2013年05月09日

『 高 慢 と 偏 見 』 を 「 告白の日 」に 読む   by  ジェーン・オースティン


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


5月9日は「告白の日」・・・「告白」と聞くと湊かなえ氏の『 告 白 』を真っ先に

思い浮かべてしまうかな?


しかし、今日の「告白の日」は 男性用化粧品ブランド “AXE” が、男性の恋愛を

応援する活動の一環として制定したものです。いわば「 愛 の 告 白 」の 日 ・・・?



お金持ちで 素敵な男性から 愛を告白され、いったんは断ったものの 人間性に優れて

誠実な彼は 自分の欠点も認めた上で 彼女を理解し 彼女の為に力を尽くし、

あきらめず再度 愛を告白・・・その頃には 二人の間の誤解も解けて 彼女も彼を

深く愛するようになっていて、障害にもめげずゴールイン! めでたし、めでたし!!



・・・・・まるで古典的な 少 女 漫 画 の よ う な お 話 かしら?



でも、この作品は 文豪・夏目漱石さえも絶賛した 世界文学史に残る大傑作 なのね。 

W・S・モームも『 世 界 の 十 大 小 説 』の中にこの作品を入れています。



はい 今日の読書は 『 高 慢 と 偏 見 』 by ジェーン・オースティン


    『 高慢と偏見 』 上・下 (←こちらは上巻)

    著者:ジェーン・オースティン

    訳者:中野康司

    出版社: 筑摩書房

    サイズ: 文庫 (上)360ページ (下)323ページ


『 自 負 と 偏 見 』とも訳されてます。( 原題:Pride and Prejudice )

版元は他に新潮社・岩波書店・光文社・河出書房新社など。



著者はジェーン・オースティン(1775〜1817)英国の、いや世界文学史上に残る女性作家。

イングランド南部の牧師の娘として生まれ、生涯に残した長編小説は6冊。


18世紀末から19世紀の 英国の田舎の中流社会を舞台に、女性主人公の結婚までの

生活を描いた作品群はどれも傑作と言えます。メインテーマは皆同じで、ヒロインが

愛する男性と出会い、紆余曲折を経て最後にめでたくゴールイン!
というハッピーエンド。

そう、オースティンの作品はみな 偉 大 な る 婚 活 小 説 なんですよ ww



・・・なんですが、そのパターンが全て違っているんですよね。

ヒロインのキャラクタも 家庭状況も異なっています。



恋愛小説というと、悲劇的なイメージも強いのですが オースティンの場合は・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

私には 歴史ロマンスも叙事詩も賭けません。まじめな歴史ロマンスを書かないと

絞首刑にするぞ、とでも言われないかぎり、そういうものを書く気にはなれません。

そして、 自 分 や 他 人 を 笑 う よ う な こ と を書いてはいけないと言われたら、

最初の一章も書き終えない内に 絞首刑にされた方がましだと思うことでしょう

★━━━━━━━━━【上巻・訳者あと書きより抜粋 】━━━━━━━━━━━★


↑はい、こういったキャラの持ち主でしたから、悲壮感ただよう重苦しい作品ではなく

ユ ー モ ア と 皮 肉 に 満 ち た ( でも愛情深い )作品群が生まれたのでしょうね。



また、牧師の娘ではあるのですが、登場する牧師たちは 結構辛辣に描かれているのも

特徴かな? 『 エ マ 』では、脇役の牧師夫妻を“ 俗物 ”と切り捨てていますし ww


『高慢と偏見』に登場する牧師は 完全にピエロとしての役割をww

例外は 『 マンスフィールド・パーク 』 でしょうか、こちらはヒロインの結婚相手

だからかな?



その中でも、映像化効果もあり、一番よく知られ人気が高いのが『高慢と偏見』

最初に書かれたのは1796〜1797年の間で、その時のタイトルは『 第 一 印 象 』

現在の形で出版されたのは1813年のことです。




ベネット家は 英国南部の田舎・ロングボーンの小地主です。

家族は両親の他に娘が5人。美人で心優しい長女のジェイン・理知的で活発な

次女のエリザベス(リジー)・器量が悪く内向的な三女メアリ・怒りっぽくて

下の妹の言いなりの四女キティ・陽気でおませな問題児 ww 末娘のリディア・・・

五人姉妹! さぞかし賑やかでしょうね ww



しかし、この一家には 大きな悩みがひとつあります。それは “ 相 続 ”のこと・・・



「 限定相続 」という形で、ベネット氏亡き後は この家を相続できるのは男子のみ!

