2013年04月23日

「サン・ジョルディの日」に読む 『 秘 密 の 花 園 』 by バーネット夫人


こんにちは、また来て下さってありがとう。


4月23日は「 サン・ジョルディの日 」です。


記念日としての定着はイマイチなんですが、スペインの聖人にちなんで、

女性から男性には本を、男性から女性には 薔 薇 の 花 を贈り合うというもの。


出版業界( 書店 )のキャンペーンの一環として始まったそうですが、

正直いって 本を贈るのは難しいよね。


でも、薔薇の花なら・・・? なので 今日は 薔薇にちなんだ作品を・・・


まず最初に思い浮かんだのは 映画化もされた名作『 薔薇の名前 』

ボーエンの『 あの薔薇を見てよ 』、フォークナーの『 エミリーに薔薇を 』・・・

日本では余り・・・田辺聖子氏の『 薔薇の雨 』かな? 年下の男性との別れを

美しく描いた好短編でしたが、今日はやはりこの作品を・・・

薔薇の花が美しく咲く庭が登場しますから。



はい 今日の 読書は 『 秘 密 の 花 園 』  by バーネット夫人



  光文社・古典新訳文庫

  フランシス・エリザ・バーネット

  訳者:土屋京子

  サイズ:文庫 507ページ




三浦しをん氏にも 同名の作品があるけれども・・・今日はこの作品です。


著者はフランシス・エリザ・バーネット(1849〜1924)なんだけど

日本ではずっと “ バーネット夫人 ”として知られていたよね。

『 小公子 』 『 小公女 』そして『 秘密の花園 』の作者として、余りにも有名な人。


おそらくは、あなたも子ども時代に 上記の作品をお読みになった事が

あると思うのですが・・・


『 秘密の花園 』については、私自身は、小学生の頃に 子ども向きにリライト

されたものを最初に読み、その後は、岩波少年文庫(上・下)で読んだかな?

今でも 手元に置いては折に触れては 読み直す作品です。


今回は、新訳が出ている事を知り、図書館で借りて読んだのが 上記の

土屋京子氏訳のものです。


基本的には 岩波少年文庫と変わりは無いのですが、訳者としての土屋氏の

こだわりが感じられる良い訳ではないかと思いましたよ。また、巻末の

解説も、子ども向けではなく明らかに「おとな」に対して書かれたものであり

かなり読み応えがありました。



そう、『 秘密の花園 』は子ども時代に読む児 童書としてではなく、オトナが

改めて 読みなおすのにふさわしい名作なのだから。



そして、薔薇の花・・・ただ、美しく華麗な花というだけではなく

いろんな意味を持つ花であることも知った今だから、ね。


薔薇は英国(イングランド)の国花であり、美しさ・豊かさを象徴する意味でも使われている花。

故ダイアナ妃は今なお敬意をこめて「イングランドの薔薇」と呼ばれているのを御存知でしょ?


単なる花としてではなく、英語の慣用句には“薔薇”を使った言葉が

非常に多いのにも気付く。“愛” “平和” “安楽”の象徴というか・・


確か、直訳すると「喉元に薔薇を飾る」で、意味が「優しく愛をこめて話す」

という慣用句もあったような?


