2013年05月17日

『 荊 の 城 』( by サラ・ウォーターズ ) を 「 国際ホモフォビアの日 」に読む


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


5月17日はですね、「IDAHO」とも略されていますが、 同 性 愛 に対する嫌悪を

無くしましょうという運動の記念日です。 WHO世界保健機構で、国際障害疾病分類から

同性愛を 削除することが決議された日、1990年5月17日を記念して定められました。


えっ、それまでは“ 疾病 ”扱いだったのか、と驚かれるかもしれませんが・・・


私自身はノーマルですが、人を愛する気持ちの1つのパターン?として捉えています。

積極的に推進する気持ちは無いけれど、迫害する気持ちもありません。


で、今日の読書ですが、三島由紀夫にしようかとも思ったのですが、敢えて この

作品を・・・だって面白いんだもの!


はい 今日の 読書は 『 荊 の 城 』 by サラ・ウォーターズ


    荊の城  上・下  ( ← こちらは上巻 )

    著者:サラ・ウォーターズ / 中村有希 訳

    出版社:東京創元社

    サイズ:文庫  (上)434ページ (下)420ページ


著者は英国の作家 サ ラ ・ ウ ォー タ ー ズ (1966〜)。 2作目の長編 『 半 身 』が日本で

も大変に話題になり、「このミステリーがすごい!」海外編ベストでトップを始めとして、

各ミステリベストの 海外部門で高く評価されたのは まだ記憶に新しいのではないかしら?


非常に力量のある方で、以降は本作をはじめ 『 夜 愁 』 『 エアーズ家の没落 』など、皆傑作と

いえるものばかり。多作ではないけれど 確実に読者を楽しませる力量を持った作家です。



私自身も『半身』以来のファンです。『半身』については、これがミステリか?という声

も多々あったようですが・・・ヴィクトリア朝を舞台とした ゴシック調の雰囲気に

幻惑されてしまうからね。 しかし、その骨格は本格ミステリと呼べるものでしたね。

美しい謎がラストで論理的に解けて行くのですから



『 荊の城 』も、名探偵の登場しない美しいミステリとも読めるかもしれません。

但し、『半身』よりもはるかにドラマティックで 物 語 の 起 伏 が 豊 か であり、上下2巻

けっこうなページ数にも拘らず 退屈せずに一気読みできた作品でした。



ディケンズの作品群に共通した面白さがあり、著者自身もディケンズを意識したのでは?と

思われる部分が幾つかありました。また、当時の生活の 日常描写や食事・衣裳・社会風俗

精神病院の実態(!)など 綿密な時代考証で 丁寧に描かれているので、

読者は とてもリアルに物語の中に入っていけます。



さて、物語には 二 人 の ヒ ロ イ ン が登場します。全く異なったキャラクタであり

生まれも育ちも正反対の・・・


片方はスーザン( ス ウ )・トリンダー17歳、 ロンドン下町のラント街で生まれ育った少女。

実の母は 絞首刑で亡くなったと教えられ、育ての親のサクスビー夫人や、故買屋で

錠前作りのイッブス親方たちと一緒に暮らしています。

読み書きは出来ませんが、特技は スリと 錠前を開ける事 ww



サクスビー夫人は託児所や養子の斡旋を生業にしています。

かっては スウも預けられた赤ん坊の一人でした。

夫人は、スウの実の母親が刑死した後も「お前は私の宝物」と言って、他の子ども達とは

別格扱いでスウを大切に育ててくれました。スウも「母ちゃん」と呼んで慕っています。




もう片方は、モード・リリー。スウと同い年です。 莫大な遺産の女相続人であり、

辺鄙な地のブレア( 荊 )城で 伯 父 と暮らしています。 母親は若い頃に身を持ち崩し

心療院で亡くなりました。モード自身も幼少時代は心療院で暮らし、後に伯父に引き取られました。

現在は、蔵書家であり 本のディレッタントのような伯父の 秘書的な役割を果たしています。

城館から遠くへは出た事もなく孤独に過ごしています。




この二人が主人公なんですが、彼女達が出会ってしまったとき、運命の歯車が

ゆっくりと、そして終盤に向けては めまぐるしく廻り始めます。




それでは、もう一人 重要人物に登場してもらいましょうか。


リチャード・リヴァーズ。 彼は< 紳 士 >ジェントルマンと呼ばれています。

零落した貴族の息子と思われる、優れた容姿にエチケットもマナーもわきまえて

絵画の腕はプロ並で、おまけにフランス語にも長けています。

で、本職はというと・・・ギャンブラー& 詐 欺 師 ww




ある夜、突然に訪れた彼はスウに儲け話を持ちかけます。

目を付けている深窓の令嬢をたぶらかして結婚するつもりなので、

その手助けをして欲しいと。 要するに 結婚詐欺やらかす気?


