2013年05月24日

『 小 公 女 』 ( by バーネット夫人 ) を 「 ヴィクトリア女王の誕生日 」に読む


こんにちは。しばらく御無沙汰してしまいましたね。

さてさて、5月24日 は 英国ヴィクトリア女王の誕生日になります。


ならば、ヴィクトリア朝を舞台にした作品を・・・と思い、ディケンズよりも先に

思い浮かんだのが何故かこの作品でしたわ。


はい、今日の 読書は『 小 公 女 』  by バーネット夫人



小公女(岩波少年文庫) 432ページ  著者:フランシス・ホジスン・バーネット

今回読み直したのが上記のものですが、他に講談社青い鳥文庫・新潮文庫・福音館古典

童話シリーズなど各版元より出版されています。

バーネット夫人.jpg

↑ 著者のバーネット夫人については、過去の記事でも 夫人作の『 秘 密 の 花 園 』

取り上げましたので 宜しければそちらも参考にして下さいね。


さて、この作品が 一番初めに発表されたのは1888年で、タイトルは 『 セーラ・クルー 』

その後、書き直されて 改題『 小 公 女 』( A Little Princess )と発表されたのが1905年です。


日本も かなり早くから翻訳されていますが、それ以前に発表された 『 小 公 子 』

( Little Lord Fauntleroy )
の邦題に合わせて『小公女』・・・翻訳家の若松賤子氏がつけたものです。



このネーミングセンスは素晴らしいですね。原題が直訳すると「小さな王女」で、

直訳すると何とも単純というか、面白みの無いタイトルを『小公女』とする事で、

この物語の「特別さ」が表現できたと思うな・・・


他では 菊 池 寛 が昭和の初めに訳していますが、そのときの父兄に向けたはしがきが

この物語の核心を突いていますので紹介しておきましょうか。

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

この『小公女』という物語は、『小公子』を書いた米国のバァネット女史が、その

『小公子』の姉妹篇として書いたもので、少年少女読物としては、世界有数のものであります。


『小公子』は、貧乏な少年が、一躍イギリスの貴族の子になるのにひきかえて、この

『小公女』は、金持の少女が、ふいに無一物の孤児(みなしご)になることを書いて

います。しかし、強い正しい心を持っている少年少女は、どんな境遇にいても、敢然

としてその正しさをまげない、ということを、バァネット女史は両面から書いて見せ

たに過ぎないのです。


『小公子』を読んで、何物かを感得された皆さんは、この『小公女』を読んで、また

別な何物かを得られる事と信じます。


★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━━━★

この作品については、アニメ化作品の「小公女セーラ」が有名ですが、取り敢えずは

原作の方のお話、ということでお許し下さいね。


さて、有名な物語ではありますが・・・

主人公はセーラ・クルー。英国の植民地インドに生まれ育った少女です。

父親はクルー大尉という資産家で母親はセーラが生まれた時に亡くなりました。


さて、当時の植民地育ちの子供たちは学校へ行く年頃になると、教育の為に本国・英国へ

送り込まれました。
この物語では時代は特定されていませんが 19世紀の後半、

産業革命を為し終え 世界中に植民地を持ち、しかし貧富の差は激しかった、そんな時代です。


親と別れて暮らす子どもたちが入学するのは 寄 宿 舎 学 校ですね。

物語は、7歳のセーラが父親と共にロンドンのミンチン精華女子学院へ向かうところからスタート。

1939-1.jpg

( 画像引用:『 小 公 女 』1939年製作 名子役シャーリー・テンプル主演  )


