2013年05月08日

「 松の日 」に 読む 『 嫌 わ れ 松 子 の 一 生 』   by 山田 宗樹


こんにちは、いつも来て下さってありがとう。


5月8日は「 松 の 日 」です。 日本の松を守る会が 1989年に制定したもので、

日本の代表的な 樹木の松を保護していく事が目的になっています。

で、「松」です。姓名にもよく使われている漢字ですが、女性の名前で「 松 子 」 ・・・


『 ソ ロ モ ン の 偽 証 』 にも 松子という少女が脇役で登場しましたし、大谷崎『 細 雪 』

蒔岡四姉妹・長女の名前も「松子」でした。


けれども、今ではこの作品のヒットで「松子」といえば、もう・・・・・。



はい  今日の 読書は 『 嫌われ松子の一生 』  by 山田 宗樹


    『 嫌われ松子の一生 』 上・下

    著者:山田宗樹

    出版社: 幻冬舎

    サイズ: 文庫


著者の 山田宗樹氏は 1998年、『 直 線 の 死 角 』で横溝正史ミステリ大賞を受賞

2003年にこの『 嫌われ松子の一生 』で大ブレイク。 その後は 2012年に 『 百 年 法 』で

日本推理作家協会賞を 受賞された方です。決して多作ではないのですが、映像化作品の

ヒットもあり 今後も期待できる作家でしょうね。 文章もなかなか 読ませます。



さて、本作は主人公・ 川 尻 松 子 の22歳から始まり、53歳で東京の一人暮らしの

アパートで 遺体(殺された?)が発見されるまでを描いた作品です。

“ あ る 不 幸 な 女 の 一 生 ” ・・・ともいえる作品なのですが・・・



物語は、松子の甥・大学生の の下宿先を訪れた父(松子の弟)から

松子の 死後の部屋の後始末を頼まれたところから始まります。


30年前に蒸発したまま 音信普通の伯母・松子に何があったのか?


現在の甥の目から俯瞰して( 鳥の目で )語られる松子&係わりのあった人々の姿と

過去からの、松子自身のリアルタイムでの姿が平行して語られてゆきます。




昭和45年 松子22歳 生まれ故郷・福岡県で 中 学 校 の 新 米 教 員 です。

修学旅行の下見から 物語はスタートしますが、子どもの頃から優等生ではあって

も、どこか無防備で隙の多いキャラクタが仄見えます。


そうして、修学旅行先での窃盗事件の稚拙な対応・・・松子としては、犯人の生徒・ 龍 洋 一

かばうつもりで、自分が盗んだと 旅館に告げ お金を返そうとするのですが

手持ちのお金だけでは足らず、同僚のお金を盗んでしまいます・・・



はあ? 何をやってんの?  バカじゃないの?というのが常識的な感想ですよね。

結局は、全てが裏目に出て 彼女は学校を辞めざるを得ない状況に・・・。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

小学生のころから優等生だったわたし、通信簿もオール5だった わたしが、

何回も 学級委員や生徒会の役員を任せられた わたしが、処分される。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


ここで読者は失笑するでしょうね・・・「お勉強」はできても愚かしい女だと。

そうして松子の 転 落 は こ こ か ら 始 ま り ま す ・・・・



松子は そのまま失踪して、次に読者の前に姿を現すのが 昭和46年の終わり、

場所はソープランド( 時代的にトルコ風呂と称されていた頃です )の面接場所・・・!