彼女は莫大な遺産の相続人ではあるが、“ 結婚しないと相続できない ”という条件

が付いている・・・未成年だし、手っ取り早く結婚に持ち込むには、駆け落ちす

るしかないので、スウに侍女として傍にいてもらい 彼女の気持ちを自分に向ける

ように便宜を図って欲しい
・・・分け前もちゃんとやるから。


莫大な財産を独り占めする為に、正式に結婚してから 令 嬢 を 精 神 病 院 に 入 れ て

一 生 閉 じ 込 め て お く 手はずは整っているとのこと・・・



迷った末に、スウは母ちゃんとも相談して、この“ 仕 事 ”を引き受けることに・・・



<紳士>から、貴婦人に仕える侍女の特訓を受け、生まれて初めて一人前の大仕事を

する為にロンドンを離れてブレア城に向かうスウ。



人里離れた辺鄙な場所に建つ 城館に住むのは気難しい老人と多くの使用人たち、

そして 孤独な令嬢モード、少女らしい楽しみも無く、たまの訪問者は伯父の友人たちだけ。

モードは彼らの前で蔵書を朗読するのが慣わしでした。

しかし、この蔵書というのがトンデモない代物でして・・・ww



同い年の二人が、侍女と雇用者の立場は違えども 親しくなるのに時間はかかりませんでした。

しかし、親しくなればなるほど、スウの心は揺れ始めます。

想像していたよりも 遥かに知的で美しく優しいモードを、騙して精神病院に閉じ込めてしまって

良いものだろうか、と。



やがて<紳士>が訪れて、“作戦”が開始されます。二人の様子に密かに心を痛めるスウ。

もうその時には、単なる 友 情 以 上 の 気 持 ち をモードに対して抱き始めてもいたから・・・



さあ、この1万ポンド以上の遺産を賭けた大仕事は上手くいくのか? それとも?



結局、駆け落ちは成功し スウも同行します。<紳士>とモードは 小さな教会で結婚式を

挙げたのですが・・・



実は、 こ の 物 語 の 本 当 の 面 白 さ は こ こ か ら 始 ま り ま す



全体で 三部構成になっていますが、第一部は ス ウ の 視 点 で、第二部は モ ー ド の 視 点 で、

そして 第三部は 二 人 の 視 点 で・・・謎解きの部分になります。


視点が変わると 物語の様相が 全く逆のものになることに驚愕、しかし、それだけではなく

実は、この作品は・・・ヴィクトリア朝を舞台とした一種の 「 取 替 え ば や 物 語 」・・・



それも、二重三重に ツ ィ ス ト の 効 い た ドラマティックストーリー。



えっ?なんで?  嘘でしょ!   おー、そう来たか! ・・・と読みながらも

前に戻って 読み直して、改めて納得したりする事も・・・



この作品は英国BBC放送によってドラマ化もされています。DVD2枚組みで

販売もされていますので 早速購入しましたとも!

原題です.jpg

(画像引用元:BBC公式HPより)

細部で省略・構成しなおした部分もありますが、ほぼ原作に忠実に描かれ、読者的にも

充分に満足できるものでした。


女優さんの演技も上手く、( 日本ならばアイドル系の 可愛いだけのタレントを起用するかも?)

サクスビー夫人は イ メ ル ダ ・ ス タ ウ ン ト ン が演じています。


構成が 小説よりも分かりやすく 出来ていて、ストーリィを知っているはずの

私でさえ 1枚目のディスクの終わりには・・・次はどうなる?と急いで

2枚目のディスクを入れ直したほどでした ww


原作も映像も、 ヴィクトリア朝の 雰囲気 にどっぷりとつかれる事は間違いなしの

成功作と言えるでしょう。


さてさて、今日はこの辺で・・・またね。


( あーっ、DVDはプレミアムが付いてしまっている!・・・レンタルで置いてあるショップが

 あればいいのだけれど! 重版しないのかなあ・・)



マクロミルへ登録



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月16日

『 尼僧ヨアンナ 』( by ヤロスワフ・イバシュキェビチ )を 「 性交禁忌の日 」に読む


こんにちは、また来て下さってありがとう。


5月16日は・・・えっと、タイトル通りの日です w 江戸時代の艶本『艶話枕筥』に、

5月16日は 性交禁忌の日で 禁忌を破ると3年以内に死ぬと 書かれていた

為なんですが。 (但し、旧暦)


さて、そんな日にふさわしい本となると・・・コレかなあ?