そう、日本人にとって「桜の花」がいろんな意味を持つように、

薔薇が 愛 と 平 和 の 象 徴 になっているの。



さてさて、『 秘密の花園 』です。



この物語の主人公メアリは、『 小公子 』や『 小公女 』のキャラクタとは

かなり異なるタイプ。 可愛くもなければ、けなげな良い子でもありません。

何しろ、物語の最初から こうですからね↓



★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

メアリ・レノックスが叔父の住む広大なミッスルウェイト屋敷に

送られてきたとき、十人が十人、こんなにかわいげのない子供は

見たことがないと言った。たしかにそのとおりだった。

★━━━━━━━━━【 冒頭より一部抜粋 】━━━━━━━━━━★



「 たしかにそのとおり 」って ww


「 赤毛のアン 」のように、器量は少々アレでも、はつらつとした魅力が

あるわけでもないのね。



ヒロインのメアリは、19世紀英国の植民地であったインドで生まれ育ち、

アーヤ( ばあや )や 召使達に かしずかれ 甘やかされて育ちました。


高級軍人の父からも、パーティ好きな母からも構ってはもらえず、

病気がちで いつも不機嫌なわがまま娘。 誰からも愛されないので

愛することも 感謝することも知らない子ども・・・



9歳のとき、両親を悪性のコレラで失ったメアリは、ただ一人の親戚である

英国ヨークシャー・荒涼としたムーアに建つ 豪壮な館に住む叔父の家に

引き取られたものの、当初はなかなか新しい暮らしに馴染めません。


なにしろ、生まれてからこのかた、自分で服を着たことも靴を履いた事

もない、すべて召使に「命令」してやらせていた クソガキ お嬢様・・・


けれども、インドとは全く異なる 生活様式と気候の ヨークシャの自然の中で

メアリは少しずつ変化していきます。メイドのマーサや庭師のベンと話し合い

外で遊ぶ内に 子どもらしさを取り戻して行きます。


「 ありがとう 」と言った事も無いメアリが、人に対する思いやりを 経験から

学んでいきます。 自然児そのままのディコンとの出会い・折にふれて聞く

マーサの母親の含蓄のある言葉・・・



そうして、10年前から閉じられたままになっている 花園の存在を知り

大いに興味を持ちます。



それが “ 秘 密 の 花 園 ” ・・・かっては 薔薇の花が咲き乱れていたとか・・・



偶然、埋められた鍵と入り口を見つけたメアリは、ディコンと協力して

なんとか花園を蘇らそうとします。


そうして、屋敷の中で 誰にも知られないようにされたままの従兄弟コリンの

存在を知ります。病弱で寝たきりのまま過ごすコリンは、メアリと同じ

ように 両親から愛された思い出を持っていません



いずれ自分はおとなになる前に死んでしまうと思い込み 周囲の者も

腫れ物に触れるようにして、ただ甘やかして言いなりになるだけ。


父親も、母の死から立ち直れずに心を閉ざしたまま、花園に鍵をかけ

“ 開かずの庭 ”にしてしまいます。

妻を思い出させる息子とは、努めて係わらないようにして、屋敷も留守がちに・・・



メアリとコリン、そしてディコンの三人が心を一つにして、ベン爺さんの

協力も得て 花園を蘇らせたとき


・・・・・ “ 奇 跡 ” が起きます。



★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

「ぼくはずっと生きる。ずっとずっと生きるんだ!」 コリンは堂々と

叫んだ。 

(中略)

「そして、これからもずっと魔法を起こしつづけるんだ。ぼくは元気に

なった!元気になった!なんだか叫びだしたいような気分だ。

ありがたくて、うれしくて、そんな気持ちを大声で叫びたい気分だ!」

★━━━━━━━━━【 一部抜粋 】━━━━━━━━━━━━━━★



いいえ、本当は 奇跡でも魔法でもないんだよね。


そう、これは 閉ざされた心が 外にゆっくりと開いてゆく物語なのね。


他者との関わりや、自然の力によって・・・美しく花開くように、

心が柔らかく愛と平和に満ちてゆく物語、といってもいいかも?



鍵をかけられて 閉ざされたままの花園は、そのまま メアリやコリンの心

といっていいかもしれません。


おそらく・・・あなたも もう気がついているのではないかしら?



「 秘密の花園 」が単なる庭ではなく、私たちの心の中にある善なるもの・

美しいものの 象徴である事を。それは生きる意欲であり 証しでもある事
を、ね。



子ども時代に読んだときには、ストーリィの面白さだけで楽しんでいた

けれど、この年になって読み直すと 新しい発見がある事に気付く・・・

まさに、名作の名作たる所以だと思うな。



さて、『 秘密の花園 』はこれまで何度か映像化されていますが

1949年のアメリカ映画では こんな感じね↓

秘密の花園1.jpg

往年の名子役マーガレット・オブライエンが主演しました。


あと、1975年と1987年の英国BBCドラマなどが有名かしら? コレね↓

秘密の花園2.jpg

どちらも余り知られていないかな? 日本ではDVD化もされていないと思う。


けれども、一番よく出来ているのが1993年制作のコレです↓ 



  監督:アニエスカ・ホランド

  製作総指揮:フランシス・コッポラ

  販売元:ワーナー・ホームビデオ

  時間:102分




映像の美しさもさることながら、キャストがイメージにぴったり。

ハリ・ポタでお馴染みの「マクゴナガル先生」も家政婦・メドロックを好演しています。

これならレンタルショップにも置いてあると思うな。

トレイラーを貼っておきますので興味のある方はどうぞ。(2分04秒)