この学校の規模は、今回読み直して改めて気がついたのですが、校舎や寮のある学校ではなく、

大きなタウンハウス( 高級な集合住宅タイプの邸宅・地下や屋根裏部屋などがあり、

使用人たちはそこで寝泊り&家事・仕事をします )をそのまま寄宿舎学校に

転用しているのですね。


院長のミンチン先生は典型的な俗物として描かれています。お金持ちにはペコペコと

胡麻をすり、そうでない人は露骨に見下す・・・片腕となって働いているのは 実の妹のアミーリア先生

ミンチン先生からは薄ノロ扱いされていて、確かに余り頭は良くないのですが、

物語の最後で 彼女なりの逆襲にでます ww


さて、セーラはここで特別生として( 行き過ぎるほど過剰に )大切に扱われますが、

それに溺れこんでしまわないキャラクタとして設定されています。


劣等生のアーメンガードや、最年少で手の付けられないロッティ、下働きの孤児のベッキィ

などからも慕われ、フランス語はネィティブ並にペラペラで・・・となると余りにも

優等生過ぎて面白くないのですが、セーラには一風変わったところがありました。


それは想像力、夢見る力と言ってもいいかな? どんな小さな事でも素敵な物語にし

てしまえる能力・・・そう、「お話」がとても上手なの。



これには、意地悪なクラスメートのラヴィニアも認めざるをえません。

まあ、だからこそ、しゃくにさわるのですがw

パパの クルー大尉 はダイヤモンド鉱山事業を始めるという手紙も来て、セーラは益々

将来はお金持ちになりそう、おまけに学院では人気者。


・・・そんな幸福の絶頂期ともいえる或る日、セーラのお誕生日のパーティが開催されます。

楽しいパーティが盛大に繰り広げられている、まさにその時、ミンチン女学院に一人の来客が・・・


それはパパの弁護士さんで、インドでクルー大尉が熱病で亡くなり、

出資したダイヤモンド鉱山事業は失敗に終わり、共同出資した友人も行方不明・・・



つまり、パパは破産して無一文になって死んでしまったのです。

残されたセーラは一文無しの 孤 児 ・・・頼るべき親戚もいません。


これまで、セーラにかけたお金はどうなるの!追い出してやる!とヒステリックに喚く

ミンチン先生に、弁護士さんは、それは世間体が悪いので セーラをここで働かせれば良い、

頭も良い子らしいので大きくなれば教師としても役にたつでしょう、とアドバイス。


・・・その日からセーラの受難の日々は始まります。


美しい持ち物は皆奪われて、部屋は屋根裏部屋。台所の下働きやお使いに、と 一日中

こき使われるはめに・・・


岩波少年文庫版では、全19章あり、セーラーが幸福だったのは初めの7章だけ。

豊かに贅沢な暮らしから、下働きの女中仕事へ。この辺りが永遠の少女小説としての

キモになるのでしょうか。


また、おとなになって読み返して気がつくことも多々ありました。


ミンチン先生の意地悪ぶりも際立っていますが、初めから心の奥底でセーラの事を嫌

っていました。先生自身のコンプレックスを刺激するような・・・優等生で良い子な

のに理解不能な世界を持っているのが、つかみどころなく可愛気が無いように思えたのでしょう。

セーラが単なる金持ちのバカ娘ならば、あれほどまでに憎まなかったかもしれません。



そんな境遇の中で、セーラが自分を見失わないために努力したこと、それはやはり

夢 見 る 力 」・・・バスティーユ牢獄のマリー・アントワネットに例えたり・・・


けれど、現実は苦しいもので、あるクリスマスの日、道を歩いていたセーラは

裕福なお金持ちの子どもから 6ペンスのお金を貰います。

それは、やつれて空腹そうなセーラへの 「 ほ ど こ し 」でした。


かって、セーラが貧しい子どもや乞食の子にほどこしたように・・・

読み返して、セーラの不幸が一番際立っているのがこの部分でしたね。


ところで、屋根裏のセーラの部屋から見える お 隣 の 家 に、あるお金持ちの紳士が引っ

越ししてきました。紳士は顔を見せませんが、何故かターバンを巻いたインド人の

男性と彼のペットのお猿さんまで・・・


あるとき、セーラが 理不尽な仕打ちを受け 食事抜きで空腹なまま眠ったとき・・・

夜、ふと目を覚ますと・・・奇跡が起っていました↓

奇跡.jpg

( 画像引用:DVD『 リトル・プリンセス 』)


