作っ

兵 器 が 勝 手 に 進 化 を遂げてしまい人間を襲うようになります。

最終的には、その兵器が 人 間 そ っ く り の姿にまで進化してしまい・・・・


分かりやすくてテーマが明確で、上手いオチの有る作品です。

「スクリーマーズ」という名で映画化されています。地味で余り話題にならな

かったけれど、ディック原作には比較的忠実な佳作映画でした。


ちなみに、この『変種第二号』は光文社の 宮 部 み ゆ き 氏が編んだアンソロジー

『 贈 る 物 語 terror み ん な 怖 い 話 が 大 好 き 』 の第五章“ 生者の恐怖と悲しみと ”

にも収録されています。




報 酬】=【ペイチェック

技師のジェニングズは 高額の報酬で仕事を請け負いましたが、機密を守る為に

業務終了後は 記憶が消される約束でした。しかし、2年間の仕事を終えて渡された報酬は、

役にも立たないようなガラクタばかり・・!!


ジェニングズ自身が希望した物だから、と告げられます。

・・・コード・キー、チケットの半券、小包の預り証、細い針金が少々、2つ

に割れたポーカーチップの片方、細長い緑色の布きれ、等々・・・

なぜ自分はこんな物を望んだのか?おまけに、いきなり警察に追われる身になり・・・・・

「ペイチェック」という名でジョン・ウー監督により映画化。




に せ も の

分かりやすいワン・テーマ作品。自分は人間なのか?それとも外宇宙人が送り

込んだスパイなのか?・・・最後のオチがなんとも・・・




植 民 地

星 新 一 風 の 味 わ いのある短編。一種のアィデアストーリーですが、「本物」と

「偽物」の混乱がテーマになっています。




た そ が れ の 朝 食

タイムスリップ物です。平和な一家がある朝に突然、7年後の世界に タ イ ム ス リ ッ プ

してしまいます。世界大戦の最中らしく 家の周囲は荒廃しきった世界が。


敵国の 新兵器爆弾の威力で 時間軸がずれて跳ばされてしまったらしいのですが

この世界で生きて行くのか?それとも、残って次の爆弾を浴びれば再び戻れる

可能性もあるらしいのですが・・・小松左京に似た短編があったと思うけど、

ディックの方が救いが無いなあ・・・




フォスター、おまえ、死んでるところだぞ

シェルターを巡る物語。 東西冷戦下の社会では、シェルターが「一家に一台」

が常識になってる世界です。単なる防御機器ではなく少年の「ロマン」の象徴

になっているところが好き、かな。




以上、旧版収録の作品について少々思うことなど・・・


最後に、作品中に収められているジョン・ブラナー(SF作家)の言葉を引用して

今日は終わりにしましょうね。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

断っておくが、ディックの世界は けっして人好きのするものではない。

たいていの場合、その世界はさびれ果てている(中略)

そう、それはけっして 快適な世界でも、魅力ある世界でもない


その結果、とつじょとしてその世界の正体に気づいたとき、読者は非常な混乱

を味わうことになる──それは我々みんなが住んでいる世界なのだ。(中略)

とはいえ…とはいえ、なにかが違う。なぜなら、そ の 世 界 を 我 々 に 見 せ て い る

視 点 そ の も の が 独 特
だからである。

それは、他の誰でもない、ミスター・ディック独特の視点なのだ。

★━━━━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━★



ええ、その通り。 私は・・・あなたも?・・・読書の楽しみを味わうのは

作家たちの独特の視点を味わいたいからなの。自分の視点とは別の、ね

だからこそ・・・物語は無限にあるはず。 そう思って今日も 読書さ www

それでは、またね・・・。




posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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