さて、今日はこれで おしまいです。

またね・・・。


posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

「 富くじが 幕府公認 になった日 」に読む 『 く じ 』 by シャーリー・ジャクソン



こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


今日は少し長いけど「 富くじが 幕府公認になった日 」です。

なので、“ く じ 引 き ”をテーマにした作品を、ね。


くじ引きといえば、誰しも思うのは「 宝くじ 」だよね。当る当らないは

別にして、 みんな夢を抱いて買っているんだと思うよ。


毎月は 買わないけれど、年に一度だけとか、あなたも買われた事があるかも?

今日、お話する作品は・・・“ くじ ”がテーマにはなっているけれど・・・



はい 今日の 読書は 『 く じ 』  by シャーリー・ジャクソン


  発売日:2013年2月

  サイズ:文庫

  出版社:文藝春秋

 “ 厭 な ”物語を集めた短編集

  この中に収録されています。




『くじ』が表題作になった本は、早川書房から 深町真理子氏訳で

出版されていますが、今は入手しにくいかもしれません。

幸い今年発売になった文庫で 丁度良いのがありました。コレです↑

他に、クリスティや P・ハイスミス等も収録されています。



著者はシャーリィ・ジャクソン( 1916〜1965 )アメリカの作家です。

日本では決してメジャーとは言えないけれど、アンソロジーに よく収録されているので

根強いファンは多いかも?


この作品は1948年、アメリカの有名雑誌「ザ・ニューヨーカー」に発表

された短編小説です。




で、掲載された後に・・・抗議の手紙が 数百通も 殺到したそうなんですよ。



いわく、悪趣味である・もう「ザ・ニューヨーカー」は買わない

いわく、作家は 謝罪せよ・この話の結末は妻にひどい衝撃を与えた

いわく、自分たちは高等教育を受け、教養ある階層の一員であると考えていたが

(こういう作品は)文学の真実性への信頼を失わせるものである 等々。



うーむ・・・・・1925年に創刊されて、アメリカで最も洗練された

文芸誌&総合誌という評価を持つ「ザ・ニューヨーカー」の読者層には

受けなかったようですね。むしろ嫌悪感を持たれたかもしれません。


ただ、現代では、彼女の名を冠した「シャーリー・ジャクソン賞」というのが

有るそうですから、文学的な評価は高い作家とされています。



また、もし現代であれば、これ程拒絶反応も無かったでしょう。

むしろ今では古典的名作の一つであると認識されていますから・・・


『くじ』が発表当時に 嫌悪感を持たれた理由は、エッチで下品等といった

理由ではありません。 勿論、暴力的な描写が多いわけでもありません。



実は、これって・・・・・今で言う イ ヤ ミ ス なんだよね。



「イヤミス」・・・最近使われだして定着してしまった 用語だけれど

定義すると、後味が悪い・イヤな気分になるミステリーの 総称かな?


但し! 作品としての魅力がなければダメ。 単なる悪趣味な駄作は問題外で

優れた面白い小説でなければいけない、というお約束があると思うの。

作品としてはよく出来ていて 傑 作 だけれど、後 味 が 悪 す ぎ る ・・・



湊かなえ氏の『 告 白 』が登場してから言われだしたような記憶があるのですが?