(この時代、女子は相続できないという法律はありませんが、条件が付けられて

いる場合も多かったようですね)



単にお金が相続できないだけではなく、住んでいる家も家具も馬車や馬も領地も

殆ど全てのものが“財産”とみなされ、継ぐ事ができません。

ベネット氏にもしもの事があったら、家から出て行かなければならないのです。



なので、ベネット夫人の目標は何とかして 娘達を(お金持ち&紳士に)嫁がせること!


この時代、中流以上の階級の女性の自活など有り得なかったので

(例外的には、住み込みの家庭教師くらい?)

とにかく結婚!結婚!! 未婚女性のミッションは( 条件の良い )夫を得ること!!



女性は結婚しないと食べていけない、という時代でしたからね。 生涯未婚であるならば、

兄か弟に養ってもらうしかない惨めな境遇になってしまいます。 職業を持って独立するすべもなく

使用人として働くのは 下層階級の人々だけですから・・・



娘ばかりのベネット家の母親が、娘の結婚に目の色を変えて打ち込むのも

無理はないのです・・・




物語はベネット家の御近所に、お金持ちの独身男性ビングリー氏が引っ越して

来た時からスタートします。


舞踏会に現れた彼は 陽気で好感の持てる男性で、美しい長姉のジェインに一目惚れ?

彼の姉妹たちは お高くて田舎の人々を馬鹿にしている様子が伺えるのですが・・・



さらに、最悪だったのは同伴してきたビングリー氏の親友である男性・・・

年収が1万ポンド以上有る大地主で、名前はダーシー氏



彼の年収を 現代の貨幣価値に置き換えると約1億円位だそうです。

不機嫌そうにして、ろくにダンスもしようとしません。他の出席者からリジーとの

ダンスを勧められてもあっさりと( 権高な口調で )お断り・・・

その会話を聞いていたリジーも好い気持ちはしません。 最悪の第一印象 でした。



ビングリー家に招かれたジェインは熱を出して寝込んでしまい、心配したリジーも

看病かたがた ビングリー家に滞在します。滞在中にもダーシー氏と話す機会はあっても、

やはり高慢な態度は好きになれません。



その頃、ベネット家に、遠縁の コ リ ン ズ 氏 が訪問します。このコリンズ氏は

牧師で ベネット家の財産を相続する立場にある男性ですが、訪問の目的はベネット家の

娘達の内から 誰かを妻に迎えようとするためでした。



同じ頃、近くの町に国民軍の連隊が駐屯することになり、将校の一人とベネット家の

娘達が親しくなります。彼の名はウィッカム、ハンサムで社交的なイイ男。


しかも、ダーシー氏と古くからの知り合いらしいのですが、双方険悪な雰囲気が・・・???

ダーシーの為に 自分の将来の設計図を台無しにされたとリジーに告げるウィッカム。

リジーは益々ダーシー氏のことが嫌いになります・・・・・




この物語は全部で61章ありますが、大体ここまでで3分の1位かな?

登場人物は非常に多く、全部で 3 0 人 以 上 ・・・昔、初めてこの作品を読んだとき

忘れないように、名前をメモ書きして読んだものです。



ドラマティックな事件は これといって起らないのですが、この辺りまで読むと

面白くて止められなくなりました。



とにかく、登場人物の一人一人のキャラクタが生きているのです



理知的ではあっても皮肉なユーモアの持ち主であるベネット氏は、自分の( 特に下の w )