そこから、セーラーの運命は目まぐるしく変わり、隣家の紳士は 実はパパのクルー大尉の

友人だった人でした。 彼はずっとセーラを探していたのです。

ダイヤモンド鉱山は成功し、その権利の半分はセーラーのものになることに・・・


ラストはハッピーエンドなのですが、手のひらを返したようにセーラをちやほやし始めた

ミンチン先生をセーラは拒否します。

そんなミンチン先生に対してアミーリア先生は叫びます。

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あの子は賢いし、いい子だったから、もし姉さんがいくらかでも親切にしてやれば

ちゃんと、それにむくいたと思うわ。(中略)あの子が姉さんでは太刀打ちできないほ

ど賢いせいで、最初からずっとあの子が嫌いだったからよ。(中略)


私たちのことなんか、お見通しだったのよ。あんたが心の冷たい俗っぽい女だということも、

私が馬鹿な弱虫だということも、私たちが二人ともいやしくて意地汚くて、

あの子のお金の前にはいつくばってたんだという事も、お金が無くなったとたんに

辛くあたったという事も(中略)


あの子の方は、物乞い同然になっても、小さな公女さまみたいにふるまっていたのに

(中略)本当に小公女さまみたいだったわ!


★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★

逆境の中でも誇り高く、言葉とイマジネーションの力を武器に生きた少女の物語・・・


この年になってから読むと、子ども時代に読んだものとは違った良さを味わうことが

できました。それこそが、名作の名作たる所以なのでしょうね。


なお、何度か 映 像 化(DVD化作品)されていますが、現在のところ比較的入手しや

すいものはコレかな? タイトルは原題に合わせて 『 リ ト ル ・プ リ ン セ ス 』です。



ストーリィは一部改変され、死んだはずの父親が実は生きていた・・・となっていま

すが、現状ではまあまあの作品ではないでしょうか。ヴィクトリア朝の時代考証など

美術やセットも美しいので、背景の雰囲気を充分に楽しむ事もできます。


また、1939年のシャーリー・テンプル主演のものは、やはりハリウッド式にかなり改変されていますね。



それでは、今日はこの辺で・・・またね。

P・S アニメ『小公女セーラ』もDVD化されているみたいですね(全46話)↓





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2013年05月21日

『 星の王子さま 』( by サン・テクジュベリ ) を 「 翼の日 」に読む


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。 5月21日は「翼の日」です。

1927年、大西洋を横断したリンドグレーンが 無事にパリに到着した日。

それでは 同じように翼に乗って旅立ち そのまま 永遠に帰って来なかった彼の為に・・・・・


はい 今日の読書は 『 星 の 王 子 さ ま 』 ( by サン・テクジュベリ )


    星の王子さま

    著者:サン=テクジュベリ/河野万里子訳

    出版社:新潮社

    サイズ:文庫 158ページ  


注:上記は新潮文庫ですが 他に中央公論新社・中公文庫・岩波書店・集英社・みすず書房・

講談社他、多数出版されています。 私が所持しているのは岩波書店のもので 翻訳は

内藤濯のものですが、最近では集英社文庫の 池 澤 夏 樹 氏 の 翻 訳 が評判が良いようです。


著者はサン・テクジュベリ、本名はアントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・

ロジェ・ド・サン=テグジュペリ(1900〜1944)リヨン生まれの貴族出身のフランス人作家であり

航空操縦士。名前が余りにも長すぎるので、ここでは皆に親しまれているニックネームの

サ ン テ ッ ク ス ”と呼びましょうね。

ちなみに、サン=テクジュベリは 彼のになります。



子ども時代のサンテックスはかなりの腕白少年。机の前に座ってじっとしているのが

苦手で、学校の成績は余りよくなかったみたい。特に算数が苦手だったようで、

その為、希望していた海軍の学校にはとうとう受からず。


その後は 短期間美術学校に通いましたが・・・絵の才能の方は、残念ながら

認められませんでした。  
 
 