しかし、結局は覚悟不足?で断られてしまいます。


同棲している男性は 作家志望の典型的なヒモ男ですが、太宰治に傾倒している

イタイ男・・・彼の自殺後には友人の男性(妻子あり)と交際するものの

彼には 遊びでしかなかった事を 残酷な形で思い知らされます。



そうして・・・彼女が向かったのは かって断られたソープのお店でした。

めでたく?採用された松子は 真面目に!お仕事に励んだ結果NO・1にまでなり

貯金も出来て、ここで足を洗えば人生の軌道修正は出来たはずなのですが、

心の隙間を突かれたのか、新たに登場したタチの悪い男を養う破目に・・・



雄琴で働くようになった松子は、やがて覚醒剤にまで手を出し、同棲していた男との

別れ話のもつれから、 彼を刺し殺してしまい 逃走して東京へ・・・・・



自殺しようとしても 死に切れず、偶然知り合った理容師の男性とつかの間の同棲を。

しかし、全国指名手配されていた松子はあっけなく逮捕され、刑務所で服役のはめに。


出所後は、服役中に身につけた美容技術で 美容師として働きます。

これでようやく落ち着けるか・・・とは ならないのが 松子の松子たる所以・・・



生涯の要所要所で出会う男性を、思 い っ き り 愛 し 過 ぎ て 逆 に 不 幸 に なってしまう。



勤務先の美容院に客のボディガードとして現れた男性・・・それは 松子の転落の

きっかけとなった元教え子・龍洋一でした。松子が好きだったと告白され、

そのまま同棲が始まり・・・新しい地獄の 幕開けです・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

結局、男だね。男ができるとね、いっそう仕事に精を出すタイプと、男にのめりこんで、

仕事がおろそかになるタイプがいるけど、松子は後の方だったみたいだね。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


↑松子が勤務していた美容室オーナーの言葉です。 普通の建設的な「恋愛」ではなく

「男ができた」と称される恋は 不幸で不毛な関係になりがちなのですが・・・



やがて 洋一に巻き込まれる形で 再び逮捕、服役・・・・・



そうして 最後の最後に 希望を賭けた時に、通りすがりの若い男女に おもしろ半分に殺されて

一生を終えた松子・・・



・・・いわゆる「 女 の 一 生 」ものでしょうか?



「女の一生もの」といえば、時代や運命に翻弄される悲劇的な作品、心にずしりと響く

重さを感じさせるイメージがあるのですが、この『 嫌われ松子〜 』の場合は

少し違うような・・・強いて言えば エミール・ゾラ 『 居 酒 屋 』の主人公・ジェルヴェーヌや

宮尾登美子氏の『 鬼 龍 院 花 子 の 生 涯 』 の花 子に 近いような気が?



生まれ育ちが貧しいわけでもない。充分な知性も教養もあったはずの女性。

なのに、負のスパイラルに巻き込まれ 抜け出すチャンスは何度もあったのに

常 に 悪 い 方 の 道 を 選 ん で し ま っ た 一 生 でした。



松子の一生は、単に運が悪いだけではなく、自身の 男を見る目が無さ過ぎる点や

計画性も無く ズルズルと流され易いところなど、本人自身の問題も多すぎて

良識有る( 普通の )常識人の目から見ると、愚かで どこかピントがずれた所はありますが

不思議と私は「松子」が嫌いではありません。 憎 め な い のです。



誰かを愛するのに 打 算 と 計 算 が 全 く 無 い のには 逆に驚かされます。

殆どの女性は 松子ほどには 愚かにはなれない



それは当然なんだろうけれど・・・それで良いのですが・・・



もちろん、松子は小説作品の中の登場人物であり、実在する生身の人間ではありません。

良かれ悪しかれさまざまな 「 可 愛 い 女 」の要素をギュッと凝縮させてあるから。


そして、やや古風とも思える名前と 作品のタイトルが 何か 逆 説 的 な 意 味 が有るよ

うに思えてなりません。


そうか・・・「 嫌われ松子 」は究極の「 愛 さ れ 松 子 」なのかもしれないね。

そんなことを考えてしまった一冊でした。



ところで、中谷美紀主演で映像化された『嫌 われ松子〜』ですが、トレイラーを

見る限りでは 随分ポップな仕上がりで驚きました。しかし、中谷美紀にとっては

辛い映画だったらしいと 映画批評で読んだ事があります。 一度見てみようかな・・・



さてと・・・今日はこれでお終い。

次のアップは もう少し明るい作品がいいなあ・・・バリバリの恋愛小説とかね ww

それでは、またね。






posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 日本の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。