はい 今日の 読書は 『 尼僧ヨアンナ 』 by ヤロスワフ・イバシュキェビチ


    尼僧ヨアンナ

    著者:ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ

    出版社:岩波書店

    サイズ:文庫 274ページ


著者はヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ(1894〜1980)ウクライナ生まれの

ポーランド人作家&詩人です。 代表作として挙げられるのが、映画化もされた

『 尼僧ヨアンナ 』や『 白樺の林 』など。


私の場合、この作家の作品で読んでいるのは『 尼僧〜 』のみ。きっかけは、 映 画 からでした。

中学生時代に 兄の友人(大学生)に誘われて観たのですが、彼の解説と 私の受けた印象

が全く違っていたのをよく覚えています。


ハ リ ウ ッ ド 的 な 陽 気 さ は 皆 無 でしたが、アートシアター系と言うほど難解ではなく

私がこの映画から受けた印象は・・・まるで、カルメンとドン・ホセのような 恋愛物語・・・でした。


自分を犠牲にして誰かを救うという、非常に崇高な行為が、恋愛がタブーである

神 父 と 尼 僧 との間であるだけに、恋そのものと感じられたのです。

命を賭けた神父と尼僧の・・・・・。


当時は意識しませんでしたが、ファム・ファタール( 運命の女 )に出会ってしまい

身を滅ぼす男の物語だと今では思っています。



・・・舞台はポーランドのルーディンという小さな村です。

村には尼僧院があり、美しい院長の ヨ ア ン ナ は村人達の信頼を集めていました。


ところが、ヨアンナは悪魔に取り憑かれ奇妙なダンスを踊るようになり 他の尼僧達も

同じように狂ったように悪魔のダンスを踊り始めたという・・・

特にヨアンナには幾つもの悪魔が取り付き、どんな悪魔祓いも効果がないとか・・・

尼僧ヨアンナ。jpg.png

( 画像引用: DVD 『尼僧ヨアンナ』 中央がヨアンナ この女優さんは監督の奥様です )


その調査と悪魔祓いの為に ス ー リ ン 神 父 が派遣されて来ます。


しかし、実際に修道院を訪問して出会ったヨアンナは、背中に瘤があるけれども

淑やかな美貌の尼僧でした。

ところが、いったん悪魔が乗り移ると野獣のように唸り、呪いの言葉を吐き散らすように。


最初は、教理に則り 公開で悪魔祓いの儀式を行うのですが効果は無し・・・

尼僧ヨアンナ4.jpg


( 画像引用: DVD 『尼僧ヨアンナ』 )