兵役についたのは 20歳のときです。 航空隊に配属され 操縦士の資格を取り 22歳で除隊。

その後、幾つか職業についてもパッとせず、気がついたらフィアンセにも

逃げられていました。


運命が変わったのは ラテコエール社の飛行士に応募して採用されてから

サンテックの仕事はアフリカや南米への航空郵便飛行士、その後、仕事の経験を

生かして書いた『 南 方 郵 便 機 』『 夜 間 飛 行 』 『 人 間 の 土 地 』で作家デビュー。


けれども、それで暮らし向きが良くなったわけではありません。 遅筆だし 相変わらず

人間関係は不器用だし・・・

また、アフリカのリビア砂漠に墜落する事故や、アメリカ大陸横断飛行の離陸に

失敗して大怪我をしたり・・・。



当時の飛行機は 故障が多かったので、数機で変態を組んで飛びのが慣例でした。

ただ幾つかの中継基地は 一人で担当する決まりで サンテックスは その時に砂漠に

住む部族とかなり親しくなったようです。


こうした経験が彼に作品を書かせるエネルギーとなったのでしょう。



『 星の王子さま 』で主人公が初めて王子さまに出会うのも 砂 漠 でしたから。



そして第二次世界大戦、パリがナチスに占領されたときに辛うじて アメリカに亡命・・・


『 星の王子さま 』が書かれたのはこの 亡 命 時 代 でした。
星の王子さま公式HP2.jpg
(画像引用:星の王子さま公式HP http://www.lepetitprince.co.jp/contents.html


しかし、辛うじて亡命できても、フランス人同士の派閥争いや中傷合戦・・・

正直で世渡り下手なサンテックスは傷つき疲れ果てたのでしょう。再び戦場の北アフリカ戦線へ

亡命先で要領よく宣伝活動をしていれば、もっと楽も出来たのに・・・

この時、38歳。 飛 行 機 乗 り と し て は も う 限 界 だったのですが、

やはり使命感もあったのでしょうか?



1944年7月31日。コルシカ島から一人乗りの偵察機で飛び立ったサンテックス。

与えられた任務は 高度1万メートルから敵地を撮影すること。

それがサンテックスの最後でした。 地 中 海 上 空 で 行 方 不 明 の ま ま ・・・


その後、半世紀以上を過ぎて1982年に、複数の撃墜された飛行機の残骸が 引き揚げられ

2000年5月には、その回収物の残骸に(サンテックスの乗った)

ロッキードF-58の記帳番号と同一のものがあり、彼の乗機である事が確認されました。



・・・彼は空から海に還っていったのだと思いましょうね。



私は『星の王子さま』はサンテックスの遺書だと感じています。


ストーリーはいたってシンプル。物語は 飛 行 士 が 思 い 出 を 語 る 形 で 進 行 します。


砂漠に不時着した飛行機のパイロットが、遠い小さな星から来たという

金色の髪をした不思議な少年と出会い 彼とさまざまな話をする、それだけの物語なのですが

・・・そう、ただそれだけの。

星の王子さま公式HP.jpg

(画像引用:星の王子さま公式HPhttp://www.lepetitprince.co.jp/contents.html


「ねえ、ひつじの絵を描いてよ」と頼まれて、有り合わせの紙に 何頭かの羊の絵を

描きますが 彼の気に入らない。やけになって飛行士は、箱の絵を描いて、あんたの

欲しい羊はこの中にいると手渡したら、王子さまは「こんなのがほしかった」と大喜び・・・



そうして、王子さまはこれまでの旅を語り始めます。

王子の星で バ ラ が咲いたこと・・・初めてのバラに王子は感激して世話をしても

強気なバラは 可愛げもなく王子に感謝もしません。


このバラは・・・愛を素直に表現できなかっただけなのですが・・・


うちひしがれた王子は星々をめぐる旅に出ます。


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ぼくは、どんなことになっても、花から逃げたりしちゃいけなかったんだ。