いや、『 告白 』がそうネーミングされたんだっけなぁ・・・



あと、『 殺 人 鬼 フ ジ コ の 衝 動 』に代表される 真梨幸子氏もかなあ。

また、沼田まほかる氏の作品群も。

ミステリではないけれども、映画&漫画の『ヘルタースケルター』も近いと思う。



まあ、そういった系統の作品なんですよ。

その意味では、元 祖 ・ イ ヤ ミ ス かもしれません。



舞台となっているのは(多分アメリカの)人口300人程の小さな村です。

天候に恵まれた6月のある朝・・・何かイベントが行われるようです。

それは住民すべてが参加の「くじ引き」・・・。



大きな村なら 2日がかりになるけれど、この小さな村なら2時間も

あれば済んでしまいます。


村の人々は、朝の10時ごろから広場に集まってきます。

夏休みの子どもたち、おとなの男性住民、女性住民・・・

このくじ引きを運営するのは、サマーズ氏です。

村の世話役のような立場なのかな? 黒 い 木 箱 を持って登場。


初代の箱は 入植当時の物だというし、どうやらこのくじ引きは 伝統的な

ものらしくて、一 種 の 儀 式 のようです。



箱の中には 紙片が入っています。サマーズ氏が手を入れてかき混ぜます。

中に入っている紙片は、前の晩にサマーズ氏とグレイグス氏が作成して

厳重に金庫の中に仕舞われています。



くじの開始前には“ 儀 式 ”ともいえる約束事があり、村の全家族の世帯主

及びその 家族の名前が次々に読み上げられます。


御主人がどうしても、くじ引きに参加できない事情があるときには 妻が代わりに

親が参加できないときには息子が、というように、どの世帯も必ずくじを

引くことが義務付けられているようです。



そうして、一族の長から 順番に呼ばれてくじを引きます。結果はすぐに

見てはいけない決まりになっています。 


その間、ひそひそと私語も始まりますが「どこそこの村では、くじを止めようという

話が持ち上がっているらしい」と言った人は白い目で見られます。


全員が引きおわてから一斉に 紙片が開かれるのですが・・・一人の男性が

当りました。 次はその 家族の中で改めてくじ引きをするのですが・・・




しかし・・・これは 何 の く じ 引 き で し ょ う か ?



誰か 一人を 選ぶ為にくじ引きをしているようですが。

さあ、何だと思いますか?



未読であっても、カンの良い方ならもう気付いているかもしれませんが

もし、あなたが 何か嫌な事、不穏な状況を 想像しているのならば、

それは当り
だと思いますよ。



何しろ、これは「イヤミス」ですから ww



初めて読んだときには、衝撃よりも「ああ、こういう小説もあるのか」と

思った記憶があります。「 奇妙な味 」でも「 ブラックユーモア 」でもない。


悪い夢を見た時のような 後味の悪さ・・・不条理ではあるけれど、

他人事だから無責任に面白いというか・・・ただ、どうしてこんな事を

するのか?という 解説は一切ありません



くじ引きの習慣は、この村だけでは無さそうで 住民みんなが当然のものとして

受け入れている世界・・・だからこそ不気味な想像力をかきたてられるの



『 くじ 』 は、アメリカでは 非常に有名な作品で、例えばO・ヘンリーの

『 賢者の贈り物 』並の 扱いといえばお分かり頂けると思います。



著者のシャーリー・ジャクソンは「 何の為にこんな物語を書くのか? 」

「 こんな儀式を行う村を知っているのか? 」という質問に対しては一貫して

私 は た だ 物 語 を 書 い た だ け 」とサラリと答えているとか・・・・・


英文学者で 翻訳家の若島正氏は、シャーリー・ジャクソンの作品群を

こう評しています。



>ジャクスンのおもしろさはその「 ただの物語 」の危うさにある。

>日常と非日常、平凡と非凡の紙一重のはざまで、彼女の作品はきわどく

>宙吊りになっている。


( 引用元:『 乱視読者の英米短編講座 』 )



ああ、この「宙吊りに」なった感覚というのは分かるような・・・

何とも不安定で、足 が 地 に 着 か な い 浮 遊 感 を味わう作品なんですよ。


私たちのごく普通の 平凡な日常の中で、読 書 に よ っ て 与 え ら れ る 非 日 常 感

たっぷりと 味わえる作品といえるのでしょうね。



さて、今日はこの辺で終わろうかしら。 でも・・・もしも、もしも


あなたがイヤミスを 毛嫌いする人でなければ、下記の作品も かなり

悪夢感たっぷりでした↓ 後味の悪さでは、この作品の方がキタかなあ・・・




 『 ずっとお城で 暮らしてる 』

  創元推理文庫

  シャーリー・ジャクソン 市田泉訳




それでは、またね・・・ところで、宝くじが全然当らないのも運が良いのかもね?



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月17日

「 恐竜の日 」に読む 『 失われた世界 』 by コナン・ドイル


こんにちは、今日も来て下さってありがとう。


4月17日は「恐竜の日」・・・・・1923年、アメリカの動物学者

ロイ・チャップマン・アンドルーズがゴビ砂漠に向けて旅立った日で、

5年間に25個の 恐竜の卵の化石を発見。以来、本格的な研究がスタートしました。



「恐竜」と聞いて・・・『 ジュラシック・パーク 』を連想されましたか?