娘たちの事を「 我が国一番の 馬鹿娘 」と呼んだりもしますし、コリンズ牧師から

プロポーズされて断ったリジーに対しては


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

お母さんは、おまえがコリンズさんのプロポーズを断ったら、二度とおまえの顔

を見たくないと言っている。だがお父さんは、おまえがあんな男と結婚したら、

二度とおまえの顔を見たくない

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


・・・なーんて事を 言っちゃう人ですからね ww



また、ベネット氏から「あんな男」呼ばわりされるコリンズ氏も、

いまどきの表現をすれば「 超 キ モ イ 男 」 ww



リジーに結婚を断られると、今度はリジーの親友の シ ャ ー ロ ッ ト にプロポーズと

いう荒業をやってのけます。



20代の後半( 当時としては嫁き遅れ )になっていたシャーロットは 安定した暮らしと

家庭が欲しいだけの理由で あっさりとOKしてリジーを仰天させます。



さて、長姉ジェインとラブラブ状態だったビングリー氏でしたが、突然新しい家を

引き払って ロンドンに行ってしまいます。 その後は何の便りもなく、彼の妹の

キャロラインから ジェインに、兄は多分もう戻らないし、ダーシーの妹と結婚すれ

ばどうかと みんな思っています、というイヤミな手紙が・・・



しかし、何といっても一番読みごたえが有ったのは、主人公のリジーとダーシーの関係 でしょう。


ダーシーも初めは リジーをそれ程の美人でもないと思ってはいても 何度か会って

話をする内に、その機知に富んだセンス溢れる会話に段々魅かれていくように

なります。けれども、生来のプライドの高さから 無邪気に好意を表現できません

一大決心をして愛を打ち明けたのですが・・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

彼は実に雄弁に語ったが、愛以外にも告白することがあり、どちらかといえば、

プライドに関する告白のほうが雄弁だった。つまり、自分はあなたを愛している

が、身分も家柄も違うので、あきらめるべきではないかと悩み苦しんだというこ

とが、めんめんと述べられた。自分の立派な家柄を傷つけて結婚しようとしてい

るのだから、当然かもしれないが (後略)

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


いやいやいや・・・愛している、という告白のはずが、聞きようによっては

馬 鹿 に さ れ て い る と し か 思 え な い んですが ww




青天の霹靂とも言える 愛の告白をされたリジーはきっぱりと、かつ誇り高く

断ります。しかし、ダメ押しのように

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あなたの親戚の社会的地位の低さを、ぼくが喜ぶと思いますか?

自分より 階級の低い親戚ができることを、ぼくが喜ぶと思いますか?

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


ケンカ売ってんのか?!と怒りがこみ上げてくるようですね ww


確かに事実ではあるのですが、 英 国 の 階 級 社 会 の シ ビ ア さ (現代でも多分にあり)を

考えると やむを得ない面もありまして・・・



このダーシー氏の良さが 読者やリジーに分かってくるのは、このプローポーズを

断られてからになります。



末娘・リディアの駆け落ち騒動、ビングリー氏が戻り ジェインへのプロポーズ・・・

さまざまな出来事の後、リジーはダーシーの愛を受け入れることに・・・




この作品は200年以上前に書かれた作品 です。当時の社会や風俗など、現代とは

異なる部分もありますが、人 の 心 の 機 微 は 変 わ ら な い という事を再認識させて


くれた作品でした。燃え上がるような恋の結果の結婚ではなく、お互いに少しずつ

理解し合って行くさまが 好感が持てます。

この辺りは 極めて良質なラブ・コメディで、読後感がとても好かったな・・・




翻訳については、私が最初に読んだのは新潮社の中野好夫氏でしたが、最近では

各社から出版されていて それぞれ個性がありますね。

ちくま文庫で最近読み直しましたが、これが一番現代的で読みやすいかもしれません。


特に、この作品の書き出しは非常に有名 ですが 訳者によっても・・・・・



It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a

good fortune, must be in want of a wife.


金持ちの独身男性は みんな花嫁募集中にちがいない。

これは 世間一般に認められた真理である。

( ちくま文庫:中野康司訳 )




独身の男性で 財産にもめぐまれているというのであれば、どうしても

妻がなければならぬ、というのは、世のすべてがみとめる真理である

(河出文庫:阿部知二訳)



これだけニュアンスが違いますから。 岩波文庫は少々直訳っぽい感じがしたかな?

パブリックドメインですから、原文もすべてオンラインで読めますので、興味のある

英語に強い方は一読の価値があるかも?


http://www.gutenberg.org/files/1342/1342-h/1342-h.htm




この作品は2度映画化されていますが、映画よりも B B C の ド ラ マ 版 が 最 高 でした。

英国で放映中は、路上から人通りが絶えたといわれる程の出来映えでしたから。



BSでも放映されたそうで、ひょっとしたら あなたも御覧になったかな?

私は友人から借りて観たのですが、DVD2枚組み・5時間ぶっ通しで観ちゃいました 。

どうしても続きが観たくて止められなくて ww  原作を読んでいて 結末は知っているのにね。



その後は当然購入しましたとも! 原作に忠実で 役者さんが皆、演技が上手いんです

今でも折にふれ観て楽しんでいますから。



ああ、今日は随分長くなってしまいました・・・ではでは、この辺で終わりましょう。

またね。



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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