ずるそうなふるまいはしているけれども、根は、やさしいんだということを

くみとらなきゃいけなかったんだ

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


後になってから、王子さまは自分もバラも、自 己 を 中 心 に 置 き 過 ぎ て い た

と気づくのですが・・・そうして様々な星を旅して行く王子さま。


「王さまの星」 「うぬぼれ男の星」 「呑み助の星」 「実業屋の星」 「点灯夫の星」・・・



どの星に住んでいる人も 王子さまにはこっけいに見えました。ただ、点灯夫の星は

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

ぼくが、こっけいに見えないひとといったら、あの人きりだ。それも、あの人が

じぶんのことでなく、ほかのことを考えているからだろう

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


そうして、「地理学者の星」で王子さまは地球の事を教えて貰います。

7つ目の星、地球で王子さまは5000本のバラが咲いている庭を見つけます。


自分があれ程までに愛したバラが、この星では何の変哲もない花に過ぎない事を

知り、ショックを受けるのですが・・・


そこに現れたのは一匹のキツネ。キツネは王子に話しかけます。そうして王子さまは、

愛 は 時 間 に よ っ て 育 ま れ る と教えられます。共に過ごした時間があるから

こそ、かえがいのない唯一の存在になることを
・・・


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に

見えないんだよ。(中略)

人間っていうものは、この大切なことを忘れてるんだよ。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★



星の王子さまの言葉は、そのまま サンテックスの言葉なんだよね。

あるいは、サンテックスの 心 の 声 かもしれません。

ずっとずっと 内側に封印してきた想いかもしれません。


世 界 は 心 に よ っ て 、違 う 姿 を 見 せ る ・・・月夜の砂漠が美しいのは

砂漠が どこかに井戸を隠しているから・・・



やがて、地球から去っていく王子さま。

王子さまと交わした様々な話、それはおとなたちには、誰にもそれがどんなに

大切なことか決して分からない・・・



もしも、あなたが未読であるならば、この作品は大人こそ読むべき作品であると

理解できると思います。 そして、既にお読みになっていたら、サンテックスの

『人 間 の 土 地 』 をぜひ・・・あの作品は、『星の王子さま』の大人版とも読めるも

のですから・・・


それでは、今日はこの辺で・・・またね。




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2013年05月20日

『 森は生きている 』( by マルシャーク) を 「森林の日」に 読む


こんにちは、また来て下さってありがとう。5月20日は「 森林の日 」です。

森林・・・森・・・そうですね、この作品しかないかな?

はい 今日の 読書は 『 森は生きている 』 ( by マルシャーク)


    森は生きている

    著者:サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャーク/湯浅芳子訳

    出版社:岩波書店

    サイズ:岩波少年文庫 233ページ  


マルシャーク(1887〜1964)ロシア南西部のヴォロネジ市生まれ。詩人であり哲学者

であり翻訳家であり、優れた児童文学者であった人。この『森は生きている』

は、戦後1953年 湯浅芳子氏が翻訳して 岩波書店より出版され 重版を重ねています。


原題は『 十 二 の 月 』 ・・・1年の1月〜12月の12の月のことです。


大晦日の晩に、1月から12月までの 月の精たちが 森に勢揃いする というロシア・スラブ地方の

伝説を元にした 児 童 劇 で、この作品は、脚本をそのまま出版したもの。


よく上演される作品でもありますので、舞台( 歌が楽しい! )を見ても

楽しいと思いますし、普通に 戯曲( シナリオ)として読んでも充分に楽しめると思います。

子ども時代に読んだ時にも、特に違和感なく楽しめました。マルシャーク

は詩人なので、セリフだけではなく、ト書きも詩情豊に物語風に描かれていますから



しかし、タイトルを『森は生きている』と邦訳した湯浅氏のセンスは素晴らしいね。

3月18日にお話した『リトル・ウィメン』を『若草物語』と同じ位に優れた

邦訳だと思います。


また、今回読み直して改めて気がついたのですが、この物語の登場人物たちには

「名前」が付いていないんですね。


老 婆 」 「 む す め 」 「 ま ま む す め 」 「老兵士」 (14歳の)女 王

博 士 」「総理大臣」「女官長」「検事」「西の国の大使」「東の国の大使」などなど。


主人公のはずの「ままむすめ」さえも名前が付けられていないのは面白い・・・

苦労をして、継母にこき使われてきた「ままむすめ」が最後には幸福になるという

ハッピーエンドのシンデレラ・ストーリーです。



さて・・・物語はわがままで高慢な女王様が大晦日の日に、新年のパーティのために

マ ツ ユ キ ソ ウ が 欲しいと言い出した事から始まります。

マツユキソウは春( 早春 )に咲く花、存在するはずの無い花を手に入れようと 女王

は国中にお触れを出します。

マツユキソウを摘んできた者には、かご一杯の金貨や上等のシューバ(外套)などが

賜与されると・・・


よくばりな「老婆」は自分の「むすめ」には行かせず「ままむすめ」に摘んで来いと

大晦日の寒い夜に森に追いやります・・・



★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

きょうはいったい、どんな日だ? 古い年がおしまいになって、新しい年がはじまるんだよ。

(中略)こんな日には、この世にいろんなことがあるもんだって──

(中略)おおみそかには、それどころじゃない、もっと変わったことだってあるんだよ(中略)