PART2が確か『 The Lost World 』 でしたしね。マイケル・クライトンの

原作でも良かったのですが、まずは古典ともいうべきこの作品を・・・



はい、今日の読書は 『 失われた世界 』 by  コナン・ドイル

東京創元社 早川文庫など



著者はコナン・ドイル(1859〜1930)

Sir の称号を付けて、サー・アーサー・コナン・ドイルと言うべきか・・

代表作は世界的にも有名な『 シャーロック・ホームズ 』シリーズ。


“ 名探偵 ”の代名詞になる程有名になり、今でも世界中に沢山のファンがいますし

「シャ−ロッキアン」と呼ばれるマニアのことはあなたも御存知と思います。


また、この名探偵の誕生により、探偵小説がエンターティメント小説の

一大ジャンルを築く歴史的なスタートとなったともいえますよね。


しかし、笑えるのは、ホームズのキャラクタの誕生により

名 探 偵 = 変 人 という法則を生み出したことかしら www


それに、著者のドイル自身よりも、創作した名探偵の方が世界的に有名

になってしまったのも珍しいケースではないでしょうか?



さて、生みの親であるコナン・ドイルはアイルランド人の役人の子として

スコットランドに生まれました。エディンバラ大学の医学部を卒業後は

ロンドンで開業。文学に手を染めたのは家計の足しにするためといわれ、

船医としてアフリカ西海岸への航海に出たこともあります。



作家として富と名声を得ても、少しも芸術家めいたところのない素朴な

印象でありながら、残虐で血も凍るような話を好んで来客にしたり、

スポーツ・宗教・政治・科学・殺人・心霊科学等にも関心が深かったとか・・・・・


ホームズが大人気になっても、ドイル自身が本当に好んで書きたかったのは

この『 失われた世界 』や『 マラカット深海 』のような S F 物のようです。



しかし、ドイルとほぼ 同時期に活躍した『 海底二万マイル 』のジュール・

ヴェルヌ(1828〜1905)や、その後に登場したH・G・ウェルズ(1866〜1946)

たちに比べると・・・空想科学小説というよりは、むしろ 冒 険 活 劇 物 語

と呼んだ方がふさわしいような? 強いていえば、『 ターザン 』や『 火星のプリンセス 』を

書いた バローズにテイストは似ていると思うんですが?



さて、『 失われた世界 』の主人公は 古生物学者の チ ャ レ ン ジ ャ ー 教 授 で、

物語の語り手が 新聞記者の マ ロ ー ン です。


丁度、ホームズとワトスンのような関係になるでしょうか?



このチャレンジャー教授も、ホームズに負けず劣らず 変 人 いや個性的な人物で、

2年前に 南米に一人で探検に出かけたのですが、正確な場所は秘密。


何か奇妙な冒険をして 奇妙な動物を発見したらしい・・・・

周囲の評判は、誇大妄想狂か大ボラ吹きか ww 乱暴で つむじ曲がりの人物だと。

マローンが初めて教授に会ったときの第一印象は・・・・・



その容貌に僕は息をつめた。普通の人間などとは思っていなかったが、

こんな強烈な個性の持ち主だとは-----
(中略)

顔と髭は、アッシリアの牡牛のようだ。顔は赤らみ、髭は青みがかる程

黒く、スペード型になって胸までたれていた。髪の毛がまた独特だった。

長々とうねりながら大きな額の真ん中にたれさがり 
(中略)

目は青灰色で濃く黒い眉の蔭から鋭く、傲然と光っている (中略)

咆えるような、唸るような、とどろくような声、それがかの有名な

チャレンジャー教授から受けた僕の第一印象だった。


(一部抜粋)