次には、ヨアンナとの一対一で苦行を続けることにしました。しかし、ヨアンナの話を

聞く内に心に迷いも生じて来ます。 彼女自身が悪魔を求めているのだと・・・・


スーリンは屋根裏部屋にこもり 我が身を鞭打ち続けます・・・しかし、二人が共に

激しい痛みを受けることで逆に親和感が増し始め、いつしか悦楽を伴うように・・・


スーリン神父は自信を失い、ユダヤ教の司祭に相談したりもするのですが、逆に

悩みが深くなる破目に陥ります。


もう、ヨアンナを救う為には 自分がその犠牲になるしかないと思うようになりますが・・・

そして・・・ヨアンナを抱きしめたスーリン神父は 自らの体内に悪魔が乗り移って来るのを

はっきりと認識します。それは非常苦しみを伴いますが、ヨアンナを救ったという

満足感がありました・・・悪魔はスーリン神父にささやきます。


もう一度ヨアンナの体に戻ると・・・何としてでも 阻止したいスーリン神父は

悪 魔 を 受 け 入 れ 身 を 捧 げ る ことを誓います。


・・・自らの内側に 悪魔を永遠に閉じ込める為に、そうして、従者の少年を二人殺害してしまうのです・・・



スーリン神父は処刑されましたが、ヨアンナは正気に戻り、その後も長く修道院で

院長を勤めたとか・・・

映画では、最後に鐘堂の鐘が鳴り響き、そしてラスト・・・



もう お気づきになったかもしれませんが、この作品は17世紀のフランスの小都市ルーダンの修道院で

実際に起きた 「 ル ー ダ ン の 悪 魔 憑 き 事 件 」(尼僧達の集団ヒステリー事件)を

モデルにしています。 この時には、聖ペテロ会の司祭、ウルバン・グランディエが火刑に処されました。



この作品が執筆されたのは1943年、ナチス占領下のワルシャワでした。

出版されたのが1946年・・・旧ソ連の支配下で。


世界的に有名になったのは カ ヴ ァ レ ロ ヴ ィ ッ チ 監 督 によって 映画化されてからです。

映画が 初めて日本で公開されたのが1962年、当時はスターリンの圧制に苦しむポーランド

の比喩
として高く評価されたようですね。


後に1974年の『 エクソシスト 』の元ネタになったとも言われ、現代でもカルト的な

人気を持つ映画でもあります。


しかし、元祖・悪魔祓い映画としてよりも、もっと 人 間 の 根 源 的 な も の を感じさせてくれる

作品に思えるのですが・・・ヒントとしては、原作・映画ともに登場した

マ ウ ー ゴ ー ジ ャ タ という尼僧にあります。


尼僧の身でありながら、しょっちゅう村の居酒屋に行って お酒を呑んだりダンスをしたり、

あろうことか 知り合いになった田舎貴族の男性とベッドインまで・・・!


結局は 捨てられて大泣きするのですが、彼 女 だ け に は 何 故 か 悪 魔 が 取 り 憑 か な い

のですよ・・・。


何故だかは、あなたも当然お分かりになるでしょう?

まあ、トンデモシスターではありますが、私は彼女がとても好きです ww


さてと・・・今日はこの辺で・・・またね。



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月13日

「 別れ話の日 」に 読む 『 五月の霜 』  by アントニア・ホワイト


こんにちは、また来て下さってありがとう。

5月13日は「 別 れ 話 の 日 」・・・えっ、そんな日があるの?と驚きましたか?


バレンタイン・デーから88日目、俗に言う「 八 十 八 夜 の 別 れ 霜 」で、別れ話を切り出すには

最適の日 ww だそうです。英語では「メイ・ストームデー」( 五月の嵐の日 )ですね。



それでは、今日のお話の主人公は 誰から別れ話をもちかけられたかというと・・・

・・・ 神 さ ま からです。  えっ?


はい、今日の読書は 『 五月の霜 』 by アントニア・ホワイト


    五月の霜

    著者:アントニア・ホワイト

    出版社:みすず書房

    サイズ: 単行本 256ページ


著者はアントニア・ホワイト(1889〜1980) 日本では殆ど知られてはいませんが

英国では 非常に高く評価されて人気のある作家です。位置付けとしては、

シャーロット・ブロンテの後継者・・・と目されている といえば分かりやすいでしょうか。



父親はパブリック・スクール、セント・ポール校の古典教師で、英国国教会から

カトリックへの改宗者でした




この作品は、著者の若き日を描いた自伝的作品であり、「 少 女 の ス ク ー ル ・ ス ト ー リ ー の

中 で 、 古 典 と し て 残 る 唯 一 の 作 品 」
( by エリザベス・ボーエン)と賞賛されています。

発表年度は 1933年、物語の舞台は 約100年ほど前の 英国の 修 道 院 付 属 の 寄 宿 女 学 校 ・・・

美しくて そして残酷な物語でした。




物語は ヒロインのナンダ・グレイが9歳のとき、父親に連れられてカトリックの

五傷修道院(聖心女子修道会がモデル?)付属寄宿女学校に入学するところから

スタートします。



改宗した父と同じく、カトリックに改宗したナンダは「敬虔なカトリック信者」に

なるために 教理問答の学習に努め、学校に溶け込むように努力はするものの・・・

ナンダは すぐに 自分がこの寄宿学校では異分子であることを思い知らされます。



まず、ナンダの家が何代も続くカトリックの家系ではないこと・・・

改宗して間もない自分は、この学校ではまだ 「 異 教 徒 」 という目で見られ、

まるで 粗探しをされるように感じることも多いのですが・・・



一生懸命努力して良い成績を取るように頑張るナンダに対して、教師である

マザー・フランシスの言った言葉は印象深いものでした。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あなたは自分が立派な模範生だと思っているのではありませんか?(中略)

善にもいろいろあるのです。 (中略)どの方も聖人になる以前は罪人でした。

(中略)神様は こせこせ、びくびくとした善には見向きもなさいません

神様がお求めになるのは、本当の根強い欠点を克服したところに生まれる本物の

善なのです。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


うーむ・・・宗教的な事は抜きにして、意味は分からないでもないなあ。

頭で(理屈で)考えて何かを為すこと・良い子になろうと考えて努力すること、

もう、それ自体がダメってことかしら? もっと自然体にならなければいけないの

でしょうか? あれこれ考えているようでは、その時点でアウト?