おじいさんの、そのまたおじいさんというのが、ちょうどおおみそかの晩に、

1月から12月までの、のこらずの月に出くわしたというんだ。(中略)

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


そうして出かけた大晦日の深夜に・・・「ままむすめ」は焚き火を囲んで歌っている

不思議な12人の人たち(年齢はさまざまな)に出会います。

彼らこそ、12の月の精たちでした。

森1.jpg

( 画像引用:youtube Двенадцать месяцев 1 серия ロシアの劇団による上演)


「ままむすめ」を哀れんだ彼らは1時間だけ 森を春に してくれます。4月の精の

担当月で ww まだ若い彼は、「ままむすめ」に婚約の印の 指 輪 までプレゼントして

くれるのでした。そうして、自分たちの事は誰にも言わないようにと・・・


季節が12月から1月、2月、3月と見る見る内に変わり、森はいま4月です!

春を告げるマツユキソウの花が一杯咲き乱れています。



小学生時代にこの物語を読んだとき、私はマツユキソウがどんな花か知りません

でした。この花ですね↓ ヨーロッパ原産種の可憐な花、今ではスノーフレーク

もしくはスノードロップと呼ばれているのではないかしら?鈴蘭水仙とも。

マツユキソウ2.jpg


無事にマツユキソウを籠一杯つんで帰った「ままむすめ」に驚いた老婆たち。

自分たちが摘んだような顔をして早速、新年に御殿に出向くのですが、

女王から、森の咲いている場所に案内せよと命令されてしまいます

困った老婆達は再び女王様御一行と、「ままむすめ」をだまして森に案内させる

のですが・・・



もう一度、12の月たちには会えるのでしょうか? 頼みの綱の指輪は、こっそりと

「むすめ」に奪われ、さらに女王の手に渡ってしまいます。


マツユキソウの咲いている場所に案内しろ、さもないと指輪を捨ててしまうと脅かされ、

12の月の事を話さない「ままむすめ」に業を煮やした女王は 氷の池に指輪を

投げ捨ててしまいます・・・



さて、そこから 舞 台 は め ま ぐ る し く 変 化 します。


見る見る内に、季節が冬からマツユキソウの花咲く へ、そしてシューバを脱ぎ

捨てた 、台風の吹き荒れる を過ぎて 再び寒い寒いが・・・

お付きのものは皆逃げ出してしまい 残されたのは女王と博士だけでした・・・




この物語は、完全な勧善懲悪物語とも言えない所があります。多分、女王のキャラクタと

「ままむすめ」のキャラクタを対比してあるからでしょうが・・・


どちらも両親のいない「みなしご」でありながら、片方は明るく素直な働き者で

もう片方は 国一番の恵まれた少女でありながら、傲慢で横暴、思いやりもなく

そして誰からも愛されてはいません。読んでいると、それはよく分かります。


そして、彼女は「 命 令 」はできても、人に頭を下げて「 お 願 い 」をすることがで

きませんでした。「ままむすめ」や12の月たちに「 御殿に返して 」と謙虚な気持ちで

頼むことが出来たのは、森の寒さに凍え、生まれて初めて大変な思いをして

成長する事ができたから・・・


子ども時代の読書感想文には 「 人間は 自 然 に 反 す る こ と を望んではいけない、と思います」

と書いた記憶もありますけれども・・・女王については単にイヤな奴としか思わなかったなあww


そして意地悪な「老婆」とその「むすめ」はといえば・・・?

そうね、少しは反省すれば人間に戻れるんじゃない?

12の月たちもそう言っていたし ww


さてさて、それでは今日はこの辺で・・・またね。

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