うーん、なかなかワイルドで 濃厚なキャラのようですねwww


マローンは彼から、南米アマゾンの奥地で 古代に絶滅したはずの生物が

生き残っているのを発見
したと告げられます。目撃しただけではなく、

アマゾンの流域で死亡したと思われるアメリカ人の遺品から、その生物を

描いたと思われるスケッチブックも発見したとのこと。


教授は、学会でその事を発表し、探検旅行を提案します。

応じたのは、チャレンジャー教授に批判的な サマリー教授、冒険家として

名高いジョン・ロクストン卿・・・そうして我らがマローン君。

かくして、彼ら4人組は南米アマゾン奥地に向かいます。 コ コ ね ↓

ギアナ高地.jpg

( 写真引用元:ttp://www.fivestar-club.jp/ ファイブスタークラブ様 )


モデルになったのは今でも 地球最後の秘境と呼ばれている ギ ア ナ 高 地 です。


世界遺産にも登録されていますし、よくテレビの旅行番組等でも紹介

されているので 御存知の方も多いでしょうね。


テ ー ブ ル ラ ン ド ”と呼ばれる高地帯が点在するエリアです。

今でさえも秘境と呼ばれる位ですから、19世紀のドイルの時代ではもっともっと

人外魔境の地(宇宙旅行並み?)ではなかったでしょうか?


アマゾン川を遡り・・・ジャングルや沼地を抜けてたどり着いた平原には

断崖が垂直に聳え立つ巨大な台地が・・・高さは300m以上もありそうな断崖を


よじ登る事は到底不可能なのですが、隣接する岩山の頂上で木を切り倒して

丸木橋を作り、辛うじて渡った台地の世界は・・・ジュラ紀さながらの

古 生 物 た ち の 世 界 でした。


しかし、ロクストン卿に恨みを持つ現地人ガイドにより丸木橋を落とされてしまい

一行は この台地にとり残されてしまうことに・・・・・



「 失われた世 界」を冒険しながら、彼らが見たものは、翼竜にイグアノドン、

アロザウルス? 巨大なヘラ鹿・・・いろいろツッコミ所は多いのですが ww



いや、古生物ばかりではなく ミッシングリングではないかとも思える

凶悪な 猿人が登場! さらには、この地に住んで独自の生活様式を持つ原住民

までが登場するわで もう、何がなんだか www


この辺り、荒唐無稽ともいえる設定なんですが、不思議なことには違和感なく

読み進めて行けます。正統派のアドベンチャー物語を楽しむ感じでね。



秘境には、今なお古代生物が生き残っているのではないか・・という

想像力の翼を思う存分伸ばして描いた作品だと思うな。

それが読む者のロマンをかき立たせるのです。


また、『 失われた世界 』が発表されたのは1912年。ドイル後期の作品ですが

作家として円熟期に入った時期の作品であり、読者を楽しませる筆力が

アップしたせいか、ワクワク感を充分に味わうことができました。


登場人物が皆、魅力的でありユーモアたっぷりに描かれているせいでしょうか。

冒険小説がお好きな方にはホームズよりも楽しめるかもしれません。



最後に、彼らは原住民から教えられたトンネルを抜けて無事に元の平原に戻れます。



帰国後はもう大凱旋ですよ。一躍時の人となりヒーロー扱い・・・

クィーンズホールで発表します!と大集会が開かれます。


で、発表会では どうしても信用できないと主張する学者に対して

実物をお見せします!とばかりに運び込まれた大きな木箱から現れたのは・・・・・


チャレンジャー教授ったら・・何と翼竜を一匹 連れ帰って来たのですよ!

しかし、周囲が騒然とする中で、翼竜は高く飛び上がり窓から逃げ去ってしまいます。


・・・そうして、ザ・エンド。  しかし、教授の名誉は守られました。



原作はこれで終わりなんですが、非常に面白いと思ったのは、英国のBBCが

2002年にドラマ化して放映(DVDも販売)しましたが、このラストの

解釈を全く変えているのですよ。


ある意味では今日的で、現実的な解釈ともいえるかもしれませんが・・・


最後に・・・この物語の扉の言葉を引用して今日はお終いにしましょう。


半 分 お と な の 子 供 か

半 分 こ ど も の 大 人 が

ひ と と き を 楽 し め れ ば 、と

へ た な 趣 向 を こ し ら え た 次 第


( 扉の言葉 加島祥造訳 )


いやいや、読者的には充分楽しませてもらいましたが、一番楽しんだのは

作者であるコナン・ドイルその人ではなかったか、と www

それでは・・・またね。



posted by cat-of-many-tales at 00:00| Comment(0) | 海外の小説・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。