シスターの何気ない一言ではありますが、宗教の本質を突いているのかもしれません



友人のレオニーは、規則破りの常習犯でありながらも、修道女たちからは信用され

叱られる事も殆どありません。不思議がるナンダにレオニーはこう言います。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

あなたはきちんと髪を洗って髪をとかして洗礼を受けて堅信を施されたもと異教徒。

でも異教徒であることに変わりない

それに比べて私は大丈夫。(中略)血の問題なのよ。(中略)

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


日本人で仏教徒の私から見れば、キリスト教の宗派の違いなど よく分からないし

同じキリスト教徒なのに「異教徒」と呼ぶのが奇妙にも思われ、そこまで排他的に

なるのが不思議な気もします。まあ、歴史的にもキリスト教の宗教がらみの戦争

は非常に多かったのですけれど。「神」の名において どれほどの犠牲者が出たか

ということも・・・




また、ナンダの級友達は英国だけではなく、スペイン・フランス・ドイツ国籍の

少女も多く、上流社会に属する家庭の子女が殆どでした。


当然のように、自宅には執事を始めとする何人もの使用人を抱え、自分用の馬も

所有しているような裕福な家庭ばかり。


それに比べて、ナンダは中産階級の出身であり、周囲の皆に話を合わせようとしても

上手くいかないことも多かったりして ww



それでもナンダは 新しい環境に適応しようと健気に頑張ります。

カトリックの宗教行事の美しさに魅せられ、信仰を深めていくのですが、同時に

教師たちへの反発や 学校の体制への疑問も生まれてきます。



にもかかわらず・・・・・



父親から、月謝の高いこの学校から 他の教育レベルの高い学校への転校を打診されたとき

ナンダは恐怖に襲われます。



もうこの学校で過ごす以外のことは考えられない。

張り詰めた強烈な神の意志の支配する リッピントンの中でしか生きられないとまで

思います。まるで自分自身がカトリック教会の一部になったように。

自分自身の本性の 全てに染み込んでしまったように



しかし、15歳になったとき その希望は打ち砕かれます。

退 学 」という、ナンダにとっては不本意な処置によって・・・



ナンダがこっそりと書いていた幼い「 小説 」が見つかってしまったから。

それはカトリックの教えを逸脱した 許しがたい不道徳であったから・・・



退学になる前の休暇中に、ナンダは修道女マザー・パーシヴァルから こんな

アドバイスの手紙を貰います。


★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★


わたしはあなたの中に別の物が育つのも見ました。自己の意志と自己への愛とい

う固い小さな芯です。以前にも言いましたが、あらゆる意志は神の意志と一体に

なるために、完全に砕かれ作りかえられなければなりません。ほかの道はないの

です。それが、ここリッピントンでわたしたちがおこなおうとしている教育なのです。

★━━━━━━━━━━━━━【一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━━★


これが教育なの? これがキリスト教の教えなの?

異教徒である私には理解しがたいものがあるのですが・・・「 寛容 」や「 許し 」は

与えられないのでしょうか?



『 五月の霜 』というタイトル通りに、若草の萌え出る美しい少女の季節に

余りにも残酷な 冷たい試練を受けて、この物語は終わります。



ヒロインのナンダにとっては、衝撃的で残酷な終わり方ではありましたが、

それでも私は、この作品の持つ美しさ( カトリックの典礼の厳粛さや様式美 )に

魅せられて 繰り返し読まずにはいられない作品のひとつでもあります。



馴染みの薄い作品だろうなあとは思いましたが、やはりあなたにお話したくて

今日のテーマに取り上げてみたの。



この作品は、著者の自伝シリーズ第一作であり この後 “The Lost Traveller”

“Sugar House” 最後に “Beyond the Glass ”と続きます。


退学になってからのナンダの、その後が綴られているそうですが、残念ながら

翻訳はされていません。 うーん、頑張って原書で読んでみようかとも思うのですが・・・

読めるかなあ?


さてさて、それでは今日はこの辺で・・・またね